- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334744915
感想・レビュー・書評
-
「青のある断層」「赤いくじ」「権妻」「梟示抄」江藤新平「酒井の刃傷」酒井忠恭「面貌」松平忠輝「山師」大久保長安「特技」稲富直家
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本に収録されている時代小説は江藤新平、松平忠輝、大久保長安、稲富直家、川合定恒といったこの手の小説ではあまりスポットが当たらない人物が主人公になっている。そのせいか、清張の他の現代小説に通じるような人間の有様が描かれている少し変わった歴史小説になっていた。なかなか新鮮。
-
松本清張には伏線がない、後のために張る伏線がほとんどない、という説にはうなずけるものが。
それゆえに、「現実」の感触に近い。
「現実」のささいな行為や出来事は、それがどんな結果を招くかを予測して行われるのは特殊な場合と言ってよく、ほとんどの場合それはない。
つまり、張ろうと思って伏線を張るわけではなく、結果的にあああれが伏線となったんだな、と思うだけだ。
時折「とほほ」な結末だったりすることも含めて、その感触に近い。 -
表題作「青のある断層」が抜群におもしろい。清張サンの人が持って生まれた才能に対するやっかみ、しっとがにじみ出ている。
才能を持つ者は他人の才能を吸い取る能力にも長けている。それゆえに、持つ者と持たざる者の格差はさらに広がっていく。そんなどうしようもない現実を突きつけられる作品だ。つくづく、才能のある人はうらやましいと思う。 -
20101103