失われた時を求めて (1(第1篇)) (光文社古典新訳文庫 Aフ 4-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (470ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752125

作品紹介・あらすじ

色彩感あふれる自然描写、深みと立体感に満ちた人物造型、連鎖する譬喩…深い思索と感覚的表現のみごとさで20世紀最高の文学と評される本作。第1巻では、語り手の幼年時代が夢幻的な記憶とともに語られる。豊潤な訳文で、プルーストのみずみずしい世界が甦る。

感想・レビュー・書評

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  • ドストエフスキー五大長篇を読み終えた今、「世界一長い小説」に挑戦して見るのは今ではないか?と思って読み始めたものの、読み難い。。

    そして、光文社古典新訳文庫は6巻で中断したまま、完訳するのかよく分からないと知って、このまま読み進めたものか、悩み始めた。

    マドレーヌを紅茶に浸して一口食べた瞬間から、幼少期のフラッシュバックが始まり、430頁後に、回想終了、という驚きの展開。

    回想中は、場面は飛びまくり、壮大なまだら模様の上、ひとつひとつの描写はとても細かく、比喩の巧みさは世評の通り。ストーリーは特にない、といって良いのだろうか。

    義妹曰く、2巻が一番ストーリー性はある、とのことなので、まず、次の巻までは読んでみようかな。

  • 私(語り手)の幼少期から物語が始まり、美しい風景描写、当時の貴族社会の人間模様、それらが語り手の世界のあちこちに漂っていてそれが順序関係なく語られていきます。

    形式に慣れるのに時間がかかりました(´∀`)文章一つ一つは長いものの訳文は読みやすいです。訳者さんが粉骨砕身されたことがうかがえます。

    内容を追っていくのではなく、内容に揺蕩うように読む、が正解なのかな。優雅な読書。

    1つの出来事が起こると語り手はそこからどんどん自分の中の想い出を語っていきますが、私たちが読書中に「ああ、こんなこと私にもあったな。」と想起することに似ている気がします。

    有名なマドレーヌのくだりはP116~P122です。一度やってみようと思います( *´艸`)

  • マドレーヌを浸した紅茶の一口から、忘れていた少年時代の日々が色鮮やかによみがえる。あまりに有名なこの作品の醍醐味は、書き手の脳裏に次々浮かび上がる記憶の断片、全体として「コンブレーで過ごした私の少年時代」とでも題して時系列に出来事を並べることも可能かもしれないある時期の記憶を、あえて断片のままよみがえるに任せ、その、時空や地理の縛りを超えてひらひらと漂う「記憶」のよみがえる様それ自体を言語化しているという、他の作品では味わったことのない体験にあると思う。
    旅先のホテルでふと目を覚ました時に感じる、自分の居場所が分からなくなる一瞬の戸惑い。寝室でひとり母の「おやすみのキス」を待つ、子供の頃の切ない寂しさ。コンブレーでの生活の大半を共に過ごした家族たち、時折現れる隣人たちのエピソード。春の輝きに満ちた散歩、山査子の生垣越しに出会った少女の記憶。高貴なるゲルマントの血筋へのあこがれ。
    それらは、「私」の体験であり、記憶であるけれど、読んでいる私にとっても「知っている」感覚であったり、「思い出せる」感情だったりして、プルーストの筆がいざなうこの「未知の過去を思い出す」感覚に、不思議な感動を呼び起こされる。過去のいつか、何かの折に感じたはずの感覚、胸をよぎったはずの感情が、この本によって言語化され、強い共感と共に沁み込んでくる。それは読書体験の中でも特別な、「あちら/物語世界」に没入するのでも、「こちら/現実世界」を解明するのでもない、「あちらとこちら」の境界が限りなく曖昧な、不思議な浮遊感と現実感を同時に伴う体験で、読書というものの一つの究極の愉悦を教えてくれる。
    長い物語全体の導入部とも言える、第一篇「スワン家の方へ」の冒頭、眠りをめぐる描写は、『失われた時を求めて』全体の中でも、個人的に特に好きな箇所。誰もが体験している眠りと目覚めという行為について、こんなにもくっきりと言葉で表現できる作家がいるとは!というのが、初めて『失われた時を求めて』を読み始めた時の、何よりの衝撃だった。戸惑い、寂しさ、あこがれ、凡人にはそんな言葉で丸めるしかない感覚、感情を、プルーストはどこまでも細分化して掘り下げ、言語化していく。『失われた時を求めて』を読むとき、そうしたプルーストの言語化能力、そのベースにある感受性と表現力、それらの豊かさ繊細さを堪能しながら、読者は自身の言語化されてこなかった感覚や感情を改めて味わうことができる。急いで読んではもったいない、時間をかけ、飴をなめるように言葉を味わいながら読み進めたい作品である。
    ちくま文庫の井上究三郎訳(全10巻)で9巻まで読み進めていたけれど、この度、光文社の高遠訳で再読開始。香り高い井上訳の重厚さも好きだが、高遠訳では繊細なプルーストの表現を丁寧になぞりつつ、文章全体の流れが明確にされていて、とても読みやすい。プルーストならではの一つ一つの表現の的確さだけでなく、「私」がたどる記憶の旅、大きな物語としての流れがきちんと頭に入ってくるので、読みながら「…それで、今どういう場面なんだっけ」と立地点を見失うことがなく、一冊を読み切るために要する体力もだいぶ少なくて済む。高遠訳はまだ完結していないが、既刊分をゆっくり読み進めていきたい。

