- Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198617615
作品紹介・あらすじ
膨大な財政赤字を引き継いだクリントン政権。スティグリッツは経済諮問委員長として経済立て直しという難題に取り組む。彼らは規制緩和と金融の自由化を推進することで空前の好況を演出する。しかし、それは後の歴史がしめすように、崩壊の種子を内包した危険極まりないバブルであった-。一体どこに間違いがあったのか?経済政策はなぜこうもしばしば誤るのか?弱者を思いながらも、さまざまな利害の衝突に翻弄された90年代を検証し、未来への教訓と祈りをこめた話題の書。
感想・レビュー・書評
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"1990年代からのアメリカ経済を経済学者が振り返り、教訓を考察したもの。
政府の対応、FRBの田泓、金融機関の対応、アナリストの対応、企業の対応
税制の在り方、年金制度、社会保障の在り方、
市場の動き、グローバリズム、テロリズム
語れるほど金融や経済に詳しくないが、本書を読んで感じたのは中庸であるべきということ。
行き過ぎた規制緩和、行き過ぎたグローバリズムにより、経済は大きく影響を受け、一部の人にしか恩恵を受けれないことになりかねないのである。
アメリカという国は民主、共和の2政党で、政権が変わるたびに大きく舵を切る。
このバランスで国家運営が成り立ってきているのだが、どちらか一方が大きな力を持ちすぎると、4年間あるいは8年間で大きく世の中を変えてしまう恐れがる。多くの人にとって良いものであればいいが、そうでない場合は悲惨な結果となる。"詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冗長であること、権力機構について説明が不足していること、
再発しないためにはどうすれば良いのか分からないこと、そしてなにより日本語の邦題がいまいち。 -
現在マネジメント職にある全ての人に、そして、90年代のアメリカ型資本主義をリアルには体験していない、けれども将来マネジメントを目指す人、年の頃30-33歳のビジネスパーソンに特に読んでほしい。
◆お勧めの理由
①内容の良さ
見えにくい、本当の「アメリカ型資本主義」の姿を、1993年から8年間、クリントン政権下の経済諮問委員に参加し、95年からは同委員長をつとめた著者が、自身の体験をもとに書いている。しかも驚くほど客観的。成功に見せかけた失敗から学ぶ、という姿勢をとっている。普通はできても「失敗から学ぶ」でしょう。スゴイ。
②書き方の良さ
-著者の立ち位置(ビジョン)、考え方が他の著書と一貫している。
-謝辞や原注の書き方が緻密で誠意に溢れている。
-構成、論旨が整っており、かつ文章が上手いので、一般にわかりやすい。例えば、必要に応じて「教訓」という小見出しで、本書から学んでほしいことを短くまとめられているなどの工夫も有難い。
◆個人的Takeaway
【クリントン政権が目指したもの】
「職場!職場!職場!」という公のクリントン選挙スローガンに対して、非公式のスローガンは、「It's the economy, stupid(問題は経済だよ)」。レーガン、ブッシュと続いた共和党の大統領たちが「権力の行使」をしやすい外交政策に主眼を置き、経済政策に理解が足りず、また力をかけてこなかったのに対し、クリントン政権では「経済政策」を重要視していた。なかでも「社会事業」への取り組みが最大の課題と考えていた。
それは、政府のあり方としては、右派のように最小でもなく、社会主義のように過度でもない、中道の政府、バランスいの良い政府であった。
【クリントン政権の間違い】
①赤字削減は成功したのか?
赤字削減は成功したかにみえる。ただし、それは「タイミング」の問題だっただけかもしれない。クリントンが「あれほど支出を削減しなくても赤字は大幅に減っていたことになる」p79
しかも、経済成長の恩恵はほとんどが最富裕層が独占した。
②外国の経済政策運営はただしかったか?
