ドレス (河出文庫 ふ 18-2)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 217
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309417455

感想・レビュー・書評

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  • 不穏で落ち着かなくなるお話がずらり。面白かったです。
    「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」「ドレス」が特に好き。
    マイ・ハート〜は妊娠するために男性が女性に吸収されるお話。カマキリみたいなチョウチンアンコウみたいな……物寂しくも逞しくて良かった。
    ドレスも逞しくていい。「これがふつうなんだな…」ってなる彼氏、ドレスのアクセサリーを纏う彼女が理解できなくても受け入れようとしてて良い彼氏だなぁ。ドレスのアクセサリーがマイナーでなく、身に付けてる女の子たちがたくさんいるのも好きでした。
    藤野可織さん久々に読みましたが相変わらずすごいなー。

  • 全8作。しかし一作ごとの密度よ!
    奇想がますます前面に押し出されて、彼女が背表紙に解説を書いていたブライアン・エヴンソンっぽいなーと思っていたら、文春オンライン「作家と90分」でハサン・ブラーシムとともに言及されていて、やっぱりね。
    影響云々だけでなく、同時代性ということも思う。
    「爪と目」では人称の点で妙にうきうきしたが、そんなところをゆうに越えて、人称と文体が、語られる内容である男女の分かり合えなさ(フェミニズム)を、語ることで越える。
    もはや男女や時代を超え「人の業」を対象とする小説だ。

    【 】内は河出書房新社HPより。

    ■テキサス、オクラホマ 007 【私とドローンたちの秘めやかな関係】……ここ数年のドローンだとかセグウェイだとかタブレットだとかが出てくるが、心みたいなものとか孤独とかに作者は焦点を当てている。と思っていたら、「私たち」という人称が現れ、監視とか記録とかいう意味合いが備わってくる……奇想たっぷりの本書の開幕に相応しい。
    ■マイ・ハート・イズ・ユアーズ 039 【かわいい夫と私はついに結ばれる】……村田沙耶香の思考実験SFに似ている。宮崎駿「崖の上のポニョ」のグランマンマーレ=チョウチンアンコウの生殖も思い出す。……あとでインタビューを読んだが、ばっちり当たっていた。
    ■真夏の一日 063 【メラニンに取り憑かれた女の、とある一日】……不穏さと静謐さと。漫画化するなら「DDT」や「電気蟻」のころの丸尾末広か。フェニミズムを意識的に導入する作家だと思うが、レンという少年がほくろを(決定的に)指摘する場面には、いずれ産む子が成長したあとに過去の母へ自分という呪いを吐く、とでもいうような、幾重にも捻じれた構造があるんではないか……と。
    ■愛犬 085 【見知らぬ犬の記憶がまとわりつく】……女性がふたり、女子がひとり現れ、それぞれ生活の空虚を埋める何かを欲する。これ藤野さんのパートナーが読んだら冷や汗びっしりなのではないか。
    ■息子 121 【姿の見えない愛しいあの子はどこに】……不穏さフル。漫画化するならか山岸凉子か近藤ようこか。いた存在を、いなかったことにする、夫妻ともに……怖。
    ■ドレス 141 【恐ろしい異質のものたちが、恋人の心を奪っていく】……表題作。文庫本のイラストはまさにこの甲冑のイメージだろう。ハードカバーのイラストはむしろ、作品内容を上手に隠蔽するものだったのだろう。社会的な視点を導入して、恋人が自分を見合うかどうか、なのに鉄くずのようなアクセサリーだけには戸惑ってしまう、という。フェミニズムを描き、それを越えて人とのわかりあえなさに達している。
    ■私はさみしかった★ 179 【あの頃、襲い襲われた決して忘れられない出来事】……たぶん作者も面食らうだろうが、勝手に堀辰雄の「風立ちぬ」を連想した。あの作品、現在の語り手と、語られた視点人物が同一にも拘わらず、ひどく乖離している、それを表現する文体が肝なのだが、本作も「私」の立ち位置がはっきりしないというかブレているというか、語られている時点に寄り添っているのかいないのかよくわからない不思議な口調なのだ。語られている表面はエグいというか酷いというか厭な感じがするというか。傲慢と攻撃性と極悪と。しかし語り手の透徹した目線……それこそ秋にさみしさを感じるような……が既定にあるからこその、美しさというのか静謐さというのか……ひどく感動してしまった。
    ■静かな夜 203 【耳を澄ませば、あの声が聞こえてくる】……中盤で「おれ」が出てくるのに仰天するのは「爪と目」と同じ趣向か。映画化するなら黒沢清だな。あるいは別アプローチをすればSFホラー「イベント・ホライゾン」か。
    ◆解説 和田彩花

  • 不穏。「愛犬」の犬が患っている皮膚病の描写が鳥肌が立つほどグロテスクだった。

  • 一番面白かったのは表題作「ドレス」。恋人が付けだした一風変わったイヤリングに語り手の青年が違和感を覚えるところから始まるお話で、男の自分が読んでも打算的でイヤなやつだなあと思いつつ、決してありがちな恋人同士の帰結にならないところが良かったです。二番手は巻頭のSF「テキサス、オクラホマ」。ドローンの保養所っていうのもなかなか無い発想ですが、そこからこういうグロテスクな結末にいくとは。「マイ・ハート・イズ・ユアーズ」も妊娠と出産を扱ったSFで、夫である男の最後ばかりに目が行きがちですが、ジェンダーの問題も扱っている点が良いですね。本書ではこの三作が特に印象に残りました。
    ジェンダー・フェミニズムを主題としている点が特徴的ですが、過去作から趣向はそれほど変わっておらず、藤野さんらしい奇想が詰まった作品集に仕上がっています。文章は以前よりも地の文が削られてスマートになっているように感じました。その上展開が予測不能なものばかりなので、よほど注意して読むか広い心を持って読むかしないと、物語についていけずに混乱する可能性があります(私の初読時はそうでした)。自分としては『おはなしして子ちゃん』ぐらいの分かりやすさがちょうど良かったので、藤野さんの深化についていけずに振り切られてしまいそうな予感を抱いているところですが、そのあたりも含めて実に藤野さんらしい一作だとは思います。

  • 短編小説が何作かまとまっている。
    全ての話において、?と読んだ後に少しもやもや、する様な考えさせられる内容。つい何度も読み返し理解しようとしたのだが、自分の読解力が低いのか謎が残った。
    だが全体的に面白かった。

    1番面白かったのはカマキリの様な世界観の話である。
    男性が女性に飲み込まれ栄養として吸収される。
    主人公の女性の視点での話が面白い。

  • 結構SFチックだった記憶
    印象に残ってるのは男が妊娠する話
    生命について扱ってるのに無機質っぽくて私は結構好きだった

  • 京都市の本屋、誠光社で購入した本。
    元アンジュルムの和田彩花さん、あやちょが帯に寄稿されていたのが目に留まり。大学の同期が大ファンで。
    フェミニズム短編集とのことであるが、これはフェミニズムなのか?フェミニズムの定義を再確認したくなった本。
    設定がぶっ飛んでいて驚いた。
    わたしはこの本から何を感じとれば良かったのだろう。
    冬休みに考えさせられる本であった。

  • 不思議でちょっとホラー。
    今いる日常に違う世界が入ってくる感じ。
    「テキサス オクラホマ」が一番好きかな
    短編集。

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著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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