セミ

  • 河出書房新社
3.89
  • (71)
  • (100)
  • (70)
  • (15)
  • (0)
本棚登録 : 1132
感想 : 142
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309290195

作品紹介・あらすじ

糸井重里さんが「ほぼ日刊イトイ新聞」「今日のダーリン」で激賞!
「暗くて堂々巡りで救いがないかのような展開なのだが、読み進めたくてたまらない味わいがある。そして、やがて「うっ」となって、「わぁ」となって、「あああああ」となってしまう。こんなすごいものだと思わなかった」

***

セミが人間と一緒に会社で働いている。誰からも認めらず昇進もせず、それでも17年間コツコツと……。 静かで過激な問題作。

人間なんて大したことない。
誰もがたぶん気づいているこの事実を、物語で描くのは、本当に大変なことです。
それをこれだけの枚数でやってのけるとは、いつもながら恐れ入ります。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 17年間、サラリーマンとして働くセミ。異性物として差別されていて哀しい。そして屋上で羽化する。何を言いたいんだろうね。なにかの比喩?そういうの、あんまり好きじゃないんだ。そのまま、雰囲気を受け取りたい。

    • goya626さん
      猫丸(nyancomaru)さん
      最近は、うちの庭に蝉の死骸が多々転がっているんですよね。合掌。諸行無常。
      猫丸(nyancomaru)さん
      最近は、うちの庭に蝉の死骸が多々転がっているんですよね。合掌。諸行無常。
      2023/08/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      goya626さん
      > うちの庭に
      猫が仮住まいしているマンションの敷地内でも、、、

      秋の虫の声を聴くと、八雲の『くさひばり』(「...
      goya626さん
      > うちの庭に
      猫が仮住まいしているマンションの敷地内でも、、、

      秋の虫の声を聴くと、八雲の『くさひばり』(「日本の面影」所収)を読みたくなります。。。
      2023/08/10
    • goya626さん
      猫丸(nyancomaru)さん
      とうとううちの地所では蝉がいなくなりました。裏の公園ではアブラゼミとツクツクボウシが鳴いていますけれどね...
      猫丸(nyancomaru)さん
      とうとううちの地所では蝉がいなくなりました。裏の公園ではアブラゼミとツクツクボウシが鳴いていますけれどね。これからは秋の虫ですね。今年も邯鄲、鳴くかなあ?
      2023/08/10
  • 灰色一色のビル群の中の一室で、まだ羽のないセミが、スーツを着てキーボードを叩いている。


    セミ  高い ビルで  はたらく。
    しごと データ 入力。17ねんかん。
    けっきん なし。ミス なし。
    トゥク トゥク トゥク!

    目が大きく、とても可愛らしいセミ。
    17年間ということは、17年周期蝉だと思われる。
    17年もの間、土の中にいる蝉だ。


    17ねんかん。しょうしん なし。
    ニンゲン えらいひと 言う、
    セミ ニンゲンじゃない。
    セミ えらい 必要ない。
    トゥク トゥク トゥク!

    セミ かいしゃの トイレ 使う ゆるされない。
    セミ  まちまで  歩く。12ブロック。
    そのたび きゅうりょう ひかれる。
    トゥク トゥク トゥク!


    アパルトヘイトだと思った。
    奴隷の様に働かされ、感謝や労いは無い。
    そういうことを必要とする相手だと思われていないのだろう。
    ニンゲン と同じ空間を利用することは許されない。
    17年間、懸命に働き定年を迎える。
    なんだか、若く起動力のある奴隷が使われるだけ使われ、歳をとったらゴミのように排除されたように感じた。
    良く言えば、世代交代、ターンオーバー、かな。
    セミは、成虫になり飛び立つ。


    セミ  みんな  森にかえる。
    ときどき ニンゲンのこと かんがえる。
    わらいが とまらない。

    トゥク トゥク トゥク!

    ゾッとするセミの言葉。
    豊かな森へ帰り、ニンゲンの小ささを思うと笑えてくるのだろうか。
    所詮ニンゲンは、あの灰色一色の中で、誰かを虐げながら生きることしかできないことを、セミたちは身を持って知っているから。

    背表紙の森に救われる。
    太陽のあたたかさや重い湿度を感じる深い森、この圧倒的自然のなかでは、ニンゲンのように歪んだ存在はいないのだろう。
    己の利だけでは、とても生きてはいけないだろうしね。

    本当になんともいえない、忘れられない一冊になりました。
    ネタバレしていますが、読む人によって感じ方が色々だと思うので、ぜひおすすめです。
    翻訳の岸本佐和子さんのエッセイなども読んでみたいです。
    教えてくださったブク友さんたち、ありがとうございました( •́ - •̀ )

