13・67 上 (文春文庫 チ 12-2)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167915698

感想・レビュー・書評

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  • 陳浩基『13・67 上』文春文庫。

    各種ミステリーランキングで上位に輝いた珍しい華文ミステリー。

    香港警察の伝説の刑事クワンを主人公にした連作短編集。上下巻に全6編が収録され、2013年から1967年まで順に時代を遡って香港の激動の時代とクワンの警察官人生とが描かれる。

    時系列を逆転させ、終わりから始まる物語というアイディアはなかなか面白い。しかし、最初の1編の『黒と白のあいだの真実』が余りにも衝撃的で、他の2編も面白いのに、やや上の空という感じだった。

    『黒と白のあいだの真実』。これは見事。最近ではなかなかお目にかからないレベルのミステリー短編の傑作だ。2013年が舞台。末期の肝臓癌で余命僅かとなり、かつての部下・ローが容疑者一族5人と伴って病床で意識不明の状態にあるクワンの元を訪ねる。眼も開かず、会話も出来ず、指1本さえ動かせないクワンが見せた驚きの推理と意思伝達方法、まさかの事件解決……

    『任侠のジレンマ』。如何なる推理を駆使してクワンはマフィアのボスを炙り出そうとするのか……2003年、既に警察を引退し、顧問となったクワンのアドバイスを受けながらローは裏社会を牛耳るマフィアの逮捕に奔走する。事件解決のためには手段を選ばぬクワンの仕掛けた罠とは。

    『クワンのいちばん長い日』。これも見事。何と2つの事件を解決してしまう定年退職前のクワン。1997年、香港返還の1ヵ月前、50歳のクワンは翌日に定年退職を控えていた。その最後の1日に護送中のマフィアが脱走し、さらには露店街のビルの上から硫酸を振りまくという凶悪事件が発生する。クワンはローを伴い、独自に捜査を進め、驚愕の推理力を発揮する。

    本体価格870円
    ★★★★★

  • 最初の話が、やや特殊だったため
    二話目三話目と小粒に感じてしまい、私には合わなかった。
    久しぶりに「なんで読んでるんだっけ?」
    と、話が頭に入ってこない現象に悩まされる。
    短編で、話毎に年代が遡り、主要人物が若返っていくのはわかるが、まだ必要性が見えてきてない。事件の合間に出てくる点がつながってきていない。

    うーん。下巻に行くか考え中

  • 短編ながらどの話も濃密で読み応えがある。「名探偵」の鮮やか過ぎる謎解きが痛快な香港ポリスストーリー。上巻は2013年から香港返還の1997年まで。時代を遡る連作という構成が斬新で面白い。“最期”が描かれる第1話は衝撃的です。

  • レビューは下巻にて。

  • タイトルの意味を察した時にこの面白さが深まる。横山秀夫的といえばそうだけど、ハードボイルドな空気感とどこか飄々としたムードが楽しめた。

  • 【アジアインタビュー】ミステリー作家 陳浩基 - NNA
    https://www.nna.jp/nnakanpasar/backnumber/180501/others_001

    文春文庫『13・67 上』陳浩基 天野健太郎訳 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167915698#

  • 香港が舞台のミステリー小説の中編集。異なる年代の中編が6作ある構成。1人の警察官が事件を解決していく様を描いているのだが、時系列降順で描かれているところが新鮮。
    本の紹介文から、香港の歴史が描かれていることを期待していたのだが、そんなに歴史に翻弄されるといった感じのストーリー展開ではなかった。しかしながら、謎解きという意味では、途中で読むのを中断するのが難しいくらいに面白かった。中国の作家さんを最近、読むことが多いが、どれもレベル高いなと思う。

  • 感想は下巻で。

  • 目次
    ・黒と白のあいだの真実(2013)
    ・任侠のジレンマ(2003)
    ・クワンの一番長い日(1997)

    なんと楽しい読書だったでしょう。
    本来なら読後感が悪いはずなんですが、すごく楽しく読めました。

    タイトルの『13・67』というのは2013年から1967年に遡るタイプのクワンという一人の警察官の年代記という意味です。
    2013年…これはクワンが余命僅かという状態で病院のベッドに横たわりながら行った、彼の最後の事件となります。
    しかしこの捜査方法!
    日本なら絶対にアウトです!…って香港でもアウトのようです。
    だから『黒と白の間の真実』というタイトルがついているのですね。

    2013年、香港は中国に返還され、社会は落ち着きを取り戻しつつありましたが、中国の悪い影響も受けていました。
    ”「手抜きは努力に勝る」そんなフレーズがたびたび、警部たるローの耳にまで入ってくるようになった。つまり「やればやるほど、叩かれる。何もしなければ、損はない」”
    警察官だけではないのだろうけれど、そのような社会で、主人公・クワンのかつての部下ローは、事件を解決するためにあり得ない方法をとる。

    ”一般市民が白い社会で安心して生きられるように、クワンは白と黒の境界線をずっと歩んできた。”
    いや、明らかに黒寄りだと思うが…。
    でも、その信念はしっかりとローに受け継がれる。
    ”なぜなら彼は知っていたから――正義とは言葉でなく、行動なのだと。”

    散々書いているように、明らかに黒寄りの捜査をするクワンを主人公にしたこの作品はノワール小説と言えるかもしれない。
    いや、もっと単純に警察小説と言ってもいい。
    しかし、犯人を推理できるヒントはすべてフェアに記載されているので、本格推理小説と言うこともできる。
    何がどうだっていいじゃない。
    読んでみ?
    面白いから。

  • 第1章から非常にトリッキーで、反道徳的な展開。犯人を捕らえるためなら、違法ぎりぎりの捜査も厭わない。犯人を追い詰める心理戦に罠とトリック。
    名探偵と呼ばれた伝説の刑事の人生を遡る。

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著者プロフィール

●著者紹介
1975年生まれ。香港中文大学計算機学科卒。台湾推理作家協会の海外会員。2008年、短篇「ジャックと豆の木殺人事件」が台湾推理作家協会賞の最終候補となり、翌年「青髭公の密室」で同賞受賞。2011年『世界を売った男』で第2回島田荘司推理小説賞を受賞。2014年の連作中篇集『13・67』は台北国際ブックフェア大賞など複数の文学賞を受賞し、十数ヵ国で翻訳が進められ国際的な評価を受ける。2017年刊行の邦訳版(文藝春秋)も複数の賞に選ばれ、2020年刊行の邦訳の『網内人』(文藝春秋)とならび各ミステリランキングにランクインした。ほかの邦訳書に自選短篇集『ディオゲネス変奏曲』(早川書房)がある。

「2021年 『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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