NAFTAやWTO創設で、貿易障壁を引き下げ、自由化対象を広げたが、結果としては、開発政策は失敗し、90年代後半の途上国での危機をもたらした。
【90年代を象徴するもの】
①行きすぎた規制緩和
②不正会計操作
③貪欲な企業(ストックオプションとその会計処理など)
④銀行の加担
【90年代の間違った神話】
神話1.財政赤字を削減したから経済が回復した
神話2.経済界の英雄説
神話3.規制緩和や自己統制が鍵で、そのアメリカ方式を輸出すべし
神話4.金融市場の規律に従うことが成功の鍵
神話5.アメリカ型グローバリゼーションが世界の繁栄をもたらし、アメリカと発展途上の世界に恩恵を施す
【そのほか(印象的な言葉たち)】
⇒「クリントンはじつにすばらしいアイデアまで思いついた。勤労や貯蓄のような「良いこと」ではなく、汚染のような「悪いこと」に税金をかけようではないか」p.75
⇒「市場も政府も実にしばしば失敗するから、両者が協力することがいっそう重要になってくる。それぞれの強みがそれそれの欠点を相殺できるからだ。(中略)規制緩和の掛け声に屈し、どんな規制構造が出季節なのか、どうすれば一部の分野の規制を強化し、別の分野の規制を緩和できるかを、考えなくなってしまった」p.149
⇒「レースの勝者、少なくとも短期的な勝者は、あえて良心を眠らせられる人々だった。」p.125
⇒「1990年代で大いに悔やまれることの一つは、企業の重役にストックオプション(中略)を与えておきながら、会計上はまったく価値が動いていないように見せかけるという奇妙な企業慣行であった」p.152
⇒「不完全な情報は、自分がサービスしなければならない相手を犠牲にして自分の得になるようなことをする機会を与える」p.215
⇒「労働者を市場の気まぐれから守っていた労使双方の忠誠心や、労働者を株式市場の気まぐれから守っていた確定年金制度などの感周は、思いやりのある優しい資本主義につながっただけでなく、経済を安定させる役目も果たしていた。」p.252 -
なんで英題が「the roaring 90's」なのに、日本名がこれなのかしらという。
訳した・読んだ日本人がその思いをこめたかったのはわかるけど、著者にはやはりその意図はないのでは?
ガビガビ90年代のアメリカ経済の話で、
私、正直わからないし、興味も大きくなくて、この分野は。
スティングリッツはもっと開発系の話が多いイメージだったけど、
私の切り口がそうだっただけで、やっぱりべたべたの経済学者さんだったわけね。
とはいえ、アメリカを一辺倒に褒めてはいない点や、
90年代の数々の失敗を経て、今の活動(サルコジさんのGNHの学会とか?)があるんだろうな、という背景を知ることができたのでよかった。
正直に言って、読んだのは前半数ページと、あとは全部「めくった」程度だけど、
エンロンの話とか、ぜんぜん知らなかったので勉強になりました。 -
クリントン政権の経済諮問委員長として経済を立て直した著者。しかし、それは危険極まりないバブルであった。一体どこに間違いがあったのか。ノーベル賞経済学者が、さまざまな利害の衝突に翻弄された90年代を検証する。(TRC MARCより)
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インフレ、赤字
グリーンスパン賛美にたいする反論 -
世界銀行元上級副総裁によるグローバリゼーション批判の書。世界銀行・IMF主導のグローバリゼーションは、アメリカによる多国籍企業の利益の追求に他ならず、途上国の国民を幸せにすることは無いと主張した問題作。作品の詳細まで理解するのは難しいが、分かるところだけ読んでも、筆者のグローバリゼーションへの厳しい立場が伺える。現在の日本の小泉ー竹中路線による「小さな政府化」を理解し、これからの日本行き先を考えていく上でも、何かしら示唆を与える書であろう。
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本書は、経済諮問委員会において著者がアメリカの経済運営に深く関与した90年代の米国経済を読み解いた本である。彼自身が政策に携わったクリントン政権だけでなく、その前後、つまりレーガン政権から今日のブッシュ政権までの経済運営を概観し、かつクリントン政権については概観でなく詳述している。
大統領とスタッフ、財務省、議会、経済各業界のそれぞれが、どのような思惑でどのように動き、せめぎ合い、勝敗あるいは妥協にいたったか、その様子が、政権内部にいた者、かつ優れた経済学者の目で、描かれている。
また、そうした人物が著した本にありがちな、政策に関する自己弁護の色合いはほとんどなく、驚くべき事に、当時自らも関わった政策の誤りを数項目にわたって告白し、誤りにいたった経緯も解説している。(彼や大統領のせいというより、多分に他者との力学的な問題、つまりは政治闘争の敗北によるものも多いが)
ワシントンにおける政治的力学関係もよくわかる。
この本は、90年代の米経済運営の、まさに戦史と評価できる書である。
戦史と同様に、自分ならどうするかと考えながら読むことで、さらに得るところも大きい。
ある経済政策判断が、経済のどのような部分にどのような影響を与え、どこにその結果が現れてくるのか、といったことも非常に分かりやすく振り返られている。
経済政策立案と闘争の現場を読むことができる、かつ、失敗の理由が懇切丁寧に当事者の口から語られていること、またその対象時期が、われわれにも十分記憶に新しい時代であり、基礎知識に事欠かないこと、そういった意味で、非常に有益な書である。