    • あゆみりんさん
      ひろさん、こんばんはっ。
      『セミ』、とんでもない絵本でした。
      またこれから夏が来てセミの抜け殻を見つけたら、「今までごめんね…」って、声掛け...
      ひろさん、こんばんはっ。
      『セミ』、とんでもない絵本でした。
      またこれから夏が来てセミの抜け殻を見つけたら、「今までごめんね…」って、声掛けちゃうかもしれないです。
      2023/04/24
    • ひろさん
      あゆみりんさんっ♪
      セミの抜け殻を見つけたら神妙な面持ちで見つめちゃいそうですね。
      もしかしたらセミの鳴き声がトゥクトゥクトゥクって笑い声に...
      あゆみりんさんっ♪
      セミの抜け殻を見つけたら神妙な面持ちで見つめちゃいそうですね。
      もしかしたらセミの鳴き声がトゥクトゥクトゥクって笑い声に聞こえちゃうかもです。
      2023/04/24
    • あゆみりんさん
      セミの笑い声??
      ニンゲンが、笑われているんですね…

      笑いが止まらないんでしょうね…( ・-・̥ )
      セミの笑い声??
      ニンゲンが、笑われているんですね…

      笑いが止まらないんでしょうね…( ・-・̥ )
      2023/04/25
  • 見返しの、窓一つ無い世界には、何ともいえない、新しい風を受け入れないような閉塞感が漂い、おそらくこれが、今の人間の形成する社会の一端なのであろう。

    しかし、それでも一匹の蝉が、そんな人間たちの為に、やって来てくれた。


    『17ねんかん。しょうしん なし
    ニンゲン えらいひと 言う、セミ ニンゲンじゃない。
    セミ えらい 必要ない』

    ならば、私は、こう言おう。

    「セミ えらいセミ 言う、ニンゲン セミじゃない。
    ニンゲン えらい 必要ない」
    と。

    読んでいて、馬鹿なのではないかと思ってしまった。

    改めて聞きたいのですが、あなたは自分の仰った事の意味を理解されて言っているのですか?

    これは蝉を擬人化した事で、人間の労働環境の過酷さを訴えている気もしたが、私が最も心を痛めたのは、人間だけが、この世界で我が物顔をして生活していると感じさせられるような、原初から存在する、自然を冒瀆した驕り高ぶりであり、そもそも、仕事の昇進=偉いだなんて、いつの時代の発想だよというか、その考え方自体にとても卑小さと侘しさを感じさせられたことに、同じ人間として、悲しいものがあった。


    奥付にあった、松尾芭蕉の句、

    『閑さや 岩にしみ入 蝉の声』

    には色々な解釈があるが、蝉が鳴いているのに静けさを感じられるのは、蝉自体が自然の一部であることを、人間自身が無意識に実感しているからであり、本来、蝉の存在というのは、それだけ人間にとって暑い夏でも、ひとつの風物詩となれるような、心地良いものであったことを、是非、思い出して欲しいといった願いを込めて、掲載しているのではないかと私は思ったし、巻末の見返しの絵には、そんな自然の一部と実感してくれなくなったことへの、自然の嘆きのようにも思われて、これまた、何ともいえないやり切れなさと悲しみが、私の内に降り積もった。

    しかし、それでも私は、扉絵のタイトル文字の裏にいる、あなたの存在に気付いているよ。

    きっと自然と人間も、そんな見えないようで見える関係性なのであろうし、私はそうした気持ちで、これからも驕ることなく接していきたい。


    本書は、1Q84O1さんのレビューで読むことが出来ました。
    ありがとうございます。

    • 1Q84O1さん
      たださん
      「セミ」読まれたんですね
      ショーン・タンの作品はメッセージ性を感じる作品が多いです
      その中でも「セミ」は特に強いメッセージを感じま...
      たださん
      「セミ」読まれたんですね
      ショーン・タンの作品はメッセージ性を感じる作品が多いです
      その中でも「セミ」は特に強いメッセージを感じました
      当たり前のことを、大切なことを、本書がセミが再度教えてくれた、そんな一冊ですね!
      2023/06/25
    • たださん
      1Qさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)

      ネタバレになるので、記載こそ致しませんでしたが、終盤のシーンの、後悔...
      1Qさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)

      ネタバレになるので、記載こそ致しませんでしたが、終盤のシーンの、後悔しても既にどうしようも出来なかったみたいな事だけにはならないように、改めて、自然と人間の関係性について、今一度考えるべきだと思います。

