宇喜多の捨て嫁 (文春文庫 き 44-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 84
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167908263

感想・レビュー・書評

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  • あの宇喜田家がどのように興ったのか予備知識もないままに読みました。

    秀家の先代に当たる直家を中心として、少しずつ時期をずらした連作短編集で、もちろん、短編単独としても、読みごたえ十分ですが、読み進むたびに直家や直家を巡る人々の像が浮かび上がってきます。権謀術数の権化のような直家が、魅力的で少し悲しい人物として描かれます。

    興味を感じたので、ウィキで調べたら、直家のことを「策謀の対象とした敵を手厚く葬り、暗殺の実行者を使い捨てず厚遇するなど、穏やかで極めて理知的な一面も持った人物であったとされる」とあって、なるほどと思いました。

    巻末には、高校生がNO1の本を選ぶ「高校生直木賞」のことが掲載されています。これも、また、興味深かったです。

  • 久しぶりに面白いと思った1冊。梟雄のイメージが覆り宇喜多直家のあたたかさが伝わる

  • 三章めに突入し、本書が短編の集まりで長編化してあることに気付き、積読とした。面白かったが短編と長編では面白さが別。読みたい本・読むべき本を整理する訓練として、本書はパス。

  • 高校生直木賞受賞の触れ込みでリストに入れていた本。そんな話のみ聴いていたので、てっきり高校生の読むような「女性自立」とか「内助の功」とかその手の話だとばっかり思っていたのだが。

    予想は飛んでもない方向に外れてしまった。これエルロイやん、戦国時代の備州播州を中心に展開する血膿と裏切りのノアールやん。各短編の救いのない構成といい、詩にも似た文章といい、全くスゲー小説もあったもんで。

    まぁ確かに、戦国日本の下剋上とアウトロー達の抗争は非常によく似た構図だと思う。ビジネスリーダーのモデルに「信長・秀吉・家康」なんて、お前らやくざのドンを見習いたいのか?と思う部分もあった俺だけに、こういう切り口で戦国時代を描く小説は結構ズンと入ってくる。

    戦争なんて綺麗ごとじゃないってこと。それを実際の戦争を知らなくても、知っておくってことはとても大切だと思う。読書でも映画でも体験談でもいい。片鱗でもいい知っておいた上で、戦争をしないために何をすべきか、みんなで考え実行していくことである。

    この本を高校生が選んだんか?と最初は驚いたが、この本を選んだ高校生たち侮れんなぁ、と今はそんな風に思っている。

  • インパクトのあるタイトルですが、中身も名前負けしておらずめちゃくちゃ面白かった。デビュー作での異例の直木賞候補入りも納得です。

    1番に感心したのは連作の構成で、連作短編で登場人物や視点を切り替えて場面の転換を図るのは一般的な手法ですが、本作では時系列を絶妙の案配でずらすことで、読者は主人公である宇喜多直家の見え方が徐々に変化していく様を体験できます。恐らく最初の1編と最後の1編では読み終えたときの直家の印象は全然違うものになっているでしょう。単純に時系列通りに並べていたらこれほどの読後感は得られなかったと思います。まずそこがうまい。
    次に、最新刊『敵の名は、宮本武蔵』を読んだ時も感じたのですが、生々しく凄惨な描写が続く話であってもなぜか読後感が悪くないのです。描き方に工夫があるのかもしれませんが正直理由はよく分かりません。でも著者の美点として挙げていいと思いました。
    また、浦上家の人間を始めとした敵のキャラクターもいいですね。特に浦上宗景のヒールっぷりは素晴らしい。この人物によって作品の重厚さと緊張感が引き立ったように感じました。

    まだ2作目ですが確信しました。木下さんは本物です。
    これからもよろしくお願いします。

  • 『宇喜多の捨て嫁』文庫本が出版されました。単行本で受けた衝撃が忘れられず、戦国の世の謀略と暗殺のドロドロとした世界に浸るため、通勤電車で再読しました。
     戦国、特に備前・備中や美作、播磨の武家に生まれたら
    一、相手の不意打ちを警戒し、挨拶の時は頭を下げても決して目を外さ無い
    一、嫁のたしなみとして、寝込みを襲われた時の用心に、枕元には目潰しの灰と護身の短刀を置く
    一、いかなる時も油断は禁物、囲碁する時も婚礼の夜も…
    等、今は無用な心がけが必要な世界です。 
     もう製作が開始されているかも知れませんが、是非映像化してもっと多くの人に知ってもらいたい快作です!あとがき代わりの高校生直木賞の選評も、面白いです。

  • これは面白い。連作短編の形式にはなっているが、全体として宇喜多直家の一代記おしての長編になっている。しかもミステリー仕立てで、最初の表題作で提示された多くの謎が全編読むと全て解き明かされるという作りが素晴らしい。

  • 関係者が入り乱れていて、いまいちわからないところがあったが、よかったです。

  • “捨て嫁”の蔑ろなニュアンスを捨ておけなかったw
    そんな浅はかさが恥ずかしくなるほど、凶凶しい宿命に抗う於葉や血みどろの難き道を生きる宇喜多直家の姿は壮絶。一人の人間に様々な角度から光を当てる構成は見事で、一方的嫌悪だった直家の見方が話が進むごとに多面化していく。何というか…次々と不透明な感情が生まれて消え言葉にならない。最終的に、無意識のうちに自分を罰した生き方のように思えたな。
    最終話で驚きと哀愁と涙を掻っさらっていったあの人の想いがこの作品を包み込んでいる全て。血なまぐさい時代であっても変わらないそれは、愚かでもあり優しくもある。

  • とてもおもしろかったので、題名でグッと来た方はぜひ読んでほしい。
    六つの短編、六つの視点から時系列入り乱れて語られる、血と膿みにまみれた宇喜多直家の生涯。タイトルにならう暗さと、反した温かさを同時に得られる読後感です。

    読んでいる時は「五逆の鼓」は説明しすぎな気がして、途中で心配になった…けど、ちょっと時間を置いて考えてみれば、江見河原の身の上では母との繋がりという点で、一連の出来事を見てそれを言語化して納得する過程が彼の中では欠かせない事だったんだなと、梅の香りに至るまでには必要な説明だったんだと今は思う。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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