白い闇の獣 (文春文庫 い 107-3)

著者 :
  • 文藝春秋
3.77
  • (53)
  • (151)
  • (94)
  • (11)
  • (3)
本棚登録 : 1216
感想 : 104
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919696

作品紹介・あらすじ

小6の少女・朋美が誘拐され、殺された。捕まったのは少年3人。だが少年法に守られ、「獣」は再び野に放たれた。4年後、犯人の1人が転落死する。失踪した朋美の父・俊彦が復讐に動いたのか? 朋美の元担任・香織はある秘密を抱えながら転落現場に向かうのだが――。“慈悲なき世界”に生きることの意味を問う、著者集大成!

【文庫オリジナル】
「やつは獣だ」
家族×愛情×憎悪×暴力×裏切り×誠実×応報×赦し
『代償』『悪寒』の著者渾身の衝撃作
伊岡ワールドの真髄!

すべては少女誘拐惨殺事件から始まった。
娘の父 元担任教師 フリーライターが、
慈悲も正義もないこの世界で、
圧倒的暴力に立ち向かう!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これは辛い、重い物語。
    テーマは少年法。
    薬丸岳を思い出させるテーマです。

    小6の少女朋美が誘拐され殺害されます。
    犯人は3人の少年。しかし、少年法に守られ、再び社会に戻ってきます。
    4年後、その1人が転落死。
    朋美の父親はの俊彦は失踪。
    俊彦の復讐なのか?
    そして、もう一人も不審死。
    と、ありがちの展開ですが、ここからの味付けは伊岡流。

    この事件の真相をジャーナリストの秋山と少女の元担任の香織が追うことになります。
    なんで、元担任がここまでこだわるの?この香織の行動が変だなぁって思っていたら、なるほどそういうことですか。つらい。

    そして、事件の真相は?
    ということで、これまた辛い。驚きの展開でした。

    さらに、最後、香織がとった行動が...
    救われることを祈ります。

    あとがきに書かれた筆者の言葉。

    「この世界に神の慈悲などない。ただ、真っ白な闇が広がっているばかりだ。」

    しかし、娘を持つ父親として、このような事件が起きたら、自分ならどうするか?
    さらには、その事件当日に、自分がとっていた行動が..
    後悔と犯人に対する憎悪。

    とても、辛い物語でした。

  • なんと!伊岡先生の直筆サイン本です!
    先日、乗換駅の本屋で偶然ゲット(^^)
    嬉しーい、サインのページを眺めながらエスカレーター乗ってる私はニヤニヤと怪しかったかな。
    マスクしてるからセーフかな(≧∇≦)

    と、はしゃいでる場合ではなく、、読み始めると、ズーンと重苦しい雰囲気で進んでいきます、
    薬丸岳さんの作品風を思い出す感情、

    一人娘がお父さんをバス停に迎えに行く雨の夜のシーンから始まり、帰宅しない。
    被害者家族、加害者の少年、被害者の親族、学校担任、ジャーナリスト、警察などが絡み合う。

    少年法の現実が色々と絡んできます。
    法律はあるものの、これ自分が被害者側なら、どう捉えるのだろう、と思わされる場面が多々。
    最後になるにつれて、あらゆる人の秘密が謎解かれていく、、、。

    いやあ、私この担任の女性、最後まで理解できませんでした。。。

    伊岡さんが書き上げしたが、世に出せないだろうと当初思われたそうです。
    『この世界に神の慈悲などない。ただ、まっ白な闇が広がっているばかりだ』
    『家族、愛情、憎悪、暴力、裏切り、誠実、広報、赦し、これまでの集大成と呼んでも差し支えない悲痛な物語』と、解説で触れられてました。

    うーー、、、タイトルや表紙からわかるように明るい物語ではもちろんありません笑
    面白かったけど、早くこの気持ちを次の本で上書きしたくなるくらいの重い気持ち。

    社会派ミステリー、個人的に好きなので、このような読後感を感じつつも、またきっとすぐにこのジャンルを読むことになるだろうな。

    読み終わった敢えてタイトルをもう一度考えると、、恐ろし〜い、、、(T . T)

    • Manideさん
      なんなんさん、明けましておめでとうございます。

      いつも、楽しく感想拝見しております。
      ニコニコから、深い闇に飲まれていく感じが、面白いと言...
      なんなんさん、明けましておめでとうございます。

      いつも、楽しく感想拝見しております。
      ニコニコから、深い闇に飲まれていく感じが、面白いと言っては失礼でしょうが、笑ってしまいました…

      サイン本いいですね。
      私は会社の社長が出版した本に、名入りでサインしてもらったのが初めてなんですが、なかなかいいな〜と感じており、いつかサイン会に行きたいと思ってます。

      2023年はサイン貰いにいってきたいと思います!!
      2023/01/07
    • なんなんさん
      Manideさん、明けましておめでとうございます。

      ニコニコも束の間、読み始めと同時に闇の中でしたよ笑
      これを年内年納めの本にするのかどう...
      Manideさん、明けましておめでとうございます。

      ニコニコも束の間、読み始めと同時に闇の中でしたよ笑
      これを年内年納めの本にするのかどうなのかと考えまして、
      一冊上書きで別の本滑り込みで読みました笑(何のために!?笑)

      伊岡さんめちゃ好きなので、サイン本は嬉しかったですー!サイン本並べてあって、伊岡さんに会えて書いてもらったわけではないのですけど…。。満足!!

