正しい愛と理想の息子

著者 :
  • 光文社
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912505

感想・レビュー・書評

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  • 日頃本を読む環境にある人の周りにはいないかもしれない、そして想像しづらいかもしれないけれど、きっとどこかで起きているかもしれない出来事。

    育った環境はハセより沖の方が恵まれていると思いがちなので、沖がハセに対して言った言葉、
    「認めてほしいって思うことのなにが悪いんだよ。自分はここにいていいんだって思いたい、それのなにがいけないの?今まで生きてきて一度もそんなふうに思えなかった、ここにいてもいいの?生きててもいいの?いっつもそう思ってた。ハセはお父さんから否定されたことなんて一度もないんだろ。認めてもらいたいと一度も思わずに生きてこられたのは、ハセが強いからじゃない。しっかりしてるからでもない。今までちゃんと自分の存在を認められてきたからだ。(中略)子どもの頃に子どもであることを許してもらえなかったんだよ。そんな人間がちゃんと大人になんかなれるわけない。そのことにちゃんと向き合うことにした。」
    にハッとしました。

  • 『お年寄り』なんていう生きものはいない。それぞれ違う心をもって、それぞれに違う長い年月を生きてきた人たちがそこにいるだけだ。


    いくつになっても名前で呼ばれたい。
    という気持ちよく分かる。

  • 「愛」って自己犠牲だったり人のためだったり、とにかく優しくて素晴らしいものというイメージだと思うけど、「じゃあ正しい愛って何?」と問われたら考えてしまう。
    「よかれと思って」「~~してあげたのに」という言葉、私も言われたことあるし、だからこそ言わないようにしてきたけど・・・

    ただハセは父親からちゃんと愛されてる気がした。だから根っからの詐欺師にはなれきれなかったし、そんなハセだから典子さんやトクコさんは関わってくれてたのでは?
    ハセの再出発が明るいものになりそうないいエンディングだった。

  • 詐欺のシーンから始まるという、著者の作品には珍しい感じ。騙したつもりの相手に逆に騙されてしまうという、間抜けな詐欺コンビ。やってることは最低なんだけど、不思議と憎めない二人。
    薬局のおばちゃんや同級生の民恵、近所のお年寄りも、なんだか妙に気になる存在が多い。
    いくつかの出来事を経て変わっていく長谷と沖。人を騙さずに生きていく術を見つけられるといいな。

  • 本物の悪になれない人情味あるハセと、なんだかほっとけないイケメンだが仕事ができない沖が、灰嶋(半グレ?)から借金200万を返済する為、偽宝石の販売や老人をターゲットした詐欺を計画する。
     沖の母親に偽ダイヤモンドのブローチをプレゼントする。偽宝石だかとても綺麗に輝いている。
     それが、すべての愛は正しいわけではなく、正しい愛など存在しない事もあるかの様に。
     性根まで腐ってなかった二人だから出来る、とっておきの話しは生涯の生業として成功して欲しい。

  • 「正しい愛」とは?そんな事を考えさせられる。
    モッツァレラゆたかに再会。

  • 善悪というものは学習して分かる部分があると思うので、人柄は良くても人をだましたり奪ったりする事には罪悪感を抱かない。そういう人いますよね。
    優しく接してくれる人を騙す事で、次第に罪悪感に目覚めていく。30歳過ぎて初めて大人になっていく、恵まれない青年の成長物語。

  • 「忘れるな。『お年寄り』なんていう生きものはいない。それぞれ違う心をもって、それぞれ違う長い年月を生きてきた人たちがそこにいるだけだ」

    自分の人生への納得のいかなさを、何かのせいに責任転嫁して生きること。他人との関わり合いの中で、そこから脱出することができると教えてくれた本でした。

    お年寄り、同級生、ふとしたところで会話しただけの赤の他人、それぞれがそれぞれの人生を生きていて、偶然にも人生が交差して影響し合う…そんな物語です。

    親の期待に押し潰されてしまう子どもは少なくはないでしょうが、立ち直るかどうかは周りは直接的には助けてあげられない。その子次第だと考えています。

  • 実在しそう、でも非現実的なお話でした。
    たとえお金が無くても不器用ながら強く生き抜く2人の姿がとても印象的。読書前と後で表紙の顔の表情が何だか変わっているように思いました。
    家族を大切に。

  • 困った息子達。
    でも、大人になってもみんなどこかで認めてもらいたいっていう気持ちを持っているんだな。
    読み終えると、表紙の二人の顔がよりしっくりくる。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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