  • 2017年の読書目標の一つ、「失われた時を求めて」を読み始める(全巻読み終わる、ではない…北方三国志と同じことを言うのだけど…)。
    挫折者多数の大物、おそるおそる開いたのだけど、訳者の前書きがもう面白い。
    今作が発表された当時の読者のつもりで読んで、というところでグッと来た。
    更に本文は、訳がとても良いのも大きいのだろう、思っていたよりずっとするする入って来る。
    比喩の奔放さと美しさのバランスが気持ちいい。
    次巻も楽しみだ。

    「ねえ、おまえたち、莫迦にするならしてもいいけれど、あの鐘塔は決まり事という点からしたら美しくはないかもしれない。でもね、あの風変わりな古い形がわたしは気に入ってるんだよ。もしあれがピアノを弾いたとしたら、情感に乏しい弾き方はしないのはたしかね」。

  • 高遠さんの訳と読書感のおかげで読めた
    田舎(コンブレー)の風景がコロコロと頭の中で描かれたような気がする(特に植物)
    お母さんのおやすみへの主人公の執着がいじらしくもあり恐くもあった

  • 読書の至福

  • 恋人というのは、信じているさなかでも疑ってしまうものであり、その心を我がものにすることなど決してできない。

    心理学の教科書には必ず、マドレーヌの香りで記憶がよみがえる箇所について言及される本書。一度は読んでみたく気軽に手に取ってしまったのだが、14巻まであるということで長い旅路になりそうだ。それにしても語りが長い。カラマーゾフもお喋りだと感じたが、こちらの方が勝ちかもしれない。そしていつの間にか違う話題になっている。普通なら結論のない話にイライラしてしまうところだが、そこは20世紀を代表する小説。いつの間にか引き込まれていってしまう。そして気づいたら同性愛の話になっていた!訳はすらすら読むことができる。解説も詳しいし、14巻まで頑張れそうな予感。

  • 『スワン家のほうへ』のまとめての感想を記す。集英社抄訳版読んだことがあるが、そのせいか難しい言葉も少なく、読みにくいとは感じなかった。訳者の言葉通りで、話の筋をたどるのが目的だとつまらなく感じるだろう。1日200ページのペースで読んだ。美術、音楽についての造詣が深く、小説とは思えなかったりする。伏線はもうどうでもいい。訳者が敢えて旧字体にこだわった漢字の選別基準が良くわからない。注といい、訳者のこだわりは相当なものである。なにはともあれ、4巻の刊行が待たれる。

  • この小説、何回目かのトライだが、やはり新訳でも1巻目の途中で挫折。

  • ペンディング。

  • 美しい描写とフランス的雰囲気を求める人には良いと思います。まさに、絵画の様な本です。
    ただ、僕の肌に合わないようなので2以降の続きは読みません。・゜・(ノД`)・゜・。

  • ジュンク堂池袋、¥1000.

