地虫鳴く

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 147
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017167

感想・レビュー・書評

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  • なかなか進まなかったのは、主要な登場人物が出て来なかったから。そのあとはサクサクと。最後がよかった。

  • 視点の切り替え、対比の妙で読者を絡めとる。試衛館派より伊東一派に親近感…。一方ばかり読むより、こういう方向から見ることも必要ですね。

  • 新選組といっても登場する3人の主人公格は無名の人達です。でも、それが狙いなのでしょう。一流でなく、何かしらコンプレックスがあり、どう生きるべきかわからないというのは、数多くいる普通の人ですから。それが、幕末の複雑怪奇な権力闘争の渦中に放り込まれたら?まさに新選組にのシチュエーションです。生き方が定まらないジリジリした感じが伝わってきました。無駄のない筆致で人物造形を描き分け、やたら心に響く名セリフが出てきました。

  • よく言われるように、歴史上は勝った側が正しいとされている。
    けれど歴史に埋もれた敗者たちにも、それぞれの正義があった。

    伊藤や三木、篠原、阿部の描写では、御陵衛士の行く末を知っているだけにせつなかった。(阿部のことは知らなかったけど)
    伊藤ってずるがしこい嫌な奴なイメージだったけど、こんなにまっすぐで純真で理想を求め、周囲の人間を惹きつけた人物だったのか・・・
    もちろんこの本も多少のフィクションが入っているかもしれないけど。

    新選組側の、山崎や尾形はどちらかというと現代の人間に近い考えなのかもしれない。そんな人たちが最後まで一員であり続けた新選組って、というか近藤や土方の人間性って、どれだけすごいものだったんだろう。。

    尾形とか浅野みたいな人がいないと、やっぱり人と人との結びつきって成り立たないんだと思う。
    阿部みたいな人間って、すごく中途半端だと思うけど、自分は一番近い気がした。自分が何をしたいのかも、何故ここにいるのかもわからない。それでも何か目に見えない憧れみたいなものに手を伸ばそうとしている。
    それだけに阿部の絶望は読んでいてすごく辛かった。

    これは「新選組 幕末の青嵐」とセットで読むべきだと思う。
    最後の最後、少しだけ幸せな気分で終われたのもよかった。
    感動でした。

    あと、「壬生義士伝」であんなに感動した吉村貫一郎が冴えない感じで登場してておもしろかった。

  • 内容は決して明るくはないが、読後感はすっきりとしている。

    新選組を取り扱う小説の中でも、裏方メインという作品は少ない。
    この本では一般的に認知度は低いが、新選組の歴史に欠かせない隊士たちにスポットライトを当てている。
    御陵衛士の視線というのも新しく、また監察という一歩引いた場所から隊の全体を眺めるのも面白い。

    ただ主人公の物語を辿るのではなく、阿部•篠原•尾形を中心に様々な角度から物事を捉え、それぞれの立場や思いが交差して行く。
    思想や派閥は違えど、幕末の大舞台で風となり嵐となり、歴史を担う運命は皆同じ。
    話が進むほどに三者三様の変化が面白く、400ページと読み応えもたっぷり。

    尾形の発言に対する、山崎の台詞にはグっとくる場面が多い。
    客観的な意見で的を得ており、思わずはっとする。
    個人的には阿部にあまり良い印象がなかったが、読み終えてから魅力を感じた。
    最後のシーンは素敵なので、ここにきてキュッときます。

    何度でも読み返したい作品。
    間違いなく、傑作と呼んでいいだろう。

  • もったいなくてじわじわ三年くらい読んでいたが、最近の御陵衛士熱に任せて、残りを一気に読んでしまった。

    阿部十郎を支点にして、新撰組から堕ちていった人たちを語るお話。
    時代に巻き込まれるなかで懸命にもがこうとした人たちのお話でもあるか。

    そういう話なので、幕末の青嵐に比べると、時勢の話が語られる場面が多いし、新撰組以外の登場人物も多いかも。新撰組以外の幕末ものもなんとなく読んだことある人にオススメ。

    当然人はどんどん居なくなっていくし報われない人が殆ど。しかし、最期で、ふわっと気持ちの浮く締め方をしてくれるのは、ホント木内さんさすがです。

    御陵衛士な気分の時にはもってこい。あー、好きだー。

  • 山崎烝!山崎烝!

  • 一集団・組織としての主義や意義があってもそこに集まる人々の
    意識や能力や思惑や背景があり、今も昔も難しいよねと思いつつ、
    現代以上に時勢の流れや浮き沈みが早く、それぞれの思惑が見えず、
    見誤ると命を落とすとは、混沌としたすごい時代だったなと思う。

  • 普通の小説かな?思ったよりはおもしろくなかった。阿部さんが主役の作品なんてきっとこれだけだろうな。でも最後の3、4ページぐらいのその後の新撰組隊士がどうなったかというのは凄くよかった。そこはちょっと泣けてきた

  • 『新選組 幕末の青嵐』の姉妹編みたいな感じ?
    視点が違う。
    わたしはそこまで入り込めなかったなー
    なかなかページが進まなかった。
    でも最後はちょっとにやりとした。

