百合小説コレクション wiz (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.73
  • (10)
  • (17)
  • (19)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 480
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419435

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新感覚の世界観でした。
    百合というものにあまり触れていなかった私なんですが、女性同士の恋愛をここまで、美しく描けるんだなと感嘆しました。アンソロジー集となっていて、それぞれ違う作家が、自分の世界観を描いています。男女では描けない、恋愛模様が百合では、描けれるので、読む前は、この感覚に慣れるのかなと心配したのですが、読んでみてこの感覚にハマりました。全作品を読んで感じたのが、女性同士の恋愛の方が、男女の恋愛と比べて、より強く、深く結びついているイメージがあって、読んでて、美しいを通り越して、高い芸術性を感じました。

  • 百合だからというわけではなく、小説アンソロジーとして読む。
    性愛、友情、情?色々な形があって、百合だからどう、ということは特になく。読みやすい方、個人的に今回は合わなかった方、色々でした。
    最初の著者紹介が、既知の方も未知の方もこれからの読書に向けてとても参考になった。
    深緑さんが役割を描いている、櫛木さんが家を描いている、など。
    斜線堂有紀さん、LGBTQが入ってるけど、でも身近に置き換えやすくて入りやすかった。
    正しさの押し付けとか、ただダラダラしていたい気持ちとか、分かる。。
    小野さん、初読み。SF⁈と思うかの如く、エキセントリックな彼女。いや、エキセントリックなのはどっち⁈ネタばらしを読んで彼女たちが人間になってきてよかった。
    櫛木さん、怖いお話のイメージがあってあまり読んでいなかった。今回の短編は、そこはかとなく怖いけど、匙加減がほどよくどこか現実と地続きで良かった。
    宮木さん。最近読んでなかったけどやっぱり宮木さん好き。このお話はスピンオフなので、そもそも『雨の塔』から読みたいと思った。なかなかの濃いキャラ達は本編で何してたんだろう、って気になった。人にとことん惚れる事、その天秤が傾いている事は同性でも異性でもしんどい。
    アサウラさん。初読み。短編の中で上手く見せられた感じ。他の著作も気になる。
    坂崎さん。初読み。戦中〜後のヨーロッパ。カタカナ名苦手問題のために、少し関係性が分かりづらかった。環境は怒涛だけど、どこか静謐な感じ。
    南木さん。初読み。時代を超えたなかなかのボリューム。ファンタジー度高め。黒猫かわいい。
    深緑さん。これも短編らしくまとまっていて、好きだった『この本を盗むものは』に通じる何かがあって面白かった。

  • かなり好き。特に斜線堂有紀さんの「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」、南木義隆さんの「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」、宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」の三編が好き。心中したり不幸になったりしない、でも社会的な背景も踏まえた百合小説で好感度が高い。百合小説というよりビアン小説と言ってもいいなもしれない。わたしはふわふわした王道女子高生百合にどうしてもハマれないたちなのでこういうのはとても趣味に合うし、日々異性愛前提の社会に生きていると心が救われる気持ちになる。

  • 冒頭から女版ひろゆきみたいな性格悪い女が出てきて良かった でも必死こいて選挙に行きたくない気持ちめちゃ分かる この世はマイノリティ向けにデザインされてないから

    シンプルに気になる作家に出会えたので得した気持ち

  • 宮木あや子さんのファンとして、宮木さんの小説ベストだと思っている「雨の塔」の続編が読めたことに感動しての☆5です。

    全体的には......百合小説アンソロジー「彼女。」でこういったものが面白いな、と感じて同じような趣旨のこのアンソロを買ってみたのですが、小説に性的な表現が入ると嫌悪感を抱いてしまうタイプなので、なんというか「彼女。」よりも生々しい関係の話が多くて苦手でした。
    「彼女。」の方は、友情以上の何かがある女性同士の人間関係を描いたお話が多かったですね(高校のクラスメイトしかり、殺し屋姉妹だったり)

    前述の宮木あや子さんの「雨の塔」は、上流階級の訳ありの子女が「捨てられる」女子大学、「岬の大学」を描いた小説です。

    高校卒業時に「使われる」(嫁に出される)ことになったクラスメイトと心中騒ぎを起こした少女が転入してくるところから始まり、学校で交流する三●グループを思わせる日本屈指の大企業「三島」の翁が可愛がる愛人の娘「三島」と、その子の付き人のようなピアニストを目指す「都岡」。

