- Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167549060
作品紹介・あらすじ
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める-。稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
感想・レビュー・書評
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悪夢はどこまでも追いかけてくる。
罪を犯せば償わなければならない。
秘密を持てば孤独になる覚悟を持たなければならない。
闇に引きずりこまれたなら自分の足で出ていかなければならない。
熱に浮かされたような時間もやがて過ぎ去る。
その後にはいったい何が残るというのだろう。
後悔、喪失感、寂寥感……
残されたなかに幸せの種は見つかるのだろうか。
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの相談を受ける。梶田信夫は、同社会長であり杉村の妻・菜穂子の父でもある今多嘉親の個人運転手だった。
亡き父について本を書きたいという彼女たちのために、一見普通な梶田の人生をたどり始めた杉村の前に隠された秘密が浮かびあがる。さらにその秘密は別の方向へとも繋がりはじめ……
探偵でも刑事でもない杉村は、謎を解くというよりも、心に突き刺さった刺を見つけるきっかけを与えてくれたように思う。
ただし刺を抜くのも、そのままにするのも、杉村の役割ではない。それは彼が薄情なことでも、まして逃げることでもないはずだ。
なぜって結局、答えをだすのは刺を育ててきた人間でしかないのだから。
その結果、真相は藪の中だろうと、後味の悪さを残したままであろうと、それはもう仕方がない。
だって人間とはそんなに簡単に割りきれるものではないだろう?人とは所詮こういうものなのだよ。そう囁かれているようだった。この読み心地、ああそうか松本清張作品に似てるのかな。
そういえば杉村も松本清張意識してたよね。
それにしても探偵の役割をする杉村さんて、こんなにも他人の心の澱に触れて大丈夫なのかな。
探偵としては、まじめすぎじゃない?
ちょっと心配だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いつか読もうと思ってた杉村三郎シリーズ第一弾♪
今多コンツェルン会長の娘婿という立場でありながら、いたって平凡なサラリーマンである杉村三郎が追う日常ミステリー。
杉村三郎、なんか好感持てて好きだな〜!
そりゃ、この人でシリーズ化したくもなるな。
犯人探しの話でもあるけど、人間ドラマの要素が強かったかな〜。
いい感じで終わる話かと思いきや、人間の嫌な部分も見えたり、ラストはなかなか嫌な感じ。笑
ハラハラドキドキでもなく、ほのぼのでもないけど、これはこれで面白かった。
ぼちぼち続きも読んでいこうかな。
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「名もなき毒」を読む予定で調べてみたらシリーズものということが判明。したがって1巻目のこの作品から。
中盤過ぎまではややのんびりというか、ゆっくり物語は進行していきますが、後半一気に巻き返した印象です。終盤は夢中で読んでました。
次作が楽しみです♪ -
切なさと、ちょっとみすてりさがピリッと入って、主人公のどことなくクールで情深さが絶妙。シリーズとして読み進めたくなる。
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**「『誰か』: 杉村三郎と始まる心の旅路」**
『誰か』は、杉村三郎シリーズの始まりを告げる一巻完結の物語です。宮部みゆきさんが織りなすこの物語は、ある家族の深い絆を辿る旅に読者を誘います。それは、娘たちの愛する父の記憶をたどり、その人生に隠された物語を発見するプロセスを通じて、私たち自身の心にも響くものです。一見すると平凡な人生の背後に隠された真実を暴く旅は、まるで小さな宝箱を開けるようなワクワクとした感動を与えてくれます。
このシリーズは、一巻ごとに完結する物語でありながら、杉村三郎という一貫した主人公を通じて繋がっています。『ソロモンの偽証』や『模倣犯』といった、宮部みゆきさんの他の長編作品と同じく、深い人間ドラマと巧みに組み立てられた謎解きが魅力です。各巻が独立した物語でありながらも、杉村三郎シリーズ全体としての大きな流れやテーマが感じられるのです。
