- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309204574
作品紹介・あらすじ
亡くなった父さんと過ごした日々、母さんの素敵な微笑み、幼いまま死んでしまった妹の写真、過ぎ去った時間や変わってしまった場所、かなたに消えた人々…あらゆる人の記憶の断片を呼び起こす、とても優しくて大切な19の物語。
感想・レビュー・書評
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カトリック教徒が多く住むイングランド北部の、丘の上から北海が見える炭鉱の街で育った作者が、子供時代の印象的なエピソードを綴った短編集。時の流れに沿って収められているわけではなく、とても短い章もあれば長い章もあり、でもそれが、この短編集全編に漂う抒情性を、より高めているような感じがした。
裕福で、何の苦労もない子供時代ではない。イギリス映画の「ブラス!」や「リトルダンサー」を思い起こさせるような、貧しく、寒そうで暗そうで、ちょっと荒んでいて、顔見知りばかりという街で暮らす閉塞感を感じる話も多い。でも、もう今は会えない人達や戻れない時代・場所に対する愛着が作品全体を覆って、どこかファンタジーのような雰囲気を醸しだしているのが、好もしいなと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自伝的設定の短篇集(巻を通して登場人物や設定は同じ)。何となく一人っ子のような気がしていたけど、アイリッシュ系(当然カトリック)で6人−1人きょうだいだったんだ。アーモンド世界を形作ったものたちが垣間見える。
邦題の「星を数えて」はとてもメロウだけど、原題は"Counting Starts"で、作中の「星を百個以上数えることは罪である」という神父さんの言から。 -
著者の少年時代の思い出をもとに書かれた19の話。
リアルなのに、どこか幻想的な不思議な話たち。
どこまでが現実なのかわからない。
家族の話は、暖かくて優しくて少し切ない。
友人達との話は、ほろ苦い。
そして、どの話もどこか懐かしい。何故だろう…。
『世界のまんなか』『チルサイド通りの天使』『バーバラの写真』『母さんの写真』『キッチン』『ここに翼が生えていた』が好き。
特に『キッチン』は、あまりにも幸福な静けさに思わず泣きそうになった。
お母さんの言葉がすごく素敵。
そんなに出てきていないはずなのに、バーバラが一番出てきてる気がするのが不思議。
この人の本は「肩甲骨は翼のなごり」しか読んでいないのだけれど、他の本も読みたくなった。 -
1960年代、北イングランドの小さな炭鉱の町で過ごした著者の思い出の欠片の数々。
暖かな家族、子供たちの会話、町の人々の善良さ…様々な要素が詰まった物語のなかにひっそりと潜む死の儚さや悲しさ。
幼くして亡くなった妹が家族の心の中にちゃんと息衝いている様子がとても印象に残りました。
死者と生者が集う『キッチン』を読んでいて気付くと泣いていました…。
この人の作品の根っこを覗き見るような、そんな思いがします。 -
「神父様、星の数をいくつまで数えたら罪になるのですか?」
学年末、オーメハニー神父が毎年繰り返す星の話。
人間は百以上、星の数を数えてはいけない。百を越えれば魂はくもり、命は危険にさらされてしまう。神のみが知りうることを、人間が知っているかのように振る舞うのは、神に対する冒涜に他ならないから。
僕は十四歳の夏、神父様の教えに背き、小さな町の頭上でまたたく星を数えた。百以上の星を。
隣にいた妹の瞳には星がたくさん映って、涙の中で輝いていた。──その後すぐに、父さんが病気になった。
部屋の中を漂う塵が、窓から差し込む光を受けてきらきらひかり舞う。そのヴェールごしに母さんと見つめ合う。
亡くなった父さんと過ごした日々。
出征したまま戻ることのない「あの人」を待ち続ける仕立て屋の老婦人。
生まれてくることのなかった瓶詰めの胎児。
父さんも子供の頃乗ったタイムマシンの秘密。
一緒にいたずらをした友達。変わってしまった場所。過ぎ去った時間のかなたへ消えた人々。世界で一番小さな場所—キッチン—の奇跡。
訪れる天使、それは幼いまま死んでしまった妹……。
1960年代北イングランドの小さな炭鉱町に住む語り手「ぼく」が家族や周囲の人々の思い出、過去の情景を断片的に記した、誰もが見たことのある風景、あらゆる人の思い出にリンクする連作短篇集。 -
えり*あたたかくてやさしい、お星様の様な物語。
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幼い頃の空想と大人びた知性が入り混じった、哀しくも優しい、愛しさに満ちた物語りでした。
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1章
1章が
かけがえのなく主人公の物語
表紙がキラキラ可愛いらしのもまた素敵
胸が詰まるような切ないお話もスキです -
丹治陽子さんの装画に惹かれた。(最近色々なカバーイラストを担当されてるが、どれもよい!)そして、一番好きな翻訳家の金原瑞人氏の手によるものとなったらこりゃ読まねば!と思った。
アーモンド作品は前から気になっていたが、読むのは今回が初めてである。1960年代のイギリスを舞台にした、自伝的作品。家族とのかかわりを淡々と綴った短編集、家族への愛情にあふれているけどどこか物哀しく、男の子特有の悩みや迷いがすごく印象に残る。時間軸をずらしながら描いてるのも効果的。作者のアルバムをめくるように読める一冊だ。
イギリス児童文学は割とほろ苦く、根底にグレイな空気が流れているように感じる。それがイギリス児童文学の魅力だと私は思っている。この作品もしかり、全編読み通して、いかに表紙がこの本の空気をうまく表現しているかと心から感じた。 -
著者の子供時代にまつわる物事を短編とし
それをまとめた作品。
誰もが子供時代には抱いていたであろう希望や不安、感じていたであろう悲しみや喜びの話。
リアルで人間くさい作品。
内容的には平凡な話なのだが、そんな平凡な内容だからこそ主人公の内に秘められた悲しみや優しさと言った感情が際立っている様に感じられた。
過去を振り返ることは、良い事も嫌な事も思い出す。しかし、それを上手く浄化し取り込めれば新たな一歩が踏み出せる。嫌な事だからこそそれに立ち向かう必要があると思った。