      また、自然との共存を訴えたメッセージは、これまでも多くありましたが、これ程、人間の残虐性を形にしたものは(しかも精神的な部分の)無かったのではと、その現代社会の風刺も交えたメッセージを、世界中に訴えている点に衝撃性を感じましたし、岸本佐知子さんの訳に潜む、その恐さと諦観めいた言葉には、とても緊迫感がありました。

      改めて、素晴らしい作品をありがとうございます(^_^)
      2023/06/25
  • セミがはなしをする。

    17年間働いているが、ニンゲンじゃないと言われる。
    残業しても感謝されない。
    ニンゲンはセミを嫌いだといって、いやなことをするし、言う。
    定年になる。仕事もいえもお金もない。
    高いビルの屋上へ…。
    みんな森にかえる。


    最後の
    ときどき ニンゲンのこと かんがえる。
    わらいが とまらない。

    この一文で「どうだい?」と問われたかのようである。

    虐げられても頑張って生きているのに、
    報われることなどないぞと言われても、
    自分は自分だ、と。

    紅に飛び散った無数の仲間たちとその日まで生きるという背に強さを感じた。


  • やっと見つけだぞ~ショーン・タン、いや、セミさん♪

    探すのに時間がかかった分、ちょっと期待値上がってたヽ( ̄  ̄*)チョイマチ

    セミおはなしする。よいおはなし。

    よいおはなし???



    セミが人間と一緒に会社で働いている。誰からも認めらず昇進もせず、それでも17年間コツコツと……。 静かで過激な問題作。

    人間なんて大したことない。
    誰もがたぶん気づいているこの事実を、物語で描くのは、本当に大変なことです。
    それをこれだけの枚数でやってのけるとは、いつもながら恐れ入ります。
    (道尾秀介氏)

    内容(「BOOK」データベースより)

    セミおはなしする。よいおはなし。かんたんなおはなし。ニンゲンにもわかるおはなし。トゥクトゥクトゥク!

    著者について

    ショーン・タン
    1974年オーストラリア生まれ。アストリッド・リンドグレーン賞、ケイト・グリーナウェイ賞ほか、映画『ロスト・シング』でアカデミー賞も受賞、作品は世界中で翻訳出版されている。
    代表作『アライバル』『ロスト・シング』『遠い町から来た話』など。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    タン,ショーン
    1974年オーストラリア生まれ。幼い頃から絵を描くことが得意で、学生時代にはSF雑誌で活躍。西オーストラリア大学(University of Western Australia)では美術と英文学を修める。これまでに発表したいずれの作品も卓越した内容と表現で評価が高く、オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。作品は世界中で翻訳出版されている。現代を代表する新進気鋭のイラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとして活動の場を拡げている。9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2011年にアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞。同年、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞も受賞。現在、メルボルン在住

    岸本/佐知子
    翻訳家。訳書のほか、著書に『ねにもつタイプ』(講談社エツセイ賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • セミ はなし する
    よい はなし
    かんたんな はなし
    ニンゲンにも わかるはなし

    みなさんの職場にこんな人はいませんか?

    常に真面目に業務に取り組み、欠勤、仕事のミスは無し
    周りが仕事をサボるから終わらない
    なので自ら進んで残業もする

    だけど会社からは大事にされない
    職場ではいじめられる

    定年を迎えるまで真面目に働いても送別会も労いの言葉も感謝の言葉も無し…

    これは本作の主人公のセミが人間の会社で働き扱われている実態です

    周りとちょっと違うだけでバカにする、除け者にする、邪魔者扱いする
    そんなことをしてはいけない!
    当たり前のことだがそれができない人たちがこの社会にはたくさんいる
    そんな人間にはなるな!
    そのことをセミが教えてくれている作品ではないだろうか


    最後にセミは……、
    森にかえる
    ときどき ニンゲンのこと かんがえる
    わらいが とまらない

    (これは、バカな人たちの相手なんてできないよ!新しい世界へ向かって進んでいこうというセミからのメッセージではないだろうか)

