正しい愛と理想の息子

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912505

感想・レビュー・書評

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  • 良かった。読み終わりじわーんと余韻にしばらく浸っていた。初めて読む寺地さん作品。大きくは、老いること、家族のこと、愛のことが書かれている作品だ。

    32歳の陰気な男ハセと30歳だけど可愛い沖。ふたりはお年寄りからお金を取ろうとする崖っぷち悪党コンビ。違法カジノの元締めから200万稼ぐよう言われたふたりは、沖の母親をだましてお金を奪おうとする…沖は"復讐"だと称して。

    最後の方で、ハセが沖の母親に言ったことばに胸打たれる。認知症の彼女には別の人の言葉に聞こえたらしく、会話がチグハグになってしまうのだけど…
    人からあまり好かれるタイプでなく、疎まれてきたハセが他人のことをそんなふうに思えるようになるなんて!と感動しました。

    愛・息子について、正しい・理想の・なんてひとつもない。そして"世の中にはお年寄りなんていない、それぞれが歳を重ねた人がいる"というようなことが書かれていてハッとさせられた。

    表紙のハセの服の柄が作中に出てくるポメラニアン!柄なのと、帯の後ろの折り返しにもポメがいて、和ませてくれます。

  • 借金、詐欺、暴力...
    別世界の話のようだけど、気持ちは理解出来たり。
    そういう人もみんなと同じ気持ちを持っていたり。
    ハセも沖も本当は心優しいから、悪い人にはなれないんだな。気付いた時にやり直しても遅くないと、いびつな愛でもいいんだなと思った。

  • なんか、いい。
    なんか、知らんけど、いい。
    ジワる、っていうのかな?

    時折混ざる、パンチの効いた文章がいい。

    この作家さん、やっぱり好きだ。

  • 主人公は32歳 長谷 眞。2歳年下の友人と偽宝石売りをしている。主人公の父は58歳 老婦人にたかって暮らしいます… 彼らは怪しいかもしれませんが 決して悪いヤツではありません。登場人物の肩書きに驚きますが 物語を支えている親と子のテーマは深く温かで 自分の子ども時代そして子育てはどうだったろう?そんなことを考えさせてくれる良作でした。

  • 寺地はるなさんの本は10冊位読んでるけど これが今迄で1番良かった。
    装丁のインパクト大!。
    人はみんな 誰かに 自分の存在を認めて欲しいんだね。
    ハセ父の言葉
    「お年寄り」なんて言う生き物はいない。

    ドラマ化されないかな。

  • ハセ32歳、陰気な男。相棒の沖、30歳だけど可愛い。二人は違法カジノで働くが失敗ばかり、今度は偽宝石売りでも女に騙され無一文に。切羽詰まったハセは閃いた。これからは年寄りだ。さびしさは、利用できると。注目の作家が紡ぐ、泣けるバディ小説。

    老人たちのさびしさを利用して、詐欺をしようとするハセが、老人たちの優しさに触れて、自分のさびしさが露わになっていく。そもそも詐欺をする理由が、友人の沖くんのためなんだから、本当は良い子なんだよね。「無愛想な子」と昔から言われてきて、自分のことを貶めるようにしか見れないハセが、だんだん父親にも心を開いていくようになるシーンが泣ける。

  • その筋の危ない人から目をつけられ借金を抱えているせいで詐欺コンビを組んでいるハセと沖という男二人の話。
    なんだけど、そっちの道に行くには詰めが甘かったり情に流されすぎたりで全然向いてねえ~!ほんとに全然向いてない。寺地はるな、基本性善説の世界。
    女を騙すのに失敗して痛い目に遭って、今度は老人だ!とターゲットを切り替えたところでハセと沖の風向きが変わることに。

    沖と道を違えたときの絶望感、ほんっとに半端ないな……人生の土台の違いを思い知らされて突きつけられる感じがすごい。
    ハセは沖から受ける承認で生きてくることができたのに、沖にとってハセからの承認は無意味だったってところマジでキツイ。
    個人的に、私は割とハセの家庭環境に近いので「なんで他の同級生は当たり前のように与えられているスタートラインに辿り着くまでに自分だけが努力を要求されるのか、スタートラインに立つための果てしない努力を重ねなければ世間から甘えてると責められるのか、どうすりゃよかったんだ」っていう慟哭は本当につらかった。

    それにしても「とっておきの話があるんだ」で始まった話が「とっておきの話があるんだ」で〆られるの本当に小説として綺麗すぎる。
    最初のとっておきの話は詐欺への準備運動だったけど、ラストのとっておきの話はハセがお日様の下で生きていくための本当にとっておきのスペシャル、一緒に悪いニュースを挙げずに済む「良いニュース」で事態の好転ぶりがすごい。
    は~めっちゃ良い話だった……

  • ちょっと今回は私には響かなかったかな?

    都合よすぎ。

    ていうか期待しすぎたのかなぁ。

  • 否定しないこと=肯定ではない

    すべての愛は正しくない

  • 騙して騙されて、盗まれて、殴られて、どうなってしまうのか?と思いつつ読んだが、とても温かい話だった。
    どんな親も息子を大切に思っているのだと思う。
    典子さんはハセのことが好きなんだろうな。
    表紙のインパクトがすごい。
    丹地陽子さんの絵。
    ハセで、後ろが沖くんかな。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

寺地はるなの作品

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