オープンサイエンス革命

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011044

作品紹介・あらすじ

ネットを駆使した知の共有化が科学を変える<br>インターネットの出現で科学の営みは劇的に変わりつつある。17世紀の科学雑誌による知の共有化という第一次オープンサイエンス革命に次いで、現在は第二次革命期にあると主張する著者は、オンラインネットワークを駆使した知の共有化の可能性を検証し、その重要性を訴える。豊富な具体例を挙げてわかりやすく解説した、新時代の科学へのマニフェスト。

感想・レビュー・書評

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  • この本のいうところの「オープンサイエンス革命」とは、「(オンラインの)集合知」をうまく組み合わせ、新しい発見を創造することである。

    「科学的」でないもので、「集合知」が一番身近に感じられるものを挙げるとすれば、それは「Wikipedia」だろう。

    あらゆる検索に耐えるほどの、膨大な記事。黎明期は、引用元が不明で「使えない」内容のものが多くあったが、現在では「Wikipedia」で調べることに抵抗を持つことがどんどんなくなってきている。

    この本で取り上げられているような「ボリマスプロジェクト(数学の難題の解決)」「カスパロフvsワールド(チェスの試合)」とこの「Wikipedia」に共通することは、「集合知」をいかにうまく使うか、ということに収束するように思える。

    「三人寄れば文殊の知恵」という諺があるけれども、人数が多ければ多いほど、当然まとまりは無くなる。ではそうした場面でどうするか。

    その一つの答えは、それぞれが輝く場を与えることだ。この本では「ミクロ専門知識の注意をうまくコントロールすること」として書かれている。

    AIなどの、「集合知」も混ざり合う現代で、こうした思考ツールをいかにうまく使うか。「知識の無駄遣い」をしないためにはどうするべきか。

    今一度ルールを見直すことが必要であると感じました。

  • 前から読まないとなあとは思いつつも、まあ知っている話が中心なので、いいかと思っていた本。
    とある講演をするにあたって、自分の主観や記憶だよりではなくソースを持って話をせんといかんなあとか、シチズンサイエンスやらゲノム絡みとの話もしておくかあ、という時に典拠に使うために読んだ。
    そういう使い方に(自分で再整理し直すのはめんどいはなしにソースを持ってくるときに)向いている本。

  • 集合知の話。それは圧倒的な人数であったり、圧倒的な人数から選ばれた人であったりするところが、これまでと違う。
    専門家と一般人の知的レベルに差がなくなった。
    圧倒的な人数がインターネットを通じて共通の話題を自由に論ずる環境が整ってきた。
    などの要因で、仕事と関係なく専門家レベルの研究が爆発的に進展する。

    野鳥の移動、天体観測、数学理論などでは圧倒的なパワーを発揮する。人海戦術だけでなく、質的にも威力あり。リナックスやウィキペディアもそう。

    ただし、条件の限られた研究について、純粋なモティベーションのもとに成立する話。これを管理するのは至難の業。すべてが成功するわけではない。仕事になるとより難しいかもしれない。遊びだから、同じことでも面白がって、モティベーションを維持できる。飛躍の可能性が人を熱狂させ、参加させる面もある。いずれにしても、ボランティアであることは重要かもしれない。
    学会だって集合知だが、オープンサイエンスのスピード感が圧倒的なのは参加する人数とこの熱狂による。

    リナックスではモジュール化して各々の開発を進めたことが成功の鍵とされる。やはり管理が重要。
    オープンソースの世界では、ある程度経験が積み上がっている。

    また、オープンにされた膨大なデータ(データ自体の信頼性にもよるが)の集積をマイニングすることにより、新たな知が生成される可能性もある。そのデータ量はこれまで一人の学者が読んだ本や論文の数とは比較にならないくらい大きく、コンピューターによる検索技術や分析技術により、思いもよらなかった関係や法則を発見できる可能性がある。
    宇宙の情報や遺伝子の情報(インフルエンザは公開されていないようだが)はオープンソースが整備され、誰でも見れるし、誰でも追加できる体制ができている。
    当初、自己の利益との関係でクローズドだった研究成果は、オープンにすることで飛躍的にこの分野の進歩をもたらした。特許と同じで、そのバランスが大事だ。

