クロスファイア (上) (光文社文庫 み 13-12 光文社文庫プレミアム)

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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334749736

作品紹介・あらすじ

青木淳子は常人にはない力を持って生まれた。念じるだけですべてを燃やす念力放火能力-。ある夜、瀕死の男性を"始末"しようとしている若者四人を目撃した淳子は、瞬時に三人を焼殺する。しかし一人は逃走。淳子は息絶えた男性に誓う。「必ず、仇はとってあげるからね」正義とは何か!?裁きとは何か!?哀しき「スーパーヒロイン」の死闘を圧倒的筆致で描く。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼畜の所業としかいえない犯罪をやっておきながら、逃げおおせた犯人に鉄槌を!
    とは、考える。
    宮部みゆきさんがその感情を料理するとこうなるわけかー。

  • 上巻から下巻へと一気読み。青木淳子の最期は何度読んでも哀しすぎる。人生の中で心を許し、愛した唯一の男性である木戸浩一。その浩一に銃で撃たれる。彼女の人生は、自分なりの正義を貫いた。その正義を共有し、信頼した者から裏切られる。何度読んでもやるせない気持ちになる。石津ちか子にはもう少し早く淳子を見つけて欲しかった。最後、倉田かおりが淳子のぬいぐるみを大事に引き受けたところには超能力者の意志の連続性を感じた。また、この連続性とともに正義を貫いた淳子の人生には大いに意味があったと信じたい。

  • 上下巻読み通しての感想。
    主人公・青木淳子には念力放火能力がある。
    強い正義感を持ちながら、同時に人を殺す能力を持っている淳子。
    法によって裁かれない犯罪者たちを、淳子は自らの意思と能力で罰しようとする。
    一方、「ガーディアン」は同じように犯罪者には罰が必要だと思っているが、「正義のためには多少の犠牲は仕方がない」と考えている。
    偶然か、運命か、この多少の中に不幸にも含まれてしまった人にとってはとんでもない考え方だ。
    「正義」とは何か?
    人が人を殺していいのか?
    能力はいったい何のためにあるのか?

    「あたしは装填された一丁の銃だ。
    常に標的を探している。」

    自分を銃に例える淳子は、そう思うことでどうにか自分を保ち、自分の存在を許そうとしているように感じた。
    能力者は必ず一度は自問自答するのだろう。
    この力は何のためにあるのか?と。
    子供の頃から能力を持つがゆえに普通の暮らしが出来なかった淳子。
    人との関わりが薄かった分他者への共感力が著しく乏しく、そのために歪んだ正義感が淳子の中で正当化されてしまったのだろう。
    淳子の孤独と哀しさ、突き刺さるような胸の痛みを感じさせる物語だった。

  •  超能力を使い火を放つ能力を持った青木淳子。ある夜4人の若者が一人の男性を殺そうとする現場を目撃してしまう。淳子は三人を焼死させるも、一人逃がしてしまい男性も死んでしまう。淳子は男性の復讐を誓い、逃げた一人の足取りを追い始める。

     淳子の暴走ぷりが読んでいて痛々しい…。正義を実行しているのか、ただ自分の力を解放するためのはけ口として、悪人たちを殺しているのか、読めば読むほど分からなくなってきます。そのためか淳子の静粛の場面はとてもモヤモヤしてしまいます。

     モヤモヤの原因としてもう一つ思うのは、淳子が事件に対しては基本的に部外者だということです。確かに被害者には同情しますし、加害者は少年のため大した罪にも問われない可能性は高いです。

     また犯人グループは死んだ男性の彼女を人質に取っていてそのために手段を選んでられない、という事情があるのもわかります。

     それでも事件に対し完全に部外者である淳子がここまでやることは正義なのか、当事者以外の人たちも巻き込む必要はあるのか、そうした苦悩があまり描かれておらず、ひたすら怒りにまかせて人を焼殺してしまうのが、とても違和感があります。彼女の正義は本当に歪みがないのでしょうか。

     犯人を追う物語から、謎の人物、謎の組織が出てきてまだまだ波乱は起こりそう。また警察側の動きも描かれていて、警察は淳子にたどり着けるのかも気になるところ。

     そして何よりも気になるのは淳子の正義の行方。このあたりもしっかりと下巻で描いてほしいです。

  • 面白かった!最後まで。
    ドラマ見てるのと一緒!

  • 約20年振りくらいに再読。
    宮部みゆき作品で一番最初に読んだ本。

    安定のおもしろさですね。下巻が楽しみです。

  • サスペンス調の話は面白いのですが、ドキドキしすぎて身が持ちません(苦笑)。

    以前読んだ宮部さんの作品に本作の主人公“青木淳子”が登場していたと思うのですが、特殊な能力を持った彼女がその能力を主人公のために役立てようかと提案するシーンがあった記憶があります。

     淳子はこの能力で過去に罪を犯し裁かれなかった加害者に制裁を加えようとします。
    最初は正義のためだったのかもしれませんが、淳子がその能力を最後までコントロール出来るのか気になります。
     そして、まだ淳子まで辿り着かない警察の手も下巻では迫ってくるのでしょう。

  • 能力があるのは分かったけれど、自分に関係ない人に使えばそれは殺人ではないか。と私は思う。生きるに値しないような人達ばかりだし、その人達に殺された命を思えば私刑もまた支持されるのだろうけれど。淳子がどう考えても幸せになれるとは思えず、不安ながらも下巻へ。小物や言い回しに時代の流れは感じますが、物語としてとても面白く、どんどん読めました。

  • 3年ほど前に、旅行中に読んだ本で、この前図書館で、珍しく文庫本を発見し、読んでみました。
    このクロスファイアでは、念力放火能力を持っている青木淳子が、たまたま、溜まっている力を放出させようと訪れた廃工場で、若者たちがやってきたことから始まります。また、おっかさんと呼ばれる石津ちか子刑事視点と、交互に物語が進んでいき、どちらもどんどん進んで行き、目を離すことができず、どんどん読んでしまいました。
    宮部みゆきさんの作品は、時代物以外は、ほとんどすべて読ませて頂いているのですが、多彩なジャンルを書いていらして、どの作品も外れがないです。また宮部みゆきさんらしい作風がいいですよね。
    この調子で、下巻も読んでみたいと思います。

  • ダークヒーロー(能力持ち)である青木淳子が悪を裁く。それを追いかける婦人警官、キーパーソン変わり者刑事。
    宮部さんの長編は魅力的なキャラクターがいっぱい!今回では特に牧原さん。冴えない感じなのかも知れないけれど、カッコいいです。上巻では起承転結の「承」途中くらいまでだったので下巻が楽しみ。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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