- Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334914684
感想・レビュー・書評
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方丈記と平家物語に着想した、アレンジ小説です。特に方丈記では、朱川さんらしく、無常で儚げな市井の人々が語られています。
方丈記は、随筆ですが、疫病や火災等の災禍の歴史的史実が多く記録されていますので、それらの引用が多く創作とはいえ、平安の世を垣間見るようでした。平家物語(挫折中)と方丈記、同時期ですが視点の違う二作からの小説もあり、暖めていた構想なのかなと思いました。
揚羽蝶は、平家の家紋ですが、本当に何故だか、お墓によくいるんですよね。それもたくさんいるのではなくて、一頭で飛んでるんですよね。不思議。
芥川や森鴎外など古典からの作品は好きなものが多いので、朱川さんの次作も期待します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うたかた。
読み終わった読後感としてはそこまで儚さばかり残っているわけでないが、
平安末期の町の様子、世の中の大きな出来事・時代の変化を描く。
8編あり、大火事、竜巻、飢饉、福原遷都が鴨長明の視点で、
平家が衰え、滅んでいく様を、平清盛の子、重盛と知盛の視点から触れられている。
編の後半はいくぶん読みやすくなったが、前半は、知らない史実や語句の検索で、勉強しているようだった。
「無無明亦無無明尽」(むむみょうやくむむみょうじん)
この言葉で前半、半数以上の編が締め括られていて、どのサイトを見ても浅学な僕にはピンと来ないのだが、「人生を励まそう」という言葉なんだと僕には受け取られた。
標題の「揚羽」(あげは)は平氏の家紋とのこと。
ともかく、本作は、今年の6月21日に刊行された朱川さんの最新作。
1ファンとして、じっくり読むことができたのは良かった。 -
<典>
ズバリ歯に衣着せずに言う。全然面白くない本である。というか,中身が頭に入って来ない。なんだか遥か昔に苦手とした古典とか歴史で教わった人物が出てきている様子ではあるが場面により変名を使って書くものだから根が理系頭の僕にはサッパリ理解が及ばない。一体どういうりょうけんだ!
どうやら源氏と平家,そして鴨長明がらみの話であることは何となく分かるが,次から次へと変名で名乗られていて,とにかく自分の知っている歴史的事柄とちっともどこも繋がっていかないので今一つ共感できず面白くない。この様な言わば平安末期オタク的な話をすべからく理解出来て 面白いと思える人が庶民の中に果たして居るのであろうか。
入道相国,誰じゃそれは! と,この種の作品では今作の様に,歴史的にそこそこ有名な人物を一様に字(あざな)の如き変名で呼ぶのが慣わし,もしくは カッコよい事柄 という事になっているのだろうか。それならそう云う カッコつけ は同人共の中だけで遣って頂きたい。我々素人読者は混乱するばかりであろうがっ!
ともかくも,あの面白い作品を沢山書いていた枯れても直木賞の作家 朱川湊人は一体どこへ行ったんや。僕は何度もあちらこちらで同様の事を書いているが,一般読者が面白く読めるような作品を書くつもりが既にサラサラ無いなら もう大衆作家業は辞めなはれ。でないと,僕の様なピュアな読書家は,あ,もしかしたら面白いかもしれない,などと今回の様な無駄な時間と手間を掛けてしまうではないか。もう一度言いまっせ。「あんたはん,ずっとこんなんやったらもう作家やめなはれ!」
・・・と思ったのは件の鴨長明(この鴨長明と言う人は俗にいう「世捨て人」だったらしいなぁ。僕はずっとHermitという同意の英語を理系的事情から記憶に留めていて,いつか僕もHermitになりたいなぁと常々思っていたのであったなぁ)を主役においていた前半のみで,後半平家衆が主人公になった辺りから俄然面白くなった。多分,連載途中で「このままでは作家生命が絶たれてしまう」と思った朱川が起死回生の巻き返しを計ったものだと思しい。それはまんまと成功している。これで首の皮一枚繋がったのぅ朱川くん。あっぱれ。
本書を読んで為になる事柄があった。それは平安京末期の「福原京」のこと。一体場所はどこだったのかと調べたら,なんと神戸だった。そういや神戸には福原という僕などは割と好きな歓楽街が有るなぁ と思ったりもしたが,福原京はそこではなくもっとづっと山手の方だった。今の三ノ宮と元町の中間くらいの山手って感じ。 ともかくまあ良い読書であった。また朱川の作品が出れば読もう。あ,前半の高言すまなかった。 -
大河ドラマでやっている「鎌倉殿の13人」は見たことないが、時代背景は似ているんじゃないかな?
