さかしま (河出文庫 ユ 2-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462219

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  • さかしま (河出文庫)

  • デ・ゼッサントは病弱な貴族の末裔で、パリを離れ趣向を凝らした屋敷で隠遁生活を送る。下女には修道女のようなボンネットを被らせて歩かせている。およそこの世の放蕩生活をし尽くした主人公は、ペイステギの仮面舞踏会を思わせるような葬儀のようなパーティー、喪の宴を開き、隠遁先では黄金の盾を背負わせ宝石をあしらった亀を飼い(すぐ死んでしまうが)や食虫植物や異形の熱帯植物を集め(すぐ萎れてしまうが)独自に香水を調合し、残虐な異端審問の版画やモローのサロメの絵画を眺めて暮らす。現実よりも空想を愛し、ディケンズを読んで薄汚れたどす黒いテムズ河のロンドンを訪れんとするが、パリで満足し引き返してしまう。
    凡俗を忌み嫌いながら、音楽ではベートーベンやシューマンなど俗なクラッシックを愛好する。独自の偏見と歪んだ美学を貫いた生活を送るが、医師の強い勧めによりパリへ戻る。
    パリ、功利主義とアメリカの商業の圧政に屈した徒場へと。
    貴族の凋落と新興のブルジョワ・商業への強い嫌悪を豪奢で華麗な形容詞によって罵る。芸術的な罵り言葉。イギリスのプロテスタンティズムへの嘲笑。ローマへの憧憬。傑作。
    堕天使ルシファーが天上では高位の天使であったように、全ての才能と栄華を一身に受けたはずの貴族の退廃。豪華で官能的な悪魔主義。

  • 文学
    生きるための古典

  • これほど美しい世界観を持った主人公は他には、なかなかいないと思います。
    この本の耽美な世界に溺れるのが大好きです。

  • やはり衒学的なだらっとした記述がツライ。
    それで途中でやめてしまった。

  • 引きこもって自分の望みの世界を構築した人の話。自分が想像した世界を想像のままで終わらせたくないという思いは理解できる気がする。

  • もう何度も読んだけど、旅行のお供に連れてった。

    100年前のヨーロッパ人にとって、カトリシズムがどれだけ精神の桎梏になっていたのかは知るよしもないが、確固たる信仰への渇望が感覚として理解できるような気がするのも、昔読んだときより齢を重ねたからだろう。よしんば、その信仰がどんなものであろうとも。

    心を和らげ得るものは「不可能な信仰」のみであるにもかかわらず、「批判精神と数理学的証明とによって、玄義と教義は排斥され」されてしまう。19世紀末よりも現代によく当て嵌まりそうである。

    『さかしま』が発表された際に、こんなものを書いてしまった以上、作者には銃口か十字架の下を選ぶより道はあるまい、と評した人がいるそうだが、まったくの慧眼である。

    澁澤訳はさすが。後日読んだ『大伽藍』は別の訳者だったが、『さかしま』を澁澤訳で読んでいたから読めたようなものである。

  • ひょ、評価に困るなあー!
    作品としては、数十年後にまた読みたいような面白さがあるのだけど、個人的な好みからは少し離れているので。

    ブルジョワが徹底的に引きこもり、徹底的に自分の好きなものだけ摂取して生きていこうとする話。
    文學、音楽、絵画など、それはもう偏愛に次ぐ偏愛を綴ってゆく。それらの作品が分かればこのアイロニーも分かっただろうに、と少し残念。知らないからこそ、偏屈なおっさんが延々と文句や皮肉をひりだしているようにしか見えないからね。
    ここに出てくるものを全て知ってからまた読みたいような気がした。
    ドリアン・グレイに出てきたので余計にそう思うのかもしれない。彼が影響を受けた世界観として。

  • 尊敬するタイプの引き篭もりの極み。いささか退屈。

  • 作者の教養は素晴らしいのはわかるが、どうもそれをひけらかし気味になっている。形象的な想像は限られている。色彩に対する異様な敏感さには目を見張るものがある。

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