  • 確かに読みやすい訳。

  • 物語は、ある日語り手が口にしたマドレーヌの味をきっかけに、幼少期に家族そろって夏の休暇を過ごしたコンブレーの町全体の記憶が鮮やかに蘇ってくる、という「無意志的記憶」の経験を契機に展開していき、その当時暮らした家が面していたY字路のスワン家の方とゲルマントの方という2つの道のたどり着くところに住んでいる2つの家族たちとの関わりの思い出の中から始まり、自らの生きてきた歴史を記憶の中で織り上げていく。

    前々から挑んでみたいなとは思っていて、アニメ「サイコパス」に関連することをきっかけに頑張りました。うーん、やっぱり難しい気がする。あらすじというあらすじがあんまりなくて、プルーストの紡ぐふわふわした言葉の美しさや麗しさを楽しむ作品なのかなあと、私なりに納得。正直、当時の編集者が、起きてからぼーっとする時間の描写だけに30ページも費やすとかどうかしてるぜっていう考えるのもよく分かる(苦笑)他の訳よりはだいぶすっきりしているようですが、それでも長くて流れるような文章は独特だなあと思います。全巻読み進められる自信はあんまりない・・・。紅茶にマドレーヌをひたすって、私には考えられないんだけど、おいしいのかな?今度試してみます。

  • p116印象深い紅茶の記述

    ようやく読み終わった…
    長いけど、流れるような文章に情景。
    花やお茶や絵など、様々な芸術も取り込まれて落ち着いた流れで音楽のようなテンポで進む文章かも。

  • 初のプルースト体験。色々な出版社から、色々な訳で出てるので、さてどの訳で読もうかなー、って思ったのですが、この光文社古典新訳文庫の訳が評判良さげやったので、この訳に決めて読んでみました。
    かなり読むのに苦労するって話しでしたが、意外とスラスラ読めました。物語らしい物語はないんだけど、情景の浮かぶ文章が美しかったです。
    まだまだ、先は長いのでぼちぼちゆっくり読みたいです。

  • どんな難解な本かと思っていたが、読んでみるとそうでもない。比喩が良い。

  • 称賛の半分は訳業に対して。このくらい気取った日本語の方がプルーストに合っているし、何より光るのは解釈の適切さ。読みながらはっきり映像が浮かんでくる。そういう体験は今までの訳ではありえなかった。名訳。

  • 教科書とか問題集みたいな実用本ならともかく、一般小説で「挑戦」もないとは、思いますが…

    いわゆる「読みやすい」作品ばかりがもてはやされて、小説は、効率よくあらすじを把握して消化するものという感が強い昨今、こういう作品に「挑戦」してみるのもいいかと。

    訳者が、あらすじを追おうとするな、と繰り返し説くのも、肯けるところ。

  • ストーリーらしいストーリーが何もないところがまたいい感じ。再読したらまた発見がありそう。

  • ロッシーニの、
    『チェロとコントラバスのための二重奏曲』
    が聞こえてくるんちゃうかと思いました。

  •  「ときどき、せっかちな時鐘が前の鐘より二つ多く鳴ることがある。間の鐘をひとつ聞き逃したのか。現実にあった何かが私のなかで起こらなかった。深い眠りにも似た、魔術的な読書に対する関心が、幻覚にとらわれたかのような私の耳をはぐらかし、静寂に満ちた紺碧の空に刻まれた黄金の鐘の印を消し去ったのだ。」(213頁)
     「眠っている人間は身のまわりに糸にも似た時の流れを、そして、長い歳月やさまざまな世界が持つ一定の秩序を輪のように巻きつけている。目覚めたとき、人は本能的にそれらを探って、自分が現在いる地点や目覚めまでに流れた時間を即座に読みとろうとする。だが、時の流れやそうした秩序はもつれて渾沌としているかもしれないし、切れたり壊れたりしている可能性もある。」(28頁)
     (私にとって)プルーストを読むことは、後者の引用が示唆するように、突如過去と現在が解れたり、結びついたりする時の糸を手繰り寄せながら、自らの経験と擦り合わせては愉しむ贅沢な時間であり、前者の引用が語るように、現実を束の間ながらも消失させてくれる至高の体験である。本書の明晰このうえない高遠弘美氏の訳文に出会って私は、その想いを強くしている。続編が楽しみでならない。

  • 途中まで読みすすめたところで、これは続きが気になるし、集英社版で読んじゃうかもな…と思っていたのだけれども、あとがき解説に目鱗だったので、おとなしく刊行を待ちたくなった。といいつつ、とりあえず集英社版で読みすすめてみて(2巻までは手持ちで読了してる)これはこれで刊行を気長に待つのもいいかもなー。
    フランス語が読める人には、邦訳よりも原文を読んだ方が読みやすいと言われる作品。日本語訳にすると難解度が増すんだろうところを、内容がスムーズに頭に入ってきやすい訳になっていると思います。全訳完結するまで応援。

