出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと
- 河出書房新社 (2018年4月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309026725
作品紹介・あらすじ
夫に別れを告げ家を飛び出し、宿無し生活。どん底人生まっしぐらの書店員・花田菜々子。仕事もうまく行かず、疲れた毎日を送る中、願うは「もっと知らない世界を知りたい。広い世界に出て、新しい自分になって、元気になりたい」。そんな彼女がふと思い立って登録したのが、出会い系サイト「X」。プロフィール欄に個性を出すため、悩みに悩んで書いた一言は、「今のあなたにぴったりな本を一冊選んでおすすめさせていただきます」—。
「とんでもなく面白い」「続きが早く読みたい! 」「もう映画化とか決定してるんじゃ……?」
ネットで話題沸騰のあの衝撃の連載が、まさかの書籍化!
悩みまくる書店員・花田菜々子が初めて書いた、大人のための青春実録私小説。
感想・レビュー・書評
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これはリアル‘ぼうけんのしょ’だ。
‘本’という‘武器’を手にし、難攻不落に思えた‘他人’とつながり、人として1upも2upもしていく様をヒヤヒヤ、ハラハラ、そしてワクワクドキドキしながら読んだ。
ヒヤヒヤ、ハラハラしたのは著者の花田さんが思い込んだら一途というか、変な方向に生真面目なところがあるから。
『出会い系で人と会ってその人に合う本をおすすめしまくる』...って思考がぶっ飛んでいる。
なんとなく佐藤多佳子さんの『しゃべれどもしゃべれども』を思い出した。口下手で不器用な人々が若き落語家の元に落語を学びに来る、というストーリー。「なんで?落語学んでもおしゃべりは上手くなんないような」という読者と先生になる若き落語家の戸惑い。でも彼らのどこか切羽詰まった真剣さに心打たれていつしか応援するようになっていく。
花田さんも終始危なっかしい。なので目が離せなくなるのです。
ワクワク、ドキドキしたのは、もしかしたら一歩踏み出せばそこに『私にも』違う世界が拡がっているのかもしれない、と思わせてくれるから。ネットの向こうに、街並みの書き割りだと思っていた風景に、あるいは憧れの店のレジの内側に。ああ、世界って広い。人って面白い!
目の前がぱあっと拡がっていく感じ。
彼女の体験を‘読む’ことで読んでいる『私にも』力がわいてくる。能町みね子さんが帯に『強烈な自己啓発本』と書かれているのにも納得。...だからって真似をするわけではありませんが。
...そうだよね。全部自分で決めていいんだね。人生も、幸せも。どう見られるか、どう思われるかなんて、そんな『評価』は他人に任しておけ。...そう強く思いました。
タイトルがちょっとでも引っ掛かる方は是非是非ご一読を。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本は、ブクログで本棚に登録されている方が多く、時々、目にしてはいたのですが、自分が読みたい系の本だとは気づかずに、ずっと素通りしていました。
そうしたら、最近、拝見した方のレビューに「ブックガイド」だと書かれていたので、すぐ登録しました。
ブックガイドが好きなんです。
最初、カウンセラーのようなお仕事をされている方なのかと思っていたら、カウンセラーでは全然なかったです。
「ヴィレッジヴァンガード」という書店で働かれていた知識を活かして、知らない人と会って、話をして、その人に合った本を薦めているという話。
その過程も普段の自分の生活では、聞いたことがない見知らぬ世界の話だったし、どういう話をした人に、どういう本を薦めているかも面白かったです。
読後に考えたことは、もし著者の花田さんに私が会いに行ったら、どんな本を薦めてくれるのかなあということ。
やっぱり、ブックガイドだったりして…。
私も、本好きな友人に、この本を薦めてみたいと想いました。
続編が出ないでしょうか。 -
Web連載を存じ上げなかった僕は、失礼ながらタイトルと装丁だけを見て、エロ系かと思い警戒した。
著者名は見ずに、男性の著者と勝手に思い込み、
オヤジが出会い系でついてきた女の子に「こんなことしちゃダメだよ」と諭しながら「君はこの本を読みなさい」と本をすすめる話
かとイメージしてたら、全然ちがった。
著者の花田菜々子さんはアプリで出会いを繰り返して、その人が必要としてると思われる本をすすめていく。
様々な人に出会うことで、人生をとても豊かで素敵なものにしていく、自分探しの物語。
豊かな人生に触れると自らの心も豊かになる。
元気になる一冊。 -
書店員が出会い系で自分探し。
初対面の人に本を進めまくる武者修行!
誰かの役に立つ喜び。
そして自分を表現することの喜び。
謎めいた出会い系サイトの実態が見えることは当然面白い。その中で花田菜々子は、未知との遭遇(おかしな人々)を果たす。この新しい出会いで菜々子のドーパミンがどばどば出てる感じが伝染する。
出会い系「X」を「なるほどなるほど、こんな感じね」と明るく攻略していく。
それと相反して、現状(今の旦那と職場)に対する不満と変わることに対する逃げ道を失う恐怖。この恐怖がじわりと伝わってくる。
人は変わりたい時に、一時、自分に都合の良いことだけが見えがち。だけどいざ新しい環境に飛び込む時の恐怖との心の振れ幅が最初から最後まで飽きさせない。
そしてタガを外して、人と向き合う中で自身を見つめ直す中で、何が喜びかを知る。
ああ、羨ましい。
行動が思考を変えて現実を変える。
誰かに本をお勧めしてみよう。
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本書は、夫と別居し、自分を見失った状態であった30代半ばのヴィレッジヴァンガード書店員・花田奈々子が、ふとしたきっかけで見つけた出会い系サイト「X」(じつはエッチ系じゃなくてビジネス目的とかで使われる交流サイトみたいなもの)で、1年間、出会った相手に自分の知識を総動員して、その相手にあった本を薦めるという修行を始めたという、著者の実体験を元にした私小説。
大人の女性である著者がいろいろな人達と出会い、影響を受け、そして成長していくという、元気がでる物語。
と内容的には良いんだけど・・・。
・・・このタイトルとカバーイラストはちょっと考えようよ?ね?