      今年もよろしくお願いします〜
      2023/01/08
  • Twitterで作者様のツイートを読んで気になっていた作品。
    ツイートを毎回目にしていると購買意欲が湧いてくる(^_^)

    小6の少女・朋美が、父親をバス停まで迎えに行くと出かけたまま家に戻らない。
    その日は朋美の誕生日だった。家族でお祝いをしようとしていたその日、朋美は誘拐され、殺された。

    捕まったのは少年3人。だが少年法に守られ、罪を償うことも、たいした罰を受けることもなく、元の世界に戻ってくる。
    朋美の事件から4年後、犯人の1人が住んでいたマンションから転落死する。
    それから暫く経つと、もう一人の犯人も転落死をする。

    失踪した朋美の父・俊彦が復讐に動いたのか? 朋美の元担任・香織は秘密を抱えながら転落現場に向かい、記者と共に朋美の父親を追う。


    薬丸岳先生のようなテイストだなぁと感じた。
    犯罪を犯す少年。
    少年法に守られる犯罪者。

    しかし薬丸先生は精神にじわじわくるが、伊岡先生の作品は物語が動く(^。^)

    読み進めると、単なる復讐劇ではなく、あちらこちらから真相が見えてくる。。。

    イライラムカムカする物語ではあったが、最後はスカッと。スカッとする私の精神もどうかと思うが(笑)

    伊岡先生の本は何読んでもハズレが無いな(^-^)

  • 安定感抜群の伊岡さん!
    久々や〜!まぁ、文庫は、ほぼ制覇してるけど。

    後悔先に立たずというが、そんな感じやな。でも、悪いのは、犯罪者やで〜自分自身をあまり責めないで〜
    うん!重い!薬丸さんと争う。

    少年法の壁か…
    よくあるパターンではあるが、いくら15歳以下とかいっても、人殺して良いか悪いかなんか分かるやろ!
    そもそも、人を人と思ってない感じやし。更生とかあるの?と思ってしまう。
    少年法の理念というのは、罪を犯した可哀そうな少年を社会全体で温かく見守ろう、というのが根底にあるみたい。
    やっぱり、物には限度というものがあって、こんな事するヤツらに、少年法とかナシにして、普通に裁いてもらおうや…
    被害者には、何も知らせずとかキツい。

    やっぱり被害者優先にして欲しい。
    ほんまにやっとれんな〜( *`ω´)

    • なんなんさん
      ultraman719さん
      こんばんは、突然コメント失礼します。
      めちゃくちゃ同感のレビューで、おもわずコメントしてしまいました^^

      安定...
      ultraman719さん
      こんばんは、突然コメント失礼します。
      めちゃくちゃ同感のレビューで、おもわずコメントしてしまいました^^

      安定抜群伊岡さん、薬丸さんと争うレベル、
      やっとれんですよねー、
      私は何度もぶん殴りたい気持ちになりました笑

      いつも素敵なレビュー読ませて頂いてます!これからも楽しみにしてます★よろしくお願いします〜♪
      2022/12/26
    • ultraman719さん
      なんなんさん

      はじめまして!
      コメントありがとうございます!

      薬丸さんも好きな作家さんです!
      しかし、ほんまにやっとれん!ですよね〜
      性...
      なんなんさん

      はじめまして!
      コメントありがとうございます!

      薬丸さんも好きな作家さんです!
      しかし、ほんまにやっとれん!ですよね〜
      性善説なんか知らないですけど…そんなんええから、ちゃんと裁いて欲しい!ってのが本音です。

      つまらないレビューですが、読んでやって下さいm(_ _)m
      これからもよろしくお願いします〜!
      2022/12/26
  • 小6の少女が誘拐され暴行を受け殺される。
    捕まった少年たちは、少年法に守られ罪を償うことなく世に放たれた。
    4年後、犯人の1人が転落死したことから動き出したフリーライターの秋山、そして少女の元担任だった北原香織。
    この2人によってさまざまな事が明らかになる。
    そして、この2人が何故そこまでこの事件を追うのか…。

    あとがきに《この世界に神の慈悲などない。ただ、真っ白な闇が広がっているばかりだ》とあった。

    確かに喜ぶべきことのない、苦しみや辛さなどの連続で、救いを見い出せるものがなく闇を感じた。
    自分の行動に一欠片の後悔すら感じさせずに対峙した北原香織の強さに恐怖を覚えるほどだった。

  • 12歳の誕生日に中学入学を控えた朋美が、中学3年生3人に暴行され、橋から投げ落とされ亡くなった。3人は少年法のもと処分されたが、反省は見られない。4年後、そのうちの2人が転落死する。父俊彦の犯行か?朋美の元担任の香織とライターの秋山が行方不明の俊彦の行方を捜す…。

    時代設定は2000年と2004年の時代設定。昭和の男性が書いたって感じがする作品でした。
    香織が俊彦を探す理由が好きじゃなかったなぁ。
    良い人と悪い人がはっきり分かれているせいか読みやすかった。
    次から次へと話が展開していって、ぐんぐん読み進めることができます。

  • 『この世に神の慈悲などない。ただ、まっ白な闇が広がっているばかりだ。』
    この一行に震えました。

    小学六年生の少女・朋美が誘拐され殺された。しかし、捕まったのは少年3人で、彼らは少年法に守られ、再び世に放たれた...

