失われたいくつかの物の目録

  • 河出書房新社
3.69
  • (8)
  • (16)
  • (5)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 385
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207940

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ユーディット・シャランスキー 「失われたいくつかの物の目録」 - ソーシャル・トランスレーティング - Goethe-Institut Japan
    https://www.goethe.de/ins/jp/ja/m/kul/sup/sct/jsc.html

    失われたいくつかの物の目録 ユーディット・シャランスキー著: 日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGXKZO60024770V00C20A6MY5000/

    失われたいくつかの物の目録 :ユーディット・シャランスキー,細井 直子 | 河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/sp/isbn/9784309207940/

  • そうかいろんなものが、というかたいていのものが失われているんだ、という事実にくらっとした。鉱物的かつうっすらグロテスクなところがあって、山尾悠子好きな人は好きだと思う。自分には虎とマニ教の話がよかった。本の造りがたいそうスタイリッシュなので、それを確認するためだけにも手に取る価値がある。目が滑る場合は「緒言」のあとから読むといいです。

  • まず装丁が魅力的。1話がだいたい20ページ弱くらいなのだが、各話の最初の黒い紙に、お題を象徴する絵をこっそり忍ばせているのが何とも憎い。読後感も説明が難しいが、まるでスノードームのようだった。心惹かれたのは『ゲーリケの一角獣』『サケッティ邸』『マニの七教典』『グライフスヴァルト港』あたりか。ああでも一番好きなのは『緒言』だな。序文に惹かれたのは初めてかもしれない。

  • 一冊の書物という宇宙へ身を投じるとき、わたしは底無しの暗い深みへと引きこまれながら、見えない中心から一瞬に永遠へと繰りひろがる渦動を捉える。そう、物語は渦巻きの状態に憧れている。いつまでも語られてそこにあること、永久に同質のエネルギーを持ち続けるような開かれた言葉の群れが実現されることを望んでいる。ゆえに、中心にあるのは「無」であってはならない。中心にあるのは、別の宇宙への入口であり、出口だ。
    過去は消え去ってはいない。痕跡がたどれなくとも、すべては実在している。語り直される獲得の夢。存在の陰画としての不在。

    『ゲーリケの一角獣』がとても好みで、熱に浮かされるように読んだ。

  • 私の好みに全く合わない文章で、たいへん読みにくい。欧米人の書く文章によくある、従属節や形容詞のやたらに付いた、説明・装飾過多の長〜〜〜い一文が続いて、著者の言いたいことの核がわからなくなってしまう(意外とたいしたことは言っていないかも)。著者の思い入れや自意識、自己陶酔感が強すぎて、辟易してしまう。
    内容は今は世界から消えてしまったものごとについてで、面白そうではあるのだけれど、文章が無理すぎて…断念。
    翻訳も、個人的には日本語の文章としてわかりやすく簡潔に直してもらった方がおそらく読みやすくなるのだけれど、原文とあまりに離れてしまう翻訳もできないだろうし… 難しいですね。

  • 地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。


    墓石、それともモノリスのような佇まいのハードカバーを開くと、各章ごとが濃い藍色のページで区切られ、そこに鈍金色で刷られた章のモチーフがうっすらと浮かびあがる。それは今はない島が載った海図だったり、一角獣の骨格だったり、廃墟と化した貴族の屋敷の在りし日の姿だったりする。
    ドイツでブックデザインの賞を獲ったというのが納得の、一目で惹かれる存在感。中身はまた私好みのエッセイと創作のあいだを行き来する作風で、澁澤の『唐草物語』『ドラコニア綺譚集』からユーモアを引いて、山尾悠子『歪み真珠』のマテリアリズムを与えたような感触。
    コロッセオでライオンと闘うことになったトラ視点の「カスピトラ」、ピラネージとユベール・ロベールの邂逅を幻視した「サケッティ邸」、サッフォーをめぐる虚実入り混じる「サッフォーの恋愛歌」、忘却物の保管庫になった月にすむ男のモノローグ「キナウの月面図」などが印象に残った。文体も章ごとに変わり、「マニの七経典」はボルヘス風、「グライフスヴァルト港」は動植物の名前がたくさんでてきて梨木香歩みたい。
    モチーフと物語のあいだにあまり飛躍がなく、創作ベースのものはありきたりな感じもした。その分、文章はとても端正で、装丁の佇まいに惹かれて読んだ期待は裏切られない。

