火天風神 (光文社文庫)

著者 :
  • 光文社
3.25
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本棚登録 : 205
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334741068

作品紹介・あらすじ

最大瞬間風速70メートル超。観測史上最大級の大型台風が三浦半島を直撃した。電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立したリゾートマンション。猛る風と迸る雨は、十数人の滞在客たちを恐怖と絶望のどん底に突き落としてゆく。そして、空室からは死体が見つかって…。殺人なのか?そして犯人はこの中に!?謎とサスペンスに満ちた傑作パニック小説。

感想・レビュー・書評

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  • 長年積ん読していたものについに手を出した。
    棚ざらしの理由のひとつが「古いから」だったが、どうして、とても30年近く前に書かれたものとは思えないくらいすぐれて現代的だ。しっかりした知性と観察眼を持った女性は、この世界の真の姿を昔からちゃんと見抜いていたのだろう。

    台風によって都会人の生活が大きく損なわれるとか、街のど真ん中で何人も人死にが出るとかは、本書が書かれた頃には現在ほどのリアリティを持っていなかったように思う。ゆえに当時は「パニック小説」と呼ばれたわけだが、30年経って現実が本作に追いついてしまった。五原ゆかり、田村唯春、祖父江数人、平石紘作、木村昭吾、杉田茂といった面々も、むしろ2000年代以降によく描かれるようになったタイプのキャラクターだ。
    登場人物の何人かはヒロイックな行動を取るが誰ひとりとして英雄とは描かれないし、かれらの深層をえぐり取る作者の筆はいっそ容赦ないほどだ。(才能ある)女性にしか書けない作品だとしみじみ思い、これが初読みである己の不明を恥じた。
    狭義のクローズド・サークル作品ではないが、それのもたらすヒリヒリ感が好きな方にはぜひお薦めしたい。

    2022/9/17読了

  • 21年1月19日、夜、読了。若竹七海さんの小説、初。

    知らずに読みましたが…デビューから5作目、だそうですね。読み終わるのに、結構時間がかかりました。まあ、楽しめたのですが…。
    登場人物の一人が、かなりキテた(笑)、そこが気持ち悪くて、何度もつっかえてしまいました。でも、作品自体は、楽しみました。

    次は、葉村晶シリーズ、行ってみようかな…「プレゼント」に。

  • 好きな著者だったので。

    パニック小説でもあり、ミステリーでもある。
    大型台風に襲われた三浦半島のリゾートマンションには、
    タイを放浪していた男とその甥、
    夫の浮気に腹を立てた妻、
    聴覚を失った女性、
    大学の映画研究会のメンバー、
    妻を亡くし釣りをはじめた元高校教師、
    不倫旅行の男女、
    興信所の調査員と管理人がいた。

    それぞれの事情を抱えながら、
    たまたま同じ場所にいた人々が、
    台風や火事、暴力とたたかうことになるが、
    予想外の人が亡くなったり、
    殺されてなかったりと、
    正直一度読んだだけでは事態が把握しきれなかった。

    誰にもハッピーエンドはなかったし、
    思ったようなミステリーではなかったが、
    読み応えのある作品だった。

  • 次々に起きる事件にページをめくる手が止まらなかった。おもしろかった!

  • 20180314

  • 若竹七海による、パニックサスペンス。
    解説にも詳しいが、いわゆるグランド・ホテル形式で、語りの巧みさがこのスタイルを抜群に活かしている。比較的ページは多く、当然と人物相関図も複雑になるが、負担がない。
    さらに、これは意図したものかどうか不明だが、例えば一つの段落に複数視点が絡んだり、動きのあるシーンの描写が乱雑だったり、ちょっと読み辛さがあれど、疾走感や入り乱れ混乱する状況にしっくりきた。
    唯一期待を外されたのは、脇で起こる事件のオチ。オマケのように添えられ、最後に本懐に躍り出るのかと思いきや、オマケのまま済んでしまったのが残念だった。
    個性や、偏った特徴はないにせよ、ある程度の本読みにはウケる良作だと思う。
    4-

  • 戦後最大の台風が近づいた海沿いのリゾートマンション。そこに、集まった様々な事情を持った人たちが集まり、そして遺体が見つかる。そんな話。


    若竹さんの小説は、葉崎市シリーズと葉村探偵シリーズぐらいしか読んだことなかった。
    葉崎市シリーズは、ほんわかしたミステリーというかんじで、葉村探偵はいつも満身創痍なかんじ。今回のお話は、どっちかというと葉村さんぽいかんじだった。


    人間って極限状態になるとリミッター外れてヤバくなるのねと思った。
    パニック映画にも似たそんなお話。絶対に、経験はしたくないそんなお話でした。


    2015.6.14  読了

  • 4 

    これは怖い。自然が怖い。人間が怖い。

    タイトルからも想像がつくし、カバー後ろのアブストラクトを読めば、登場人物たちが物語の中で大型台風に巻き込まれるのは明らかなのだが、それだけに、序盤に次々と描かれる彼らの日常の描写が、正に嵐の前の静けさといった趣で不安感を煽り、まず怖い。まだ台風が近づいてきたばかりなのに、死亡フラグもなくあっけなく逝ってしまう人物が何人かいて、この後もっと大変なことが?と想像してしまい怖い。大型台風の脅威に危機感を抱けない人間が沢山いて怖い。その巻き添えになることを想像するとやるせなくて怖い。そもそも人が吹っ飛ばされるほどの強風が怖い。何よりも、台風とは全く関係なく頭のおかしな人間たちが怖い。そしてこの作者は恐い話が上手い。もう少しアクション部分の描写がわかりやすいとなお良かったのだが。

  • 大型台風が襲来した中で主にリゾートマンションが
    舞台のパニック小説。
    色々な背景がある登場人物達を描いていて、
    あちこちに話が飛ぶのでなかなか落ち着かないけど、
    ある意味それが緊張感が出てよかったかも。。。

    途中からマンションの空き室に死体が出てきて、
    犯人は誰~と気になるが、えっそんなオチ!?って
    感じで残念。。。これがマイナス★の要因。

    あと簡単に人が死んだりしてたけど、
    意外と現実はこんなもんかもね~と思いました。

  • 古さを感じる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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