    インターネットで多くの情報が無料で得られることにより、論文、新聞、雑誌といった情報とのつきあい方も大きく変わろうとしている。論文の無料化も始まっている。これらの業界はビジネスモデルの根本的な転換を迫られている。有用な情報は有料なのか?有用な情報からさらに有用な情報を発信することを抑制してもいいのか?オープンソースの世界の成功は、既存概念を破壊しつつある。
    そして、一般人がこれらの専門情報にアクセスできることもオープンサイエンスの土壌を育む要因の一つである。

    産業革命において、ドイツで発達した職業としての研究(特に化学研究)はこれまで圧倒的な威力を発揮してきたが、オープンサイエンスのパワーはそれに勝るとも劣らない。まだ、海のものとも山のものともわからない状態だが、その片鱗を見る限り、ハマればすごいと思える。

    ただ、人数が膨大でこれまでのような管理では無理だろうし、玉石混交を前提にしないと、従来の学会と何ら変わりないところが悩ましい。

  • オープンサイエンス革命として、集合知の有効活用、オープンソース・コラボレーション、データウェブ、市民科学などを通じて、オープンサイエンスの現状を解説。
    今後、ネットワーク化された科学ごどう発展するか楽しみである。

  • 数千年前の仏典結集にまで思いをはせる。あれは集合知の成功例なのか、限界の実例なのか。

  • 第1章 発見を再び発明する
    第2章 オンラインツールは私たちを賢くする
    第3章 専門家の注意を効率良く誘導する
    第4章 オンラインコラボレーションの成功条件
    第5章 集合知の可能性と限界
    第6章 世界中の知を掘り起こす
    第7章 科学の民主化
    第8章 オープンサイエンスの課題
    第9章 オープンサイエンスの必要性

  • 昔からある集合知の概念が、個人がネットにつながることができるようになったことで、具現化されてきている。その事例を集めて、オープンサイエンスの実現のために重要なことをまとめたもの。読むほどに、実際にサービスを作らないと、成否を決める作り込みのコツはわからないのではと感じた。事例集として役に立ちそう。

  • 概念の定義、事例などは適度に詳細でわかりやすく、読みやすい。
    チェスのカスパロフ戦、リナックス、Fold itなどの輝かしい成功例とそこから導かれる「べき」論。
    提言になると尻すぼみになるのは致し方ない。資本主義の枠組みを壊すくらいのパラダイムシフトが必要な概念だと思うので、既存の仕組みの中で実現領域を広げようとすると閉塞感が出てしまう。

  • 一般の人がサイエンス、研究活動にも参加し、その成果も全世界的に共有されるという動きを捉えている。
    これを読むと自分も何かやりたくなってくる。ただし、その最初の一歩が難しいのは事実。
    『バイオパンク―DIY科学者たちのDNAハック!』に通じるものもあるかもしれない。
    そして、日本のオープンサイエンス革命がニコニコ学会βなのかもと思った(→『 進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』)。

  • ネットワーク化された社会において、サイエンス分野でもビッグデータを取り扱う必要がある場合に、専門家である科学者だけではなく数多くの人たちが参加することによって解決が加速する場合がある。
    また、ビッグデータではないにろポリマスプロジェクトの様に集合知によって解決するものもある。これらの事例が魅力的に紹介されています。

    本書では、科学の民主化は必然的な流れであると説いている。基礎科学分野においてはその通りだと思う。民間企業がしのぎを削っている応用科学分野では様々な障害があることは容易に想像ができる。

    既に私たちは、ディジタル化、ネットワーク化、フラット化された社会で生きている。かつてSFの世界であったようなことが徐々に現実になっているので、本書が描いているオープンサイエンス革命も画期的な効用が世の中に知らしめられた場合に、一気に加速する可能性はある。

    性善説で考えれば、オープンサイエンスには魅力的なことが沢山あるので、多いに期待したい。

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