  • 文章と装丁によって創り上げた「本」という空間、その著者の
    ヴィンダーカマー(博物陳列室)に収められた十二の物語。
    ・はじめに  ・緒言
    ・ツアナキ島・・・失われた島への夢想と島を求める冒険家たち。
    ・カスピトラ・・・古代ローマのコロッセオ。死せる運命にも
           本能を露わにする、絶滅したトラの生き様。
    ・ゲーリケの一角獣・・・山岳地帯で執筆する数日間のエッセイ。
    ・サケッティ邸・・・廃墟画家たちと描いた廃墟の運命。
    ・青衣の少年・・・グレタ・ガルボの漂っているような散歩での独白。
       映画「青衣の少年」は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の監督の
       ムルナウの第一作目。失われた映画にガルボが関係してた
       というオマージュかな?(接点が不明)
    ・サッフォーの恋愛歌・・・現存するサッフォーの詩の断片と
                彼女に纏わる様々な事項の考察。
    ・フォン・ベーア家の城・・・かつて暮らした家の側に、城の残骸と
       公園があった。そして現在は・・・幼き日の想い出。
    ・マニの七経典・・・預言者マニは語る、書く。光と闇、宇宙観。
       聖典は燃やし尽くされても言葉は残る。断片であろうとも。
    ・グライフスヴァルト港・・・リク谷からグライフスヴァルト港までの
                水と自然、時の移ろいを辿る紀行。
    ・森の百科事典・・・人間の知識を集めた森の百科事典へようこそ!
        すごいな、こんな場所を作って隠遁してた人がいるとは!
    ・共和国宮殿・・・共和国宮殿が権威を誇っていた頃の、東ドイツの
            日常。だが非日常の出来事が夫婦に・・・。
    ・キナウの月面図・・・植物学から月への興味が高まったキナウは、
         ついに月へ到達し、保管庫へ。SF的作品。
    人名索引、掲載写真等一覧有り。
    各物語の始まりは、黒地に淡い金で失われたモノが
    幻のように浮かび上がっている。
    各16ページ、冒頭にモノについての説明、続いて本文の、構成。
    過ぎ去ったもの、忘れられたもの、言葉を失ったもの、
    なおざりにされたもの等を書くことによって取り戻す物語集です。
    残るほんの僅かな断片から、夢想し、紡ぎ出される物語。
    小説、エッセイ、紀行文等、様々な手法で仕立てられています。
    失われても、断片であっても、書くことで記憶は残るでしょう。

  • 序文が素晴らしい。閉じられた一冊の本は一個の完成された世界であり、それは過去と未来が一つとなる廃墟の世界なのだ。

  • 文学ラジオ空飛び猫たち第39回紹介本。 「もっとも美しいドイツの本」に選ばれた本書。装丁も作家でありブックデザイナーでもある著者によるもの。まずは「はじめに」と「緒言」だけでも読んでもらえたら。本こそ完璧なメディアという筆者の考察が本に備わる可能性を大きく膨らませてくれると思います。見た目も文章も美しく本好きには魅力的な一冊。筆者が描き出すイメージに触れるのは豊かな体験になると思います。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/39-e102vcl

  • 「失われたいくつかの物の目録」https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207940/ めっちゃよかった!素晴らしい読書体験!とても美しい。構成もいいし文章もいい。装丁もいい(装丁家の作者が手がけた原書も見てみたい。訳版と同じなのかなあ?)本という媒体への愛情を感じつつ、1冊の本の中に広がる世界に没頭できる(おわり

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1980年、東ドイツ生まれ。作家・ブックデザイナー。『奇妙な孤島の物語』は世界的ベストセラー。『失われたいくつかの物の目録』などの著書は、世界20か国以上で翻訳され、ヴィルヘルム・ラーべ賞など受賞多数。

「2022年 『キリンの首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ユーディット・シャランスキーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
ジョゼ・サラマー...
エラ・フランシス...
カズオ・イシグロ
ジョージ・ソーン...
ウンベルト エー...
アントニオ・G・...
劉 慈欣
ローベルト・ゼー...
ジョン・ウィリア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×