- Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751876
作品紹介・あらすじ
若い姪と二人、都会暮らしの教授に仕送りしてきた生活。だが教授は…。棒に振った人生への後悔の念にさいなまれる「ワーニャ伯父さん」。モスクワへの帰郷を夢見ながら、次第に出口のない現実に追い込まれていく「三人姉妹」。生きていくことの悲劇を描いたチェーホフの傑作戯曲二編。
感想・レビュー・書評
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『「中年」はその「永遠の現在」、はじめも終わりもなく、そしてなんの光明もない「現在」をひたすら生きなければならないのだ。』
解説のこの言葉に、鳩尾殴られてうずくまりたい気持ち…。
チェーホフは苦しい。
でも、その苦しさでなければ救われないものもあるのだ。
好きだよチェーホフ。 -
映画『ドライブ・マイ・カー』で引用されていた「ワーニャ伯父さん」がとても良い感じだったので、興味を持って久々のチェーホフ。チェーホフは、吉田秋生の『櫻の園』を読んだ30年以上前くらい(…)に、本家『櫻の園』を読んで以来。
それほど長くない戯曲。ワーニャ伯父さんは47歳。母親マリヤと、亡き妹の忘れ形見つまり姪のソーニャと暮らしていたが、そこへ亡き妹の夫であるセレブリャコフと、若く美しい後妻のエレーナも一緒に住むようになった。
セレブリャコフは元大学教授で、マリヤはこの娘婿を崇拝、妹との結婚当時はワーニャも彼を尊敬していたが、引退してからは実はたいした人物ではないことに気づき幻滅、文句ばかり言っている。その遠因はというと、実はセレブリャコフの若き後妻エレーナが、ワーニャ伯父さんは羨ましくてたまらず、ぶっちゃけ好きになってしまったから。20歳も年下のエレーナに言い寄るワーニャ伯父さんは正直ちょっとキモい。ちなみにワーニャ伯父さんはずっと独身。
エレーナに恋している人物はもう一人いる。医者のアーストロフ。彼はアラフォーくらいだが、現代でいうならSDGsが趣味(?)の洗練されたイケオジで、実はソーニャは彼に恋している。しかしソーニャは不器量で、アーストロフは恋愛対象として彼女を見ていない。一方ワーニャ伯父さんに対しては邪険なエレーナも、アーストロフのことは憎からず思っている。このエレーナ、総モテの美女だが、性格も別に悪くなくて結構好きでした。
簡単に言うと、ワーニャ伯父さんはコンプレックスの塊で、アラフィフになって人生の終わりが近づいたときに、自分の人生がいかに無意味だったかということに気づき、同年代なのにそこそこいい思いをしてきて若くて美人の後妻までいるセレブリャコフが羨ましくて仕方なく、自分の不幸の責任をセレブリャコフになすりつけようとしている。憎めない親近感も沸く反面、いい歳して情けない…とゲンナリさせられる側面もある。
しかし人生の苦悩を吐き出す彼のセリフが、とにかく同じくアラフィフのおばちゃんには刺さりまくり、これは若い頃に読むより、今の年齢になってから読んで正解だったなと思う。ワーニャ伯父さんは自殺しようと医師のカバンからモルヒネを盗み出すがソーニャに取り上げられてしまい、ソーニャに生きていくことを説得される。伯父さんと違ってソーニャはまだ若いのに、不器量で失恋して彼女もまた人生に絶望している。
この年になって改めて、なんのために生きているのか、残りの人生をどう生きればいいのか、考えて虚無感に襲われることも多々あるので、ソーニャの説得はおばちゃんにもとても響く。それでも生きていくしかないのだ、という、覚悟というよりは諦念。これは手元に置いておきたい1冊だなあ。
『三人姉妹』のほうも最終的なテーマは同じだけれど、こちらは登場人物が多いのと、時代背景が現代日本人にはちょっとわかりにくいので、ワーニャ伯父さんほど面白くはない。労働しなくてよい階級に生まれた姉妹たちが労働しはじめた時代。やたらと軍人さんたちが出てくるけど、このひとたちは居候なの?客なの?どっから沸いて出たの?と関係性が把握できなかった。実際に舞台で見れば、登場人物の年齢なども一目でわかるしもっとわかりやすいのかもしれない。 -
ペシミスティックな美学?