この作品は「方丈記」と「平家物語」のアレンジ。時は平安、平氏が栄華を極めている頃から始まり源氏が取って代わる頃まで、当時の都の生活を鴨長明こと無明の視点から描いている。疫病、戦、地震など。猫丸と雨里の話がぐっとくる。朱川さんの物語はいつもなんだか切なく儚い。虚無と無常。浮き沈みする泡沫の世。
その時代に生きる人たちの生活と今の生活を比べてしまう。比べることに意味はないのかもしれないが。どうしても源氏が正義みたいな印象も拭えない。加々麻呂の物言いが自分と似ていた。鴨長明の選んだ道、今の世では逃げに当たる気もする。でも羨ましい。 -
平安鎌倉の世を襲う、疫病、地震、そして戦争。
壊れゆく都で、若き日の鴨長明が見た、虚無と無常。
直木賞作家が『方丈記』『平家物語』を奔放にアレンジ!
廂(ひさし)の下、猫と身を寄せ合い暮らす青年、
自らを“喰い残し"と名乗る顔の抉(えぐ)れた女、
影のない美しき三姉妹の尼――
源平合戦の片隅で、長明の胸に小さな火を灯し、消えていった忘れがたき人々。
八百年の時を超え、今、私たちの心を震わせる、儚く切ない物語集。 -
鴨長明が主人公の物語。学生時代は歴史が苦手だったが、こうして読書をすることでスルスルと頭に新しい知識が刻まれていく、、、本のチカラはスゴイ。
登場人物がみな魅力的、ドラマになってもおもしろそうな小説だった。朱川湊人さんの作風と鴨長明の飄々とした風情がよく合っている。 -
朱川湊人 さんの「知らぬ火文庫」シリーズ
最新刊というだけで 手に取ってしまう
相変わらず
あっという間に
幽玄の世界に連れて行ってもらえます
何年も前に
夢中になって 読み進めていた
吉川英治さんの「新 平家物語」の
部分部分が 浮かんでは消えていきました
ずいぶん前に 読んでいるうちに
途中で 放り出してしまった
「方丈記」
もう一度 手にとってみよう!
と 思ってしまいました -
「方丈記」と「平家物語」をアレンジした幻想譚。平安鎌倉時代、都を次々と襲う災禍。戦、疫病、天災の数々にあえなく命を奪われる多くの人々と、その中でも必死に生き抜こうとする人々。栄華を誇った平家の隆盛と滅亡。移り変わる時代を見つめ続ける鴨長明を主人公にして描かれた、虚無的だけれど穏やかさも感じさせられる連作短編集です。
いつの世にもこのような災禍は絶えたことがないのでは、というのがまず思ったことでした。時代は違えど、現代とあまり変わらないような気がします。災禍によって人心が荒れる、というのもしかり。諸行無常というけれど、その変化もただ繰り返すものなのでしょうか。そう思うと何もかもが虚しくなってしまいます。
どれもがまったく幸せではない物語なのですが。だからといって嫌な気分になるばかりではないのが不思議。人の命は儚いけれど、それでもそのあとに残るものがあって語り継がれるということには心強さを感じさせられました。「遊びをせんとや生まれけむ」くらいの心地で生きてみるのも、あるいはいいのかもしれません。 -
母が亡くなった後最初に回ってきた予約本、平家物語著者説のある鴨長明主人公の平家物語。
母方は相模源氏、父方は四国から岡山に落ち延びた平家が祖先。両親が関西で出会い、ようやく和平を実現し、できた子供が自分たちと思うと感慨深い。
母のいない世界はこの方丈記の世界のように泡のように感じる。
すべてが夢であればいいな。