- Amazon.co.jp ・本 (661ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309205496
作品紹介・あらすじ
人生の道の半ばで正道を踏みはずした私が目をさました時は暗い森の中にいた-地獄篇・煉獄篇・天国篇全3篇とともに、ドレによる美麗な挿画全135点を収録。カラー口絵、詩篇付。新生訳で贈る世界文学の最高傑作。
感想・レビュー・書評
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おそらくは聖書に次いであらゆる創作物に影響を与えている書物『神曲』。書かれたのは13世紀頃であり、聖書、神話、歴史、哲学、神学といった要素が百科全書的に物語に組み込まれている。お話は地獄に迷い込んだダンテくんが、古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、天国を目指しながら異界巡りをするというもの。途中でベアトリーチェというダンテにとっての女神みたいな存在と再会し、最終的には「愛ってすばらしい!」という気づきを得るのでした。おしまい。
平川祐弘の訳は美しいですが、内容が内容だけに集中して読まないと何が起こっているのかわからなくなりがちです。でも大丈夫。この〔完全版〕はドレによる挿絵がついており、なんだか分からないけど壮大なビジュアルを絵で補完してくれます。その上で、それぞれの章の始めには訳者による概略が用意されているので、ここさえちゃんと読んでいれば何となくでついて行けるでしょう。また、章の終わりごとに細かく解説が載っているので、より深く知りたい、あるいは意味がわかんなかった、という方には理解の助けになると思います。まあそこまできっちりしっかり読まなくても、ファンタジー世界をお散歩する話を絵付きで読めるー、くらいの気持ちで読んだらいいんじゃないかな。
聖書の人物以外にも、実在の人物が多く登場し、中でも”ベアトリーチェ”という存在は作者ダンテの幼なじみで24歳の歳で亡くなった女性だったりします。イタリアの政争とフィレンツェ追放という彼の身に実際起きたことを反映した話でもあるので、個人的な怨恨という側面も見え隠れ。まあ創作の動機ってやっぱり「恋慕」だったり、「怒り」だったりが大きいんだろうな、と俗なことを感じました。
最後の「天国篇」は"キリスト教的価値観から見た宇宙"というすんごく壮大な光景の連続で、ドレの絵と相まって神秘的です。やんちゃな想像力を知識と筆力でひとつの物語にしちゃうあたり、全体の手触りとしては何となくピンチョンの『重力の虹』や、『ディファレンス・エンジン』なんかの手応えに近いなあとボンクラなSF好きとしては思うのでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
む…難しい…!
地獄編までで断念。
ある程度の知識がないと読めないのだと思います。-
正直なコメントで共感しました。
今須賀敦子さんの訳で「神曲」がでてます。時獄篇の一部しか訳が完成してませんが、このダンテの思考の深さが伺え...正直なコメントで共感しました。
今須賀敦子さんの訳で「神曲」がでてます。時獄篇の一部しか訳が完成してませんが、このダンテの思考の深さが伺えます。
僕もこんな風に読めるようになりたいです。
アエネーイス、牧歌/農耕詩 を読むと深まりそうですが、、
2018/11/16
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なんど四つの星を見たことだろう。煉獄の別れの淋しさと天国十歌あたりの戸惑い。共感し救ってくれたのは画と訳註と『ダンテ神曲講義』だった。嬉しかった。独りではダンテの意志は見えなかったと思う。源信『往生要集』も懐かしい。
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p30
かつて人権派で死刑制度廃止運動をしていた弁護士の海老沢哲が、自身の娘をストーカーに殺されたのをきっかけに犯罪被害者の支援へと転向し、私的に風の会を立ち上げたと、そのスレッドには書かれていた。
p33
「馬鹿みたいに明るくしてねえとやってらんねえんだよ・・・」
返す言葉もなく、三知男は二、三度頷く。
p178
「生まれてすぐにやらな、親子になれへんからな」
お父さんは私に、そう教えてくれた。
p185
「だって・・・・・・答えを出すのって危なくない?誰かを傷つけてしまうかもしれない」
p194
「好きなものより、苦手なものが一緒っていう方が信用できるのかな」S字を抜けた隼太郎が、ストレートのコースを歩きながら呟く。「苦手なものはなかなか変わらない。でも、好きなものはすぐ変わっちゃうからかも?」
p291
皮肉なことに時間の制限がある今の方が、毎日一緒にいた頃よりもちゃんと話せる。 -
現代はくず同然の連中が政界、財界に君臨しているわけだが、ダンテはこの作品において、そういった連中を躊躇なく地獄に叩き落している。つまりこの作品をある種の寓話ととらえてはならないのであり、こういうやり方(ここが重要)によって溜飲を下げることに対して我々現代人は多いに参考とすべきである。会社や学校の殺したいやつらをこういうやり方で地獄にたたき落としなぶり殺しにする。これが大事なことである。その意味で本作はなるほど世界文学の最高傑作であり、現代人必読の書であるが、異文化に対して少々不寛容にすぎるところが気になったので星は4つ。
地獄編は我々ゲーム第一世代にとって同じのキャラクター(ケルベロス、ハルピュイアなど)が登場して面白い。天国編も現代宇宙論との比較すると面白い。
政財界の重鎮をヨイショするヤンキーどもを見ていると心底ウンザリする。自国の都合のみ考えて為替を操作する卑怯者日本人の鏡である。 -
EU企画展2022「Ciao!イタリア」で展示していた図書です。
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB03203457 -
集英社版 世界文学全集版2
天国編で力尽きた。
欧米の教養となってるみたい。桃太郎みたいな。
聖お兄さんがわかりやすくなった。 -
地獄編・煉獄編・天国編 これほど理解に苦しむのは初めて。。。なかなか地獄でした。
当時の文化を感じましたが、多分2度は読むことは無い。読んだと言う実績がつきましたが、、、
色んな地獄がありました。。。 -
ダンテの神曲を和訳し、解説が付いたもの。
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読んでみたいと思ったきっかけは、キリスト教文化の土台となる価値観を知りたかったから。
様々な近代史を知る上でも、宗教的背景は欠かせない。
地獄編、煉獄編は想像以上に読みやすかった。当時のフィレンツェの一般市民への啓蒙用に描かれたものなので、生き生きとした瑞々しい文章。
だが天国編でその筆は一遍し、非常に観念的、形而上学的な文体になり、読み進めるのにかなり努力を要した。もともと大著であるが、これだけ苦労して読み終えた本も少ない。
以下の事に気が付いた。
・宗教とは哲学であり、法であり、また理(ことわり)である。つまり、自然科学と枝分かれする以前の科学大系であり、哲学でもある。自然科学が観測によって理を解き明かそうとするのと同要、キリスト教は神を思う事によって、森羅万象の理を説明しようとした。野蛮なものというよりも、この世界での精緻な理論の積み重ねの上に成り立っている。
・後書きにも書かれていたが、イスラム教徒を邪道なものとして描いている点(マホメッドは地獄にいる)、十字軍をはじめ、異端と戦ったものは皆、天国にいる点、そして描かれている人物の地獄行き、天国行きの区別は、どうもダンテの個人的愛憎からのようである点。それらの点は現在の目で見るとむしろ滑稽なものとして映る。特に十字軍の描写は、イスラム過激派が自爆テロの志望者に語る内容ととても酷似している。
・至高天の住民であるヴェアトリーチェがダンテを責める理由が割と世俗的な理由からである事。(ヴェアトリーチェの死後、他の女性と結婚した事)
西洋史を復讐しなおした後に、また挑戦してみたい。
キリスト教を知る為の入門署としては、やはり素晴らしいと思う。