ガリレオの小部屋 (光文社文庫 か 43-5)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334765453

作品紹介・あらすじ

不眠症のサラリーマンを悩ませるマンションの住人。異常なのは彼らか自分か?(「冬の雨にまぎれて」)。アメリカ旅行の途上、「私」が出会った日本人夫婦には秘密があった(表題作)。悪徳警官の汚名を着せられた元刑事が息子とのキャンプ中、追い続けていた犯人を見つけ…(「海鳴りの秋」)。人生の歯車がずれていく人間たちの閉塞感を、短編の名手が七つの物語で紡ぐ傑作集。

感想・レビュー・書評

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  • 2018/3/4 Amazon より届く。

  • 文章を書くことを生業にした人を描いた作品の短編集かと思っていましたが、途中でそうではない作品も入ってきて、そもそもテーマがよく分かりませんでした。
    メーカー勤務のサラリーマンである自分からするのやや青臭く浮ついた印象を受け、あまり共感てきなかったな、
    香納氏ってこんな作風じゃなかったような…

  • 「ガリレオの小部屋」
    閉塞感、怖い。


    香納諒一は「30代の終わりから40代の頭にかけておよそ3年ほどに亘り、自分の目指す小説世界と現在書いているもののギャップに苦しみ、仕事を生活が出来るぎりぎりまで絞り込んで、一から小説修行をやり直した」と本書初出のあとがきに記している。


    半年くらいで何かが見つけられるだろうと始めたことだが、なかなか納得が出来ず、その間短篇について発表することを封印し、とにかく多くの短篇を読むことと習作に明け暮れたという。


    これを読むに、香納諒一とは昔の文豪みたいな空気を持っている。自分の理想とする小説を身を削るように作りだそうとする姿は、なかなか今の小説界では珍しいような気がする。例えば、伊坂幸太郎のようなタイプとは真逆のイメージだ。彼は身を削るよりは身にたっぷり楽しさを染み込ませて、そこから書きたい小説のイメージを膨らませている、そんなイメージを私は持っている。


    初出に記すのだから、本書は探していた何かを見つけた結果の作品となる。となると、その結果とは“ずるずると何かがずれていく人間の悲しさ”なのだろうか。


    「雪の降る町」では、小説家を目指していた恵美は、選考委員のヒヒ親爺に抱かれれば受賞させると言われて抱かれるが、結果は落選。何か大切なものを無くしたのに、それがなんだかわからなくなってしまったのではないかと思う恵美。


    何かがずれてしまう、そのタイミングがじりじりと迫ってくることがリアルに感じられる。が、しかし、少しなんか憂鬱になる。


    「海鳴りの秋」は、父と息子の間にあるずれが埋まっていく物語だ。不良少年が父とキャンプにいく最中に巻き込まれる冒険によって少し成長する話はありがちかも知れないが、人生の歯車がずれていく短篇が多い中ではちょっと異質だ。


    しかし、人間の閉塞感を描き出した短篇とはやはり疲れてしまうのも、また事実。

  • 「心に雹の降りしきる」がなかなかに気に入ったので、
    読んでみた、香納諒一氏作品2点目。

    うーん、可も無く不可も無く、だなぁ。

    他のも読んでみようって感じだ。

    (ところでタイトルに「ガリレオ」ってくると
    やはり東野圭吾を浮かべてしまうし、
    「雪の降る町」は、一瞬、藤原伊織氏の名著
    『雪が降る』を思い出してしまって、
    読んでいてももうまったく『雪が降る』を想ってしまって、いけなかった。本編とは関係ないが)

  • 昔のことを思い出そうとすると、なかなか、思い出せないものだけれど、現在の自分が取る行動は必ず過去の自分の体験に関係しているわけです。
    だから、ある時、ふと、今の行動に引きずられる形で昔の自分に会えることがある、そんな短編集でした。


    本短編集では、特に、「雪の降る町」という作品が好きだなぁー。先日観た「しあわせのパン」の1番目のエピソードに出てきた女性と重なりながら読んでいました。

    あと、表題の「ガリレオの小部屋」ででてくる町は、筆者の子供のころに住んでいて町で、つまりは、私の経験とも重なるわけです(筆者とは、小学校と高校の同級生なので)。
    横浜バイパス脇の沢ガニが獲れる岩場とかなつかしいなぁ。小学校4年生の時に友達に連れられてバケツ一杯とったことを思い出しました。

    そんな、個人的にもノスタルジックな思いにひたれた一冊でした。

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著者プロフィール

1963年、横浜市出身。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。91年「ハミングで二番まで」で第13回小説推理新人賞を受賞。翌年『時よ夜の海に瞑れ』(祥伝社)で長篇デビュー。99年『幻の女』(角川書店)で第52回日本推理作家協会賞を受賞。主にハードボイルド、ミステリー、警察小説のジャンルで旺盛な執筆活動をおこない、その実力を高く評価される。

「2023年 『孤独なき地 K・S・P 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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