    • 1Q84O1さん
      ひろさん、おはようございます♪
      私のところにセミがやって来ましたよ(^^)
      ものすごい強いメッセージを受けた感じです!
      この絵本は当たり前の...
      ひろさん、おはようございます♪
      私のところにセミがやって来ましたよ(^^)
      ものすごい強いメッセージを受けた感じです!
      この絵本は当たり前のことだけどものすごく大切な事を再確認させられるような作品ですね♪
      ショーン・タン凄いですΣ(゚Д゚)
      2023/04/22
    • たださん
      1Qさん
      そうだったのですね(^^)
      おそらく、スターウォーズの話は、それしか無かったと記憶してますが・・そのたった一つが、ダースベイダーの...
      1Qさん
      そうだったのですね(^^)
      おそらく、スターウォーズの話は、それしか無かったと記憶してますが・・そのたった一つが、ダースベイダーの日常生活を妄想してみました的な面白さで、思い出すと、どうしても堪えきれなくて・・通勤中に読むのは、やめたほうがいいかもしれません(^^;)
      2023/04/22
    • 1Q84O1さん
      たださん
      了解です!
      通勤時はやめておいて家でこっそり読んでみたいですw
      たださん
      了解です!
      通勤時はやめておいて家でこっそり読んでみたいですw
      2023/04/22
  • もうどうしようもなく
    根本的な勘違いをする
    ニンゲンたち。

    自分たちは「偉い」と。

    そして、
    偉ければ不遜な態度が
    許されるものだと。

    そう、
    本当に可哀そうなのは、

    世界の真実が見えない
    そんなニンゲンたち。

    それにしても、
    圧巻の画力です。

    • Manideさん
      コルベットさん、おはようございます。

      ショーンタン作品すごいですよね。
      独特の世界観が記憶に残ってます♪
      アバイバルのおじさんの顔はすごい...
      コルベットさん、おはようございます。

      ショーンタン作品すごいですよね。
      独特の世界観が記憶に残ってます♪
      アバイバルのおじさんの顔はすごいですよ。

      全作品見ようと思って、このセミは見てなかったな〜と思い出しました。

      人間とセミの関係って、人はセミがきらいな人は多いですよね、きっと…。うるさいから。
      だいたい嫌いな人は、相手も嫌いに感じるものだから、セミは人が嫌いでしょうね。
      内容わからないですけど、そんな、隠れた前提があるようにも感じました (゚∀゚)
      2023/02/11
    • コルベットさん
      Manideさん、おはようございます。タンさんの独特の世界観、すごいですよね。そうか、そういう隠れた前提があったのか・・・って、鋭いですね。...
      Manideさん、おはようございます。タンさんの独特の世界観、すごいですよね。そうか、そういう隠れた前提があったのか・・・って、鋭いですね。言われてみればたしかに。そこは気づきませんでした。こうしてレビューにコメントをいただいて、新たな気づきを得るって、読書の楽しみが拡がりますね♪嬉しいです(^^)
      2023/02/11
    • Manideさん
      コルベットさん、返信ありがとうございます。

      前提は勝手な想像です(笑)
      日本人ならイメージしやすいですが、シャーンタンはオーストラリア出身...
      コルベットさん、返信ありがとうございます。

      前提は勝手な想像です(笑)
      日本人ならイメージしやすいですが、シャーンタンはオーストラリア出身みたいなので、セミいたんですかね…?

      私も今度セミを読んでみます!!
      2023/02/11
  • なんて可哀想なセミ…
    と思わせておいてからの最後、うわあああぁ!となった。
    本当に可哀想なのは…
    あぁ、こんなにも芸術的な画でこんなにも皮肉を表現できるなんて。
    絵本に無限の可能性を感じるなぁ。
    あまりの衝撃に、未だに心の整理がつきません。笑


    1Q8401さんの『レッドスター』のレビューに惹かれて、そちらは図書館になく、こちらの絵本があったので借りてきました。先に読ませていただく形になりすみません。
    1Q8401さん、素晴らしい作家さんを教えてくださりありがとうございました♪

    • 1Q84O1さん
      ひろさん、こんばんは♪
      「セミ」読まれたのですね!
      私はまだ未読ですが、ひろさんの
      うわあああぁ!とか
      あまりの衝撃とかのフレーズになになに...
      ひろさん、こんばんは♪
      「セミ」読まれたのですね!
      私はまだ未読ですが、ひろさんの
      うわあああぁ!とか
      あまりの衝撃とかのフレーズになになにって興味津々になってしまいました!
      やば〜い、気になる!w
      図書館に返却されたら早く借りないといけませんね(^^)
      2023/04/07
    • ひろさん
      1Q8401さん♪
      かなりブラックでシュールなお話でした( *°0°* )
      そして一枚一枚の絵が美しかったです。
      ショーン・タンさんの他の作...
      1Q8401さん♪
      かなりブラックでシュールなお話でした( *°0°* )
      そして一枚一枚の絵が美しかったです。
      ショーン・タンさんの他の作品も読んでいきたいです♪
      2023/04/07
    • 1Q84O1さん
      ひろさん
      ショーン・タン作品いろいろと手にとってみてください♪
      また、レビュー楽しみにしています(^^)
      ひろさん
      ショーン・タン作品いろいろと手にとってみてください♪
      また、レビュー楽しみにしています(^^)
      2023/04/07
  • 息を呑む鬱展開にどひゃーーーーーーーーーー:(;゙゚'ω゚'):からの、お…お…?おおおおおおおお。となった。つまり引き込まれ度合いはピカイチ!テンションが上がる感じではないけど、ぜひ一読いただきたい、大人の絵本。



