- Amazon.co.jp ・本 (685ページ)
- / ISBN・EAN: 9784314010863
感想・レビュー・書評
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新聞の書評などにのっていたため、購入。
著者のタミム・アンサーリーは、アメリカの高校の世界史の教科書ライターであり、かつ、アフガニスタンからの移住者。
イスラムからみた世界史を書くにはうってつけ。とてもやさしく、違う視点の世界史が理解できる。
全体を通して、西洋の近代化にイスラムは遅れたが、その違いはほんのわずかなこと。西洋の近代化が宗教改革を通じて、宗教と科学の分離、そしてプロテスタントを通じた資本主義、産業革命の発展につながったが、その宗教改革の動きがイスラムではちょっと遅かったということ。
それが近代での科学技術の大きな差になった。(p204)
日本はどうだったか。明治維新ののちの近代化技術の導入にあまり宗教は妨げにならなかったようにも思えるが、それは幸いだったのかもしれない。
その他のおもしろい情報。
①日本人にはシーア派とスンニー派の違いがわかりにくいが、マホメッドの娘婿のアリーまでの間の世俗的なカリフを認めるのがスンニー派で、認めないのがシーア派。よりシーア派の方が宗教に純粋。(p154)
②第一次世界大戦のあとのフランスとイギリスの中東での国境ひきは、シリアをフランスに、あとはフランスにまず分けた。フランスは、シリアのうち大事にしていたマロン派のキリスト教徒が多数になるようレバノンの国境をひいた。イギリスは、オスマントルコを裏側から攻撃するのに協力したハーシム家の二人の兄弟に対して、イラクとヨルダンを分離して渡した。(p565)
③第二次世界大戦中に、ルーズベルトとサウジのサウード家は口頭で、アメリカに石油の利権を自由にするかわりに、サウード家をアメリカは守るために兵器と軍事技術を提供すると約束した。(p572)
イスラムの視点からみると、植民地時代は、英仏が、第二次世界大戦以降は米国が、政権と癒着して、イスラムを腐敗させたと読める。
この意識を西洋諸国が理解することが大事だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
イスラームの人々に記憶として語られているであろうイスラームから見た世界史を、臨場感たっぷりに読み聞かせてくれる物語でした。
内容もさることながら、歴史を語る方法に感銘を受けました。
EHカーは、「歴史上の人物、事件の善悪判断をするのではなく、なぜそれが起こったのか(=時代的制約)を考えろ」と言いました。
筆者はその方法を忠実にとり、歴史上のあるカリスマについてあーだこーだ言うのではなく、そのカリスマを成り立たせていた歴史的経緯、民衆の心情をひんぱんに分析していたように感じます。それがとても勉強になりました。