  • 木内さんは上手いなあ。
    ホント外れがない。
    漂砂のうたう、もそうだったけど少々屈折気味の人が、なあ。
    なんかこの人の作品は密度が濃い感じ。
    怒り、焦り、憧れ、憎しみ、哀しみ、いろんな感情が一枚ずつ積み重なってゆく。
    阿部さんもねーホント痛いわー。
    微妙に共感できたり、できなかったり。
    近藤を殺したのは自分です、みたいなことを最初言ってたのがよくわかんなかったんですが・・・・?
    案外斎藤さんが気にしてくれてたのが不思議でした。
    この時代はやっぱ土方、だよなあ。写真もかっこいいし、
    なーんか憧れちゃいます。この作の中の土方もメッチャかっこいい~。
    あ、あと沖田くんの描き方がなんかすごくうまい。
    なるほど、こーゆー沖田像もありか、と。
    伊東さんは、途中かなり痛々しくて、やばかったんだけど、最後のへんは
    なんか自分で歩んでる感じが好きでした。
    最期、かわいそうだったけど・・・。
    ラストの塾の名前が・・・。尾形さん生きてた~っとちょっとじんわり。
    ああ、そーいえば山崎さんも興味深い。名前はよくきくよな。

    幕末あたりの作品が確かまだあったはず。
    それも読みたい。

  • ■ある日、土方は尾形に監察方の差配を命じた。探る山崎、進む伊東、醒める斎藤、そして惑う阿部……。時代の流れに翻弄される新選組にあって、「近代」に入っていこうとする、迷える男たちの行方は。書下ろし長編時代小説。

    ■■面白かった。この人は常にメインではなく、脇から見た新選組を描く。それがとても上手い。歴史物というよりも物語的。向ける視線は闇。だけど悪じゃない。真選組の視点から見ると薩長や伊東はどうしても敵側。だけど彼らには彼らの信じる志と正義がある。決して悪じゃない。交じり合えない彼らの心の在り方が、哀しい。にしても、土方さんがやっぱりかっこよかった。


     ――――化けているのではない。
     それが奴の本性だ。百姓という持って生まれた身分こそ、あの男にとってはなにかの間違いだったのだ。近藤の後ろに控えて、一隊を見事に統制し、情を介さず駒のように人を使う。そうやって無作為に集めた荒夷を器用に操り、あれだけの活躍を成し、新選組という存在を世に知らしめたのだ。

    (中略)伊東と土方との張り合いだとばかり勘ぐっていたが、そうか、近藤を勝たせたかったか。一か八か、それでも、勝負を目に見える形で決したかったか。
     先へ先へと仕掛け続ける土方の、我欲のなさに愕然とした。この偉才を引っ張っているものの正体が、ようやくわかったような気がした。

  • 新撰組の話とは全く知らずに読み始めた。そもそも新撰組のことなんて、近藤勇と沖田総司と土方歳三しかしらなかったし、何をした人たちかさえほとんど知らなかった。時代背景もよくわかってなかった。

    描かれる視点がちょこちょこ変わるので、場面が変わった時に誰が話しているのかすぐにはわかりにくいことが度々あり、木内さんの書き方なのかもしれないが、正直言って少し読みにくかった。
    私が、新撰組や幕末、人物、史実、言葉など全てにおいて無知に等しい(しかも全く興味ない)ことも読みにくくさせた一つの要因と思うが、それでもかなり面白く読めたことを考えると、好きな人にはたまらなく引き込まれる本だろうなとつくづく思った。

    もっとこの激動の時代のことを勉強してから読んだら、人間模様も含めてよくわかって本当に面白いんだろうな。

  • 面白ろかった!!
    尾形俊太郎、阿部十郎、篠原泰之進を語り手としてます。
    マイナーな人を主役にしてもこれだけ面白いく、かつ読みやすいのはこの作家の力量を感じます。

    山崎烝の描き方も案外こんな感じだったのかなあと思わせます。

  • 救う、という言葉を聞く度に山崎の言葉を思い出す。

  • 面白かった!中枢から一歩引いたとこにいる人物(阿倍、篠原、尾形)の視点なので、私好みで感情移入しやすかったです。迷いとか絆とか、口に出さない内側が描かれていて面白かった!個人的に尾形や山崎など監察ファンなのでツボです。

  • 新撰組をこんな下からの視線で書いたものははじめて。
    誰しもが抱えるもどかしくて重いテーマだろうけど、さっぱり読めた。

  • 未読です

  • 新撰組のお話。時代小説の分野は私自身の知識が少ない為、言葉や世相など背景が掴みづらく少し苦手なのですが、この作品は暫く読みすすんでいくうちに、すっと馴染んできました。すると面白い面白い。新撰組の中では脇役(偏見?)の二人の目線で物語がすすんでいくのですが、この目線の切り替わりの間が良いんです、シブイんです。そして、じわじわと厚く綿密に広がってゆく史実に基づく様々な人間模様。読後感は充実の一言です。他著書の「茗荷谷の猫」にしてもこの作品にしても、木内昇さんの小説は一見地味な感じがするが、確実な文章でありながら軽さを持ち、ほのかに馨しさを感じます。

  • とらえどころのない小説。
    地虫=阿部なのだとは思うが、暗躍する様々なものもさしている感じ。
    しかし、盛り上がりや落ちに重きを置いていないので、これはなんだったのかと考えさせられることしきり。

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著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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