    〈以下若干ネタバレっぽくなるので、読みたくない方はご注意を!〉




    サラリーマン風刺に見せかけて、差別の歴史を凝縮していて、抽象度が高く仕上がっているためにきっとドイツでもアメリカでも日本も「私の国の話だ…!」と思えそう。そして「閑さや岩にしみ入る蝉の声」で閉じる秀逸さ。これはテンションが上がる感じではないけど(二回目)なぜ心を抉られるのか、説明しようとするほどにかえってテンションが上がり始める、すごい絵本です。

    調べていたらショーン・タンの公式HPに詳しい説明が載っていて、これまたとても面白かった。
    https://www.shauntan.net/cicada-book

    以下要点ピックアップ&拙訳

    ・蝉は長ければ17年間土の中で生きながらえ、地上に出たほんの短い間に子孫を残し死ぬという生の煌めきを放つ。そのことにインスピレーションを得た。
    It seemed like a kind of heightened awareness of life compressed into a very short final act. This long cycle is alien to us humans, but it’s interesting that we still find it fascinating, as if buried there is some metaphor about mortality, endurance and perhaps even love.

    ・社会的、政治的、経済的体制が、作られた当初は純粋な善意から作られていたとしても、ときに結局人間性を奪い取ったり、意図した結果をもたらさないことに関心を持っている。
    I’ve always been interested in the ways that social, political and economic structures, originally created to promote human interests and with genuinely good intentions, can actually end up being very dehumanizing and counterproductive. We are easily enslaved by the very systems that are meant to work for us, and maybe even morally influenced by their bad logic, easing the way for ethical compromises by confusing our judgement of value. From fake spreadsheet forecasts to workplace bullying, institutional structures often facilitate a slippery scale of moral apathy and transgression, things to which we all have inclinations as humans.

    ・本作の構想当初は職場いじめをテーマにしようと思っていたけど、今振り返ると、これはどちらかというと個人の態度や方向性を自己決定する力を物語っているのかもしれない。蝉にとっての時間感覚・目的意識・自由の定義は人間のそれと全く異なり、そのことがまた松尾芭蕉の句の別の解釈を生む可能性を秘めている。
    I used to think this story was mostly about workplace bullying, and this was the emphasis in early notes, research and extensive storyboards. But the part I mostly think about now is the fact that the Cicada is amused by humans the whole time, but we only know that his signature refrain ‘Tok! Tok! Tok!’ is the sound of something unexpected. Maybe the story is less about corporate slavery than the power of personal attitude or direction. That is, the same situation – especially one in which you are trapped – can be depressing or amusing depending upon how you look at it, react to it, or think beyond it. The cicada has a very different perspective on time, purpose and liberty, and this is one possible interpretation of the Basho haiku I decided to include at the end of the book.

  • 「セミ」 ショーン・タン(著)岸本佐知子(訳)

    2019年 5/30 初版 (株)河出書房新社
    2020年 7/30 4刷

    岸本佐知子ファンとしては
    買わないわけにはいかないのですが

    絵本とは知らず^^;

    無機質な絵の中で今羽ばたき出す命。

    そこにもっと厳しい環境かもしれないけど
    羽ばたかずにはいられない命。

    みんながんばれ! トゥク トゥク

全142件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1974 年オーストラリア生まれ。幼いころから絵を描くことが得意で、学生時代にはSF 雑誌で活躍。西オーストラリア大学では美術と英文学を修める。オーストラリア児童図書賞など数々の賞を受賞。2006 年に刊行した『アライバル』は世界中で翻訳出版されている。イラストレーター、絵本作家として活躍する一方、舞台監督、映画のコンセプトアーティストとしての活躍の場を拡げている。9年の歳月をかけて映画化した『ロスト・シング』で2010 年に第83回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞。2011年にはアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞。2019年には日本で初めての展覧会を開催。現在メルボルン在住。

「2020年 『ショーン・タン カレンダー 2021』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ショーン・タンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リチャード・パワ...
宇佐見りん
ヴィクトール・E...
市川 沙央
カズオ・イシグロ
伊坂 幸太郎
横山 秀夫
ショーン・タン
テッド・チャン
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×