    4年後、少年たちの1人が転落死する。果たして、遺族による復讐なのか?
    朋美の元担任・北原 香織は、ある秘密を抱えながら、真実を求めて転落現場に向かう。

    様々な謎がいく層にも重なり、真実は闇の中ですが、少しずつベールが剥がれていきます。
    ジャーナリストの秋山と、元担任の北原の2人が眼にする真実とは?
    そして、最後に北原が取った決断とは?

    本当に神の慈悲は無いのか、分かりませんが、今後の関係者に幸多かれと祈ります。

  • 「少年法」がテーマの作品は、暴力のシーンや被害者の家族が苦悩する場面があって読むのが辛くなります。
    被害者の家族が復讐するのかと思いきや?!まさかの展開に驚きでした。

  •  いやぁ、辛かった。登場人物になりきって読むと、誰になりきったとしても本当に辛い。つまりはそれだけ悲惨な内容を取り上げているということ。

     みなさんのレビューを読ませていただくと、薬丸岳のようだという感想を目にするが、確かに薬丸岳のテイストを感じる。

     ある家族の幸せなシーンから一気に凄惨な物語へと豹変する。パパっ子の朋美は小学6年生。朋美の誕生日パーティーになかなか帰ってこない父親。雨が降り出し、傘を持っていかなかった父親を心配し、バス停まで迎えに行く。途中、少年3人に襲われた朋美は帰ってくることなく、翌日遺体で発見されることになった。

     少年たちは少年法に守られて、大した罰も与えられることなく、世に戻ってくる。そして、その少年たちの1人が死に、続いて2人目も不審な死に方をする。

     事件を追うジャーナリストと、朋美の元担任の香織。朋美の父親は離婚後居場所を掴めないでいた。

     それにしても少年法。もし、自分の子どもが加害者だったら。もし、自分の子どもが被害者だったら。その捉え方は真逆になると思うが、被害者の遺族にとったら憎むべき法律でしかないことは想像するまでもない。これは、国民が、読者がじっくりと考えるべき問題だと思う。

     これだけ辛い物語だが、ラストはスッキリ。登場する香織は、色んな言葉たちを集めているのだが、その中で私が好きな言葉。

    《人は理由があって好きになるのではない。好きになってからあわてて理由を探す》

     この言葉がこの物語を唯一明るくする象徴なのかもしれない。

  • 少し前にはまって買い漁った伊岡作品。
    まず、犯人は誰か、が大きな謎としてあり、それだけではなく事件の裏側(背景?)も徐々に明らかになっていく。思っていたよりたくさんの種明かしがあった。

    フリーライターの秋山が良い感じ。
    思いが見え見えなところもあるけど、どこか怪しいというか謎なところが。

    それにしても被害者側が救われない。
    世の中理不尽だなと思ったし、でもそれがリアルなんだろうとも思ってしまうからまたつらい。

    終盤に俊彦が加害者に対してとった行動・・・それで本当に良かったのかなと思ってしまう。加害者をどんな目にあわせたとしても納得のいく復讐なんて出来ないけれど、加害者がのうのうと生きているのは許せない。
    未成年が守られすぎていることにも疑問。今回の時代設定が少年法改正の狭間だから余計に、か。
    もちろん子どもの犯罪は当人だけではなく家庭のせいでもあるんだろうけど、それは成人も同じなのでは?罪を犯すのが早いか遅いかの違いな気がする。子どもだからという理由で被害者を無視して犯罪者を過剰に守るのはどうなのかな・・・


    「わき上がってくるのは、「この世界には慈愛とか正義とかいうものは存在しない」という確信だった。ただ「現実」があるだけだ。真空のように何もない空間を、たった一人で歩んでゆくのだ。いまさらながら、そのことを実感していた。
    《この世は不条理に満ちている。たしかな色もなく音もない、いわば真っ白な闇だ。我々はその白き闇の中を、ただひとり手探りで進まねばならない》」

全104件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。2005年『いつか、虹の向こうへ』(『約束』を改題)で、第25回「横溝正史ミステリ大賞」と「テレビ東京賞」をW受賞し、作家デビュー。16年『代償』で「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、50万部超えのベストセラーとなった。19年『悪寒』で、またも「啓文堂書店文庫大賞」を受賞し、30万部超えのベストセラーとなる。その他著書に、『奔流の海』『仮面』『朽ちゆく庭』『白い闇の獣』『残像』等がある。

伊岡瞬の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×