- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167908263
感想・レビュー・書評
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あの宇喜田家がどのように興ったのか予備知識もないままに読みました。
秀家の先代に当たる直家を中心として、少しずつ時期をずらした連作短編集で、もちろん、短編単独としても、読みごたえ十分ですが、読み進むたびに直家や直家を巡る人々の像が浮かび上がってきます。権謀術数の権化のような直家が、魅力的で少し悲しい人物として描かれます。
興味を感じたので、ウィキで調べたら、直家のことを「策謀の対象とした敵を手厚く葬り、暗殺の実行者を使い捨てず厚遇するなど、穏やかで極めて理知的な一面も持った人物であったとされる」とあって、なるほどと思いました。
巻末には、高校生がNO1の本を選ぶ「高校生直木賞」のことが掲載されています。これも、また、興味深かったです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに面白いと思った1冊。梟雄のイメージが覆り宇喜多直家のあたたかさが伝わる
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インパクトのあるタイトルですが、中身も名前負けしておらずめちゃくちゃ面白かった。デビュー作での異例の直木賞候補入りも納得です。
1番に感心したのは連作の構成で、連作短編で登場人物や視点を切り替えて場面の転換を図るのは一般的な手法ですが、本作では時系列を絶妙の案配でずらすことで、読者は主人公である宇喜多直家の見え方が徐々に変化していく様を体験できます。恐らく最初の1編と最後の1編では読み終えたときの直家の印象は全然違うものになっているでしょう。単純に時系列通りに並べていたらこれほどの読後感は得られなかったと思います。まずそこがうまい。
次に、最新刊『敵の名は、宮本武蔵』を読んだ時も感じたのですが、生々しく凄惨な描写が続く話であってもなぜか読後感が悪くないのです。描き方に工夫があるのかもしれませんが正直理由はよく分かりません。でも著者の美点として挙げていいと思いました。
また、浦上家の人間を始めとした敵のキャラクターもいいですね。特に浦上宗景のヒールっぷりは素晴らしい。この人物によって作品の重厚さと緊張感が引き立ったように感じました。
まだ2作目ですが確信しました。木下さんは本物です。
これからもよろしくお願いします。 -
『宇喜多の捨て嫁』文庫本が出版されました。単行本で受けた衝撃が忘れられず、戦国の世の謀略と暗殺のドロドロとした世界に浸るため、通勤電車で再読しました。
戦国、特に備前・備中や美作、播磨の武家に生まれたら
一、相手の不意打ちを警戒し、挨拶の時は頭を下げても決して目を外さ無い
一、嫁のたしなみとして、寝込みを襲われた時の用心に、枕元には目潰しの灰と護身の短刀を置く
一、いかなる時も油断は禁物、囲碁する時も婚礼の夜も…
等、今は無用な心がけが必要な世界です。
もう製作が開始されているかも知れませんが、是非映像化してもっと多くの人に知ってもらいたい快作です!あとがき代わりの高校生直木賞の選評も、面白いです。 -
これは面白い。連作短編の形式にはなっているが、全体として宇喜多直家の一代記おしての長編になっている。しかもミステリー仕立てで、最初の表題作で提示された多くの謎が全編読むと全て解き明かされるという作りが素晴らしい。
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関係者が入り乱れていて、いまいちわからないところがあったが、よかったです。
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とてもおもしろかったので、題名でグッと来た方はぜひ読んでほしい。
六つの短編、六つの視点から時系列入り乱れて語られる、血と膿みにまみれた宇喜多直家の生涯。タイトルにならう暗さと、反した温かさを同時に得られる読後感です。
読んでいる時は「五逆の鼓」は説明しすぎな気がして、途中で心配になった…けど、ちょっと時間を置いて考えてみれば、江見河原の身の上では母との繋がりという点で、一連の出来事を見てそれを言語化して納得する過程が彼の中では欠かせない事だったんだなと、梅の香りに至るまでには必要な説明だったんだと今は思う。