鬼はもとより (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198638504

作品紹介・あらすじ

どの藩の経済も傾いてきた寛延三年、奥脇抄一郎は藩札掛となり藩札の仕組みに開眼。しかし藩札の神様といわれた上司亡き後、飢饉が襲う。上層部の実体金に合わない多額の藩札刷り増し要求を拒否し、藩札の原版を抱え脱藩する。江戸で、表向きは万年青売りの浪人、実はフリーの藩札コンサルタントとなった。教えを乞う各藩との仲介は三百石の旗本・深井藤兵衛。次第に藩経済そのものを、藩札により立て直す方策を考え始めた矢先、最貧小藩からの依頼が。

感想・レビュー・書評

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  • 経済の破綻に悩む小藩の「藩札」
    ある程度の成功は見たものの飢饉で、脱藩をすることになったある男の物語。

    自分の藩は改易となってしまったが、どうしても「藩札」の活用の仕方により良い結果を産むやり方があったはずと、研究を重ね、東北の貧しい藩の立て直しに力を注ぐ話。

  • 一気読みでした。
    初期の別名義のミステリーを除けば、青山さん名義の作品は全て読んだと思っていたのですが、この一冊を読み残していました。どちらかと言えば初期の著者の5作目、2014年の作品です。
    ひょんなことから藩札導入に関わり、そこに自分の生きがいを見出した主人公・奥脇抄一郎。上層部が決めた増刷を拒否して脱藩したが、藩札を増刷した藩はその信頼性低下から百姓一揆を招き、幕府にとがめられて廃藩となる。江戸で浪人していた抄一郎は、やがて様々な藩から藩札の相談を受ける事を生業とするようになり、やがて奥州の貧しい島村藩の経営コンサルタントとして招かれる。
    武士による藩の経済改革は、例えば『小説・上杉鷹山』など色んな作品がありますが、何かちょっと印象が違います。藩の改革は成功するのですが、とんとん拍子で上手く行き過ぎ、その説明も十分ではありません。そもそも主題の藩札よりも隠れて利益をため込んでいた商人の改易のほうが効いている様だし、そういう意味では経済小説では無いですね。
    やはり一番の主題は、常に死を間近に置き、必要とあらば目的のために命を賭せる、そんな武士の生き様の様です、たとえそれが「経済」であっても。抄一郎を招いた島村藩の改革推進役・梶原清明の「鬼となった」凄まじい生き様は、読みごたえがあります。
    ただ、前半多くのページを使い、最後にちゃんと回収したけれど女性をサイドストーリーも、それにかかわるどこか狭量で極端な女性論も無い方が良かったと思います。

  • 前半は、主人公・奥脇抄一郎が藩札掛として、成長して行く話。後半は、藩札万指南役として、北国の貧しい小藩・島村藩の経済立て直しを、三年の期限ではかる物語。前半では、抄一郎のどうしようもない姿が目立つが、後半の活躍はとてもカッコいい。また、島村藩の執政兼藩札掛・梶原清滝の生きざまが凄かった。

  • 赤貧の小藩を救う為の経済的指南を行う、今で言う
    フリーのコンサルタント奥脇抄一郎。
    抄一郎目線で話しは進みます。

    めちゃくちゃ面白かった‼︎

    潘の改革を命懸けで突き進む「梶原晴明」が格好よすぎです。

    「もとより、鬼になるつもりでおります」って…
    晴明の覚悟にちょっと震えました(/ _ ; )

    「誰よりも鬼には向かぬ者が、誰よりも厳然と鬼をやっている。顎を震わせながら、鬼をやっている…」
    文章も簡潔、センスがいい!

    ラストの手紙で泣かされた〜。゚(゚´Д`゚)゚。


  • 何が為に 

  • ・後のない席に座る者は、理が届くところだけでなく、理の及ばないところでも決断しなければならない
    ・頭(かしら)にとって力不足は罪ではない。たかが力不足なんぞの理由で、力が出せぬのが罪なのだ
    ・内なる疵が重なれば、?の強い者は心を壊し、心の強い者は?を壊す
    ・この齢になっても、結局、稚気と縁が切れず、慚愧に耐えませんが、やはり、奥脇殿にだけは、事の次第を分かっておいていただきたいと思うに至りました。最後の最後まで、お世話をおかけし、まことに申し訳なく、ただ深謝あるのみです

  • 面白かった。最貧小藩を立て直す プロセスが興味深く一気に読めた。

  • なかなか面白かった

  • 貧乏藩の立て直し。藩札を使った経営コンサルタント。上手に武士の覚悟も絡めいい作品になっている。それでも女性との関わりはやけに人間くさい。そこのアンバランスさも心地よい。いいの読んだ。

  • 青山文平さんの時代小説のファンとして言いたいのは、ほんとに当時そのものを世界としてものすごくリアルに描き切ってくれる、という点。当時が本当にどうだったかなんて、今では想像でしかないはず。なのに、まるでその時代を同時に体験したことがあるかのよう。実は、過去から来たとか、未来人とか、SFみたいな秘密があったりして。そんな風に思うほど、ぞくぞくし、はらはらし、堪能させてもらった。また別の作品を読みたい。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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