何かありそうで、結局何もなく、
誰も幸せにならない。
庶民の暮らしと悩み。
中年ワーニャの文学には、死も許されず、
未来は暗くそのまま続く。
チェーホフなりのユーモアは、
その『間』において、俳優により表現されそう。
エレーナにはなかなか惹かれない。 -
2篇とも生きることの辛さ、閉塞感を感じながらもわずかな望みを繋いでいくような展開。時代背景も含めた土台となる状況がよくわからないので曖昧に読み進めてしまう。タイトルがワーニャ伯父さんとなっているがワーニャが主人公ではない。
三人姉妹については更によく状況がつかめず。
2作品とも演劇をみている気分にはなった。 -
明るい未来が待っている。いまはこんなに苦しくて大変でも…
明るい感じで始まったのに、いつの間にか絶望になっていく。まさに悲劇にして喜劇のおはなし。
姉妹たちの最後のセリフは、深みがあり、生きて行きたいという思いがすごい伝わります。
もう一度がんばる気持ちをくれる作品です。 -
「女三人のシベリア鉄道」にチェーホフの話が出てきたので急に読みたくなったのだけど、やっぱりわたしは戯曲って苦手みたいだ。戯曲はセリフを言うように読み、行間を読まなくては、と思うんだけど、どうしても普段の癖でストーリーを追うようにざざーっと雑に読んでしまって。
だから、単に、背景がよくわからず、登場人物の対話はかみ合わず、なんかわけわかんないなー、という。
解説を読んで少しわかった。
人生に意味はないけど生きなくてはー(大雑把すぎ)、みたいなチェーホフの非情さには共感したりするのだけれど。
この年になると、もう人生やり直せないし、未来はむなしくても生きるしかない、っていうワーニャ伯父さんの気持ちもよくわかるのだけれど。
それにしても、フツーに読むと、みんな勝手にぐだぐだめそめそ不満を言いすぎだ(笑)。
関係ないけど、
チェーホフの思い出。
・小学校高学年のころ、三人姉妹とか桜の園っていうかわいらしげな題名にまどわされて読んでみたら、まーーーったく意味わからなかった。でも、図書の先生だかなんだかに、もうこんな大人っぽいものを読むのね、とか言われて困った。
・25年くらいも前、芝居をさんざん見ていたころ、青山円形劇場で日本人の小劇場の俳優さんたちが出ていた(と思う)チェーホフのなにかを見て、すごくおもしろかった。-
そうそう三谷幸喜が演出する「桜の園」がPARCO劇場で上演されてました。7/25からKAAT神奈川芸術劇場で、その後大阪みたいです。そうそう三谷幸喜が演出する「桜の園」がPARCO劇場で上演されてました。7/25からKAAT神奈川芸術劇場で、その後大阪みたいです。2012/07/23
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三谷さんのチェーホフはおもしろそうですね! なんとなく合ってる気がする。でもチケットとるのが難しそうかな。三谷さんのチェーホフはおもしろそうですね! なんとなく合ってる気がする。でもチケットとるのが難しそうかな。2012/07/24
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「でもチケットとるのが難しそうかな。 」
そうですよね。
舞台観れたら一番良いのですが、無理な人のために映画化!←安易だなぁ~「でもチケットとるのが難しそうかな。 」
そうですよね。
舞台観れたら一番良いのですが、無理な人のために映画化!←安易だなぁ~2012/07/26
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チェーホフの登場人物は、私が口にするのを躊躇い胸に閉じ込めている本音を、どうしてこうすんなりと口にしてしまうのか。現実に翻弄されて、自分がしがみついてきた美しい幻想を壊されても、生きていかねばならない人々の姿。終わりが来ることを救いにすれば、目の前の幸せを味わえるようになるのだろうか。
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人間は如何にして自らを欺くか。時代は旧いのに描かれている人間模様は現代と変わらない。人々の気持ちは一方通行で、登場人物たちはやがててんでに散らばっていく。両作品とも「エンド」が存在しない、悲惨ながらも「to be continued 」なのである。
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初チェーホフ。人間の情けなさと、それでも高貴なものを信じようとする葛藤。ロシア文学ですねー。
Nanaさんのnote見ました。
結局「ワーニャ叔父さん」読め、ということなんですが、映画観て予測していたことがあまり間違ってい...
Nanaさんのnote見ました。
結局「ワーニャ叔父さん」読め、ということなんですが、映画観て予測していたことがあまり間違っていなかったと思いました。私は「偶然と想像」の方が、作品的には良かった。
そうなんだ。
先日、岩波ホールが7月に閉館になると聞いた時に、新しいミニシアター誕生の話もあったなぁと思っていたの...
そうなんだ。
先日、岩波ホールが7月に閉館になると聞いた時に、新しいミニシアター誕生の話もあったなぁと思っていたので、チェックしたら、そのK2(下北沢)の杮落しが「偶然と想像」でした。チョッと観たくなってきた。。。