最初にこのタイトルとカバーイラストを見て素直に僕がイメージしたのは、
「20代半ばのちょっとメンヘラ入っちゃってる元文学少女のデリヘル嬢が、自分を指名したお客に無理矢理、太宰や三島由紀夫やゴーリキーとかの小説を勧めまくる、そこに至る過程で描写される赤裸々な性描写が話題に・・・」
って感じなんだけど・・・。
うん、全く違ってた。一つも合ってなかった(笑)。こんなこと考えるの僕だけかな?
本当に僕だけだったら、ちょっとへこむ。
とりあえず、ブクログの読友さんのレビューを読んでなかったら、自分一人では1200パーセント選ばないタイプの本です。
こういう、私小説ってほとんど読んだこと無かったけど、結構面白かったです。
なんか、主人公の対人スキルがアップしていく姿がロールプレイングゲームのキャラクターみたくって、結構応援したくなります(笑)。
あと、巻末に実際に著者がおすすめした本のリストが載っていて、これも便利(すごく個性的な本ばかりで、自分が読んだことあるのはカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』だけだった。今度読みたいなと思う本もたくさんあったのでこれも◎)。
それにしても、くどいかもしれないけど、このタイトルとカバーイラスト!
タイトルは百歩譲っても、このイラストは絶対、僕の最初のイメージを補完しにきまくってるって!
だから河出書房新社の編集者さん、もう少し考えよ、ね?
僕みたいなウブな中年男子はこの本を持って女性店員のいる書店ではレジに持っていけないよ?(エロ本買おうとしている中学生か)
という訳で、貴重な読書体験でした。やっぱり、読書って楽しいね! -
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 花田菜々子
2018 4/30 初版
2018 7/20 6刷 (株)河出書房新社
今週末の読書部ネタとして再読。
仕事にプライベートに
人生の大きな曲がり角を迎えた33歳女性の
勇気と冒険と成長の物語。
あくまで彼女の「出会い」は本を通じて進ん行く
「出会い」とは経験であり成長だ。
大好きな本、大好きな職場
彼女の好きな事との向き合い方に勇気をもらった女性も多いはず。
まさに人生を切り開く時は
「屍をこえて」行く時なんだ!
そしてまさに
すごいな世界。この世界は愉快なのかもしれない!
その後の事もエッセイとして出版して欲しいです。 -
これはノンフィクションなのだろうか。
著者のプライベートな悩みが垣間見え、ブックガイドの様相も呈しており、なんとも不思議なジャンルの本だが面白い。
行き詰まったとき、いつもの自分と思いっきり逆に振り切れてみる、なんて、なかなかできないけれど、案外やってみる価値はあるのかも。
人と人との出会いによって、人生はかたちづくられてゆくのだから。 -
2022年高円寺に蟹ブックスを店主としてオープンされたと聞いて再読。
やっぱりヴィレヴァンで働いてみたいなあ。それから本を通じて人と出会うっていいな。
遠藤さんとTOEICオタクの牧さん個人的に好き。
ガケ書房の山下さんと会い、自分の好みではなく、お客さんの好みで本を選んでいるんだという話を聞く場面も素敵だった。「もう普通の幸せはいらない。ただ今日見た光を信じて生きていこう。」
「また今日から何かが始まるのだ。どこまででも流れていってやろう。行けるいちばん遠くまで。」
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このタイトルからして一体どんな内容なのか?と思ったが、数年前?にニュースで見たHMVブックス日比谷コテージの店長さんの本と知り…肩書きによって安心を得たわけじゃないが…いやあるか…読んでみた。
著者が仕事でも私生活でも、非常に行き詰まった時に突破口のようにして踏み込んだのが、出会い系サイト(と言っても起業家などフリーランスの人々の人脈づくりサイト的な…下心ある人ももちろんいるけど)。
暗澹たる日々に、藁でもすがる思いだったのかもしれない…わらしべ長者を体現する人ともこのサイトで出会ったようだが…。著者自身も、わらしべ長者のように自分を押し上げてくれる人を次々と掴んでいく。
とても一年のことと思えないほど、濃密な体験だったのだろう。
こういう人こそ、まさに本物なのだなぁと思う。
私のように、ひょっこり本に関わる仕事についてしまった人間には、神々しいまでの存在だ。
もがき続ける私に、是非一冊勧めて頂きたい〜と思わずにはいられない。2019.9.5 -
いやー、面白かった!
タイトルと表紙でなんとなく敬遠してたんだけど、もっと早く読めば良かった。
内容はタイトルの通りで、女性が出会い系を通して本をオススメするというもの。作者自身の実話だということもあり、夢中になって読めてしまった。
出会い系ならではの、ちょっとヤバめな人との出会いも、あるよね〜と共感。
そして作者は、決して道楽でこれを始めたわけではなく、退職や離婚を機に新しいことをしてみたかった、という動機がいいよね。
普通の社会では上手く行かなかった作者が、本の世界へは深い愛情と造詣があったり、出会い系で知り合ったユニークな人達へはある種のシンパシーを感じていたり、そんなコンビニ人間的要素も良かった。
巻末に作者がオススメした本のリストが載っているんだけど、知らない本ばかりで、自分の読書体験はまだまだたなぁと反省してしまった。せっかくの機会なので、ちょっとずつ消化していきたい。