『誰か』を読んだ後に感じる寂しさは、物語との別れが名残惜しいからこそ。しかし、一巻ごとに完結するこのシリーズの素敵なところは、新しい巻に手を伸ばすことで、いつでも新たな物語に没頭できる点にあります。『ソロモンの偽証』や『模倣犯』にどっぷり浸かった経験がある方なら、この杉村三郎シリーズの物語も、同じように心に残る体験となるはずです。
『誰か』と共に始まる杉村三郎の物語の旅は、宮部みゆきさんの独特の世界観を堪能する貴重な機会です。毎巻新しい物語を楽しみにしながら、最終巻を閉じるその時までの寂しさを今から想像するのも、このシリーズの大きな楽しみの一つです。一巻ごとの完成度の高さと、物語全体としての深みは、宮部みゆき作品ならではの魅力を改めて実感させてくれることでしょう。 -
宮部みゆきの「杉村三郎シリーズ」の第1作。ブグログに記録はないけれども、私はこの本は読んでいる。が、今回あらためて読んでみて、内容を全く覚えていないことに驚いた。ミステリーなので、内容を覚えていないことは悪いことではないのであるが、自分の記憶力のなさに愕然とした。
ミステリーとしては面白かった。いくつかの謎が提示される。一つは、梶田信夫を事故死させたのは誰か。一つは、梶田信夫とその家族の秘密。一つは、携帯電話の着信音から導かれる謎、等々。
このシリーズの2冊目である「名もなき毒」も既に読んでいて、こちらはブグログに記録を残しているし、何となく読んだ記憶もある。次は3冊目を読んでみよう。宮部みゆきも、読み続けたい作家の1人となった。 -
杉村三郎シリーズの第1作。読んだはず…なんだ。何せ本棚から取り出したのだから。ところが、ひとかけらも記憶に残っていなかった。というわけで、またまた楽しい読書ができた。もうけた、と思おう。
本を読む楽しみは、作家さんの視点から物事を眺められること。自分では持ち得なかった角度から切り取ってくれたり、見ていたはずの物事をより深く繊細に見せてくれたり。宮部さんはどちらかと言えば、後者の作家。些細な、本当に何気ない描写の積み重ねが、物語にページ以上の厚みを与えている。主人公は杉村だが、狂言回したる彼の印象はとても薄い。その分、彼を取り巻く人々が生きている。
不慮の事故で亡くなった義父の運転手、梶田信夫。杉村は義父に命じられ、亡くなった父の自伝を作りたいという姉妹を手助けすることに。小さな謎が謎を呼ぶ。正に宮部さんの真骨頂。物語のクライマックスは決して後味のよいものではなく、杉村に投げつけられた言葉は刃のような悪意を含んだ物だった。しかし、それだけでは終わらない。稀代のストーリーテラー宮部みゆきをご堪能あれ。 -
今多コンツェルン会長の娘婿である杉村三郎が主人公。元記者の経験から今多コンツェルンの広報室編集者となった杉村三郎だが、会長の運転手だった梶田が自転車の轢き逃げで死亡する。
梶田の娘姉妹聡美と梨子が事件として今多会長に無念を晴らしたいと伝え、杉村三郎に相談があった。
痛々しい殺人事件でもなく、もしかすると事件性もなく、事故なのかもしれない案件だが、杉村三郎は調査に踏み込んでいく。轢き逃げは紛れもない犯罪である。
この事故か事件が片付いたかと思いきや、別件の謎解きに杉村三郎が挑んでいく。
読み終えて、あれっ、これって宮部みゆきさんの作品だよなと表紙を見返してしまった。らしくない印象を受けたからだ。それなりに面白かった。
シリーズものは面白いからシリーズになっていると思い手に取ってしまう。シリーズの始まりとしては少しインパクトが足りなかった。 -
どんどん頁をめくらせれた!
杉村三郎シリーズ第1弾。
今多コンツェルン会長の娘と結婚し、その社内報編集部に在籍させられている三郎。
会長の私用運転手:梶田の事故死、梶田の娘姉妹からの相談事の対処を命じられたところから物語は始まる。
宮部みゆき作品は、ストーリーの面白さに加え、社会問題を絡めての堅めの語り口も魅力。
20年前に書かれた本書だが、自転車の暴走事故も軸の一つとし、今も全く古さを感じない。
心理描写より、プロフィール的な紹介を積み上げ、人物像を鮮明にするワザも凄い。
幸せな家族描写が、返って不穏な空気感だ。 -
先に「ペテロの葬列」を買ったがそれがシリーズ物と知り、シリーズなら最初からと買った一冊。
裕福なサラリーマンが事故の真相を探る話だった。
姉妹の父親が事故死してその犯人を探すから始まったが、終わりは姉妹の喧嘩だった。
あんまり話に興味がわかなかった。
亡くなった父親の本を出して犯人を見つけるってのがちょっと無理があるんじゃないか?と思ったし、そもそもそんな事しなくても、犯人は自首してたと思う。
父親の過去はわかったが、世間にさらすような内容でもないし
結局最後は姉妹のいざこざに首を突っ込んだだけみたいに感じた。
シリーズ次の「名もなき毒」も買ってあるのでそちらは興味が出てくるような小説であって欲しいと思った小説でした。