    「都岡が三島の奴隷なら、三島は三島の父の奴隷」と評されていたふたりの、高校時代と、その後が垣間見える短編集。短編の主人公は、ふたりの高校のときの担任なので、直接ふたりが描かれるわけではないのですが、彼女たちが自由を手にしたことが見られてよかった。

    三島が可愛い、ということは雨の塔の中でいろいろな婉曲表現でわかっていたけれど、改めて「東京で一番顔がいい」と直接書かれると、やっぱり、という気持ち、

  • それぞれにけっこう違う味わいの構造、物語。現代から戦争、魔術師、物語の内側。

    ど正面な感じなのは『選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい』(斜線堂有紀)。タイトル通りの主張を持つ女と、正式に結婚したいから投票に行き、デモにも行く女。好き合って一緒に暮らしているけれど、熱意の量も向かう先も違いすぎてケンカする。
    「ズルい。それが私の根源的な気持ちだ。――こんなパレードをしなくても普通に結婚出来る奴らはズルい。――怠惰な自分が赦されないのに、そっちは問題にもならないのがズルい」

    『エリアンタス・ロバートソン』(宮木あや子)では、一途な想いがあるとき表裏ひっくり返って暗闇におちてしまう。
    「綺麗なものだけ食べて育った感受性のうさぎたちも、親の監視下にあった三年間で一匹残らず死に絶えた。」
    自分の元から去った恋人との思い出を、ピアノの音色が弔ってゆくのが哀しくも美しい。

  • アニメや漫画や映画に関しては百合大好物だが、百合小説には疎い。
    カバーイラストを「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」に関わるめばちさんが描いているので、手を伸ばした。
    気になっていた作家さんも多かったし。
    ネット発の作家さん多し。
    とはいえ、カバーイラストが具体的にどれかの作品を表しているかといえばそうではないし、むしろ半分くらいがファンタジーや歴史モノやメタモノなので、イラスト詐欺といえなくもないが、まあ変化球を含んでいるということ。
    絵はいい。断然いい。→このイラストの路線を求める方には、むしろ漫画の「エクレア あなたに響く百合アンソロジー」をお勧めしたい。
    以下、私的好み度をA、B、Cで。

    ちなみに帯の
    〈名前をつけたい関係も、
     名前のいらない紐帯も。〉
    は名作。

    ■斜線堂有紀「選挙に絶対行きたくない家のソファーで食べて寝て映画観たい」

    それこそ「スタァライト」の古川知宏監督と、脚本としてタッグを組んで「ラブコブラ」というか「タイトル未定作品」を待ちわびている。
    本作はギスギスというか、彼我の政治意識差が、読んでいて辛かった。
    今鑑賞中の「私の百合はお仕事です!」もそうだが、私が個人的に百合にギスギスを求めていないということなのかしらん。

    ■小野繙「あの日、私たちはバスに乗った」

    独特……。そしてそこが面白い。
    西尾維新とか舞城王太郎とかの文体芸を思い出した(もはや古いか)。

    ■櫛木理宇「パンと蜜月」

    純文学風な舞台立てか? やや類型的な印象。

    ■宮木あや子「エリアンタス・ロバートソン」

    スピンオフらしいので、いったん保留。

    ■アサウラ「悪い奴」

    「リコリス・リコイル」のストーリー原案として知ったが、実は「メルヘン・メドヘン」の脚本も手掛けられていたのだった。「ベン・トー」は未見。
    タイトルの意味が都度都度判明するのが面白い。