  • この豊饒な表現力を持った文章を存分に感じとるにはまだまだ力不足でした;;それでも空気の匂いが感じられるのが凄い。圧倒されました。

  • 訳者の考えも、訳も気に入りました。中には写真とその説明もあり、楽しい。注で読むときに 本来必要でないものをそぎおとし、初めて同時代人が読むように 読んでほしいとは、利に敵っている。一般読者は研究者ではないのだから。注が、そのページにあるのも私は好きだ。 新訳 の意味がよくわかる久しぶりの本だった。

  • 二度目の挑戦。他社の文庫で、一揃え持っていますが、それは最初で挫折しました。訳文が良いのかな。すんなり話が入ってきます。いわゆるまったりした感じで、話が進んでいきます。本編の語り手の私の子供時代の出来事がつづられて行きます。登場人物も少ないのですが、伯父の家でであったさる女性との出会いが、女性を意識した少年の姿がリアルに描かれている。失われた時を求めてを、こんなに楽しく読めるとは思っていませんでした。続巻の発売が楽しみです。

  • 光文社古典文庫の翻訳はどれも意欲的。すごいと思う。この本もそうだ。プルーストは何度も挑戦して1ページも読めなかったが、これなら読める。パリに居たときおじいさんやおばあさんが日向の公園のベンチでプルーストを読んでいる光景によく出くわした。長い話だけれど面白いからみんな読んでいるんだよね。日本のプルーストの翻訳はそれには似つかわしくなかったのだと本書は教えてくれる。

  • 集英社で出版された鈴木道彦氏の訳で以前読み、第四編で挫折した者です。ということで、以下集英社との比較。フランス語や作者について詳しい知識は無いので、あくまで見た目。

    ・1ページにぎっちり文字が詰まって無いので、開いて「ウッ」と感じることは無い。
    ・原作で長い文は括弧やダッシュで読みやすくされており、長文も怖くない。
    ・註の数が集英社訳に比べて6割弱と少ない。巻末にまとめてある集英社のスタイルと異なりそのページ毎にページ左側に載っているので、
     テンポよく読んでいける。図による解説も嬉しい。(但し、一文一文をがっつり理解する上で註が減るのは人によっては不満かも。)
    ・「刺戟」「亢奮」等、古い漢字が僅かに使われているけれど、読む上で支障は無い(と思う)。
    ・前口上や読書ガイドで、「こうやって読んでね!」と訳者が私たちに語りかけてくる。読書ガイドも他の小説の解説に比べてやや激しい。
     (好みが分かれると思うので、これは実際に見てほしい。)

     私を含め、この小説を途中で挫折した人は決して少なくないのでは、と思う。そんな人にとって、格段に読みやすくなったこの光文社訳は、良くも悪くも通読する上で最適ではないだろうか。今秋、岩波文庫でも新訳が出るそうだ。学術的な面で絶大な信頼を誇る(らしい)岩波での訳は、光文社訳とはまた違った方向の名訳になると想像できる。どちらが自分のスタイルに合うか、比べてから読み始めても遅くは無いだろう。間違えてamazonでキッズレビューにしちゃった。

  • 光文社の新訳、やはり読みやすいです。

    しかし、やっぱり冒頭部分は長い!!
    語り手が寝付くまでに、私は何度眠りについたか・・・(笑

  • 何度目かのプルースト。冒頭、夢と現実の境を彷徨いつつ子ども時代の記憶を思い出すシーンを読むといつも忘れていた大切な思い出が浮かび上がってくる気がします。

    この第1巻、一度最後まで読んでから再読するとよく分かるのですが、一見散漫でとりとめのないエピソードの羅列に思えるものが物語全体では重要な伏線になっています。名前すら出てこないふと見かけただけの人物が後に準主役になったり、会話の中で名前が出てきただけの祖母の友人が主人公を上流階級に導くきっかけを作ったり。
    ただ、ヒロインであるアルベルチーヌの名前だけは一度も出てきません。というのもアルベルチーヌは当初の構想にはなかった人物だから。この辺りの緻密な構成と構想にないエピソードが大きく膨れ上がるダイナミズムが不思議に同居しているのもプルーストの魅力のひとつでもあります。

    さて、高遠氏の訳ですが、平易で読みやすく(あくまでプルーストにしてはの話!)、不要な解説や訳注を最小限にとどめているのも好印象です。ところどころ写真が掲載されているのも読書の助けになります。初めてのプルーストにおすすめできる翻訳だと思います。

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