放射線のひみつ

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  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255005898

感想・レビュー・書評

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  • 福島第一原発事故の直後に書かれた放射線入門書。著者は、放射線医学が専門の東大教授。
    放射線に対して過剰に反応するのではなく、「正しく怖れる」ことが大切だと主張している。
    放射線の人体への影響という点では、この本に書かれている方向性で大体よいのではないかと思う。放射線だけにとらわれず、他の事象も含めた「リスク」という観点で考えることが重要だと感じた。
    ちょっと説明がざっくりしすぎている気はした。

  •  超カンタンな本。園長先生にもぜひ読んでもらいたいくらい。ミリとマイクロの違いとか,単位の話からやさしく丁寧に。放射線医としての経験上,長期間かけて低線量率被曝を受けても,体の修復機能が勝るという意見。
     結論としては,「多くの専門家が100ミリシーベルト以下であれば、発がんリスクは上がらないのではないかと考えています。」p.100 かな。前提知識のない人にも,わかりやすく,この結論に至る過程がたどれるように記述してあると感じた。
     ただ,ところどころ,妙な記述も散見。例えば,放射線防護を花粉症対策のアナロジーで説明するp.70「マスクをし、窓を閉め、エアコンを止める(戸外との空気の流れを減らす)ことには、ある程度効果があるでしょう。」
     広島・長崎の被爆者データの説明で,「長崎では爆心地から100メートル地点での初期放射線量は約300グレイでしたが、原爆投下24時間後には0.01グレイまで減少したとされています。」p.96 って,初期放射線量はともかく,「0.01グレイ」って単位がおかしいよな…。
     p.125には「放射線の人体への影響を考える場合、すでにお話ししたように、積算値で年間100ミリシーベルトを基準にします。」ってあるけど,「積算値で年間100ミリシーベルト」ってどういうことだ??
     まあ細かいことはともかく,なかなかよくできた本でした。

  • 東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一さんの本。放射線についてわかりやすく説明するということを第一目的に書かれた本。たしかにかりやすいです。ネットなどで結構調べていたので知ってた情報も多かったのですが復習にもなりました。
    中川さんの主張はあまりこわがりすぎないという方向性のようで、それが100mmSV以下でのがん発症率の説明やタバコや野菜嫌いな人との比較に現れていると思います。あまり不安になりたくない人には受け入れたい情報かもしれませんが、リスクをとにかく減らしたいという人にとっては受け入れがたい説明でしょう。
    ネットで中川さんの評判を見ていると、案の定、御用学者のレッテルが貼られていました。この本は5月頃に刊行されたもので、原発事故は現在進行形でその後の情報もブログでフォローしていくと書かれていたのですが、7月以後更新が止まっています。ネット上での批判が原因かどうかはわかりませんが。東大病院放射線治療チームは震災初期に冷静に有効な情報を発信していたと思われるだけに残念です。
    私は震災以前、原発に対して特に意識していなかったので(反省しています)まずはいろいろな立場の人の意見を聞きたいので、自由な意見交換ができなくなるような空気にはなって欲しくないなと思います。

  • 福島から避難している子供たちと出会い、福島について放射線について知りたくて読んだ。
    わかりやすく書かれている。
    でもやっぱり難しい。
    正しく怖がらなきゃいけない。

    放射線積算推定量を見て、成人についての発癌リスクは、野菜不足や塩分の取りすぎより低く、極端に恐れる必要はない場所もあるのは興味深い。
    ストレス、たばこ、運動不足や肥満の方が発癌リスクが高いこともある。

    でも子供は守りたいね。

  • 放射能と放射線と放射性物質の違いがわからない人におすすめ。
    つまり私。

    放射線について基本的な知識がわかりやすい文章で平易に書かれています。
    「よくわかってないけどなんか恐い」という人はぜひ。
    つまり私。

    ラストにかけての「大丈夫!これくらいだったら平気だよ!」という畳み掛けが若干気にはなりましたが、良い入門書です。
    「正しく怖がる」ことが、本当に大事ですね。

  • 福島第1原発の事故の影響は、単に科学・技術の問題じゃなく、政治・経済・倫理・道徳、そして感情論が入り乱れいるので、どちらかの立場に明示的に与するだけでもリスクを伴いますね。
    この本は、まず5/10にあとがきが書かれているということで、そのあとの状況はフォローできてないということが前提。そのうえで、「放射線は危険だが、現時点で極度に忌避する必要はない」という立場。
    放射線・放射能に関する基本的な知識が整理されていて、親原発・反原発に関係なく、一通りの復習になる。

  • ・「放射能、放射性物質、放射線の違い」、「シーベルトとベクレルの違い」など、基本的な疑問を平易に解説。
    ・放射線の影響は花粉をイメージすると分かり易い。
    ・年間積算量が100ミリシーベルト以下ならまず問題ないらしい。ただし、前提条件が色々あって、それぞれ結論が微妙に異なるし、結論をはっきり断言する事を避ける部分も多いので、余計に混乱する気もする。科学って面倒くさい。
      ・100ミリシーベルト以下なら絶対安全とは断言しない
      ・100ミリシーベルトが何年もずっと続くのはダメ。
      ・平常時の基準、1ミリシーベルトが望ましい。あくまで、原発事故などの緊急時(=短期間)には、100ミリまでOKという話。
      ・全身被ばくと局所被ばくは、ヤバさが異なる。

    ・確定的影響…250ミリシーベルトを超える放射線を「一度に浴びる」と白血球の減少など人体に影響が出る。
    ・確率的影響…「発がん」の可能性。100ミリシーベルトを超えると増す。ただし、100ミリ以下なら、確率がゼロになる訳ではない。

  • 放射線に関する一般人に必要な知識がまとまっている。正しく怖がることはとても重要。とても読みやすい。

著者プロフィール

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。東大医学部付属病院放射線科准教授兼放射線治療部門長。厚生労働省がん対策推進企業アクション議長。

「2023年 『人生を変える健康学 がんを学んで元気に100歳』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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