    ■坂崎かおる「嘘つき姫」

    これはいい小説だ……。
    皆川博子的本格西洋ではないが、スピリットは通じ合っている。

    ■南木義隆「魔術師の恋その他の物語(Love of the bewitcher and other stories.)」
    S!
    以前からネット上の記事で気になっていた作家さん。
    「アステリズムに花束を」収録の「月と怪物」を読みたいと思っていたところ。
    今野緒雪「マリア様がみてる」をもじって、〈僕は自分で百合小説を書くとき、「これは『マリみて』のシェアード・ワールドです」と時々言うんですよ〉〈もちろん冗談ですよ(笑)。けれど、僕は『マリみて』も僕の作品も、同一の世界で起こっている話なんだとしばしば思い込んでしまうことがあるんです。同じ世界なんだけど、「マリア様が見ている」部分で起きているのが『マリみて』。対して、僕が書くべきなのは、そこからこぼれ落ちた「マリア様が見ていない」「マリア様が見過ごしている」部分の話だと思っているんですよ、勝手に。〉という発言で、信用度を高めていたところ。
    津原泰水の小説講座を受講していたという経歴も目を引いた。
    で、実際読んでみたら、文体のマジック! たとえば【薔薇子1】冒頭部の、
    《家は帰るべき場所ではないから街に午後五時を告げるチャイムが鳴り響くのを背にきみは、他に人影のない冬の海に佇んで空になった猫用缶詰を片手に煙草をくゆらせている。歳は十三。》
    とか、まさに津原泰水の文章を読んでいるかのようで、嬉しくてちょっと涙ぐんでしまったわ。
    津原全作品の冒頭部分を最近読み直したので、この感想は間違いない。
    会話文の粋さも通じている。
    作者ご当人はおそらく、過剰に津原の弟子みたいに言われたら嫌だろうけれど、題材や筋もさることながら小説って文章の芸よねと再確認させてくれた点で、やっぱり津原泰水を強烈に思い出してしまったんだから仕方がない。
    また、たとえば、宮崎駿「魔女の宅急便」とか新房昭之「魔法少女まどか☆マギカ」とか、典型的魔女描写という点で「魔女の旅々」とかを連想させておいて(たぶんわざと)、別ベクトルに読者を拉致せんとする豪腕さ。
    さらに、冒頭と終盤で「痛み」の意味を別次元に転化された、驚きと、嬉しさとで、うっとりしてしまった。
    敢えて大袈裟に言ってしまうが、この小説は額装して部屋に飾っておきたい。

    ■深緑野分「運命」

    このアンソロジーに深緑さんが加わるのは確かにと思ったのは、「オーブランの少女」という弩級の名作をものした作家さんだから。
    が、むしろ坂崎かおる「嘘つき姫」に深緑っぽさを感じた。
    かたや本作は今敏ふう?
    油圧カッターという無骨なモノを持って走る姿は、実にいいが。

  • 全体的に上手くまとまっている雰囲気。
    『選挙に絶対行きたくない(略)』はセクシャルマイノリティによるヘテロセクシュアリティへの反旗の話でもあると感じる。だって確かに選挙にも行かず期日前投票の日すらダラダラ過ごしてても、好きな人との日々を確約されてるなんて、それこそ""ずるすぎる""。二人をすれ違わせたのは結局信条の違いなんかじゃなくて、いつまでも同性婚を認めない政府の方針なんだなと思った。
    ガッツリめのファンタジーが苦手なタイプで、ちょこちょこ挟まるファンタジー要素たっぷりのお話を読み進めるのが大変だったので、この評価。
    宮木あや子さん目当てで買ったけど、やっぱり宮木あや子さんの書く愛の話は強烈で鮮烈で、それでいて儚く強く、最強だと思う。

  • 櫛木さんの話が好きでした。百合百合してなくて

  • 表紙の雰囲気から「舞台は現代。中高生、あるいは20代~30代くらいの女性同士の恋をえがいた作品」と勝手に期待していただけに、本作は自分には刺さらなかった。

    すこし特殊な設定が多く、(作中の舞台が戦時中のヨーロッパだったり、登場人物が『ここは小説の世界なんだ』と認識しているメタ目線のお話だったり)個人的にはもっと王道展開なお話が読みたかったかな。

    普通の百合作品に飽きて、ちょっと変わった作品をよみたい!という人には本作は刺さるかも。
    ちなみに作中では作家さんごとにおすすめ百合作品が紹介されていて興味深かった。

    ついでに自分のおすすめも紹介しておくと、
    綿矢りささんの『ひらいて』、『生のみ生のままで』
    百合小説アンソロジー『彼女。』

全22件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

深緑野分(ふかみどり・のわき)
1983年神奈川県生まれ。2010年、「オーブランの少女」が第7回ミステリーズ!新人賞佳作に入選。13年、入選作を表題作とした短編集でデビュー。15年刊行の長編『戦場のコックたち』で第154回直木賞候補、16年本屋大賞ノミネート、第18回大藪春彦賞候補。18年刊行の『ベルリンは晴れているか』で第9回Twitter文学賞国内編第1位、19年本屋大賞ノミネート、第160回直木賞候補、第21回大藪春彦賞候補。19年刊行の『この本を盗む者は』で、21年本屋大賞ノミネート、「キノベス!2021」第3位となった。その他の著書に『分かれ道ノストラダムス』『カミサマはそういない』がある。

「2022年 『ベルリンは晴れているか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深緑野分の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×