九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)

  • 国書刊行会
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336041562

感想・レビュー・書評

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  • 2020/4/23購入
    2020/5/4読了

  • 創元もハヤカワも今に至るまで文庫化もしていない。初めてお目にかかるHM卿もので、あまり期待していなかったが、どうしてどうして!なぜこの作品が文庫化されていないのか、わからない。いくつかのドタバタ劇のカー=カーター・ディクスンものよりもずっとまとまっている。
    犯行のトリックもこの当時のものなら説得力あり。犯人の背景と動機がちょっと弱いが『魔女の隠れ家』『笑う後家』なんかに比べれば十分読者は納得する。
    本当になぜこの作品があまり目立っていないのか、版権独占というのでもなさそうだし、わからない。

  • ヘンリー・メリヴェール卿。
    船上が舞台のミステリは、森博嗣『恋恋蓮歩の演習』くらいしか思い出せない。本格ミステリとしては初めて読んだかも。
    必然的に容疑者の人数が決定されるため、ミステリ向きの設定なのかも。
    解説にも書かれているように、トリックの魅せ方・使い方が上手い作品。
    メリヴェール卿の行動や台詞がお茶目。好きな探偵の一人になりました。

  •  ここへきてカーの未読作品を読めるなんて。それだけで花まる級のすばらしいことだ。戦時下のアメリカからイギリスへ渡る輸送船。乗り合わせたたった9人の乗客の中で起こる連続殺人事件。いかにもうさんくさそうな乗客たちではあるが、閉じられた空間で容疑者は限られる。そこで重大な手がかりとなるはずの指紋が誰にも一致しない不思議。しかしそんなトリックが見破られないものかな。真相は確かに意外ではあるけれど、あまりにも綱渡りで破綻しそう。だけど、ついつい読みふけってしまう筋運びのうまさはさすが。

  • H・M卿ものの船上ミステリー。
    今回も練り上げられた謎に舌を巻く思い。
    カーを読み始めて納得。カーキチという称号の存在。

  • なにげに初カー。
    なんというか…普通。

    閉鎖空間、それも撃沈の恐怖に怯える第二次大戦中の大西洋上の軍需船内での殺人。犯人はわずか九人の乗客のうちの誰か。
    などと緊張感満点の設定なのに、いかんせん殺人が「他人事」。次は自分かも…? という、クローズド・サークル最大の醍醐味がない。
    よって本作は、舞台が閉鎖空間というだけの普通のミステリである。

    現代のくどいキャラ萌えを読みつけているせいかもしれないが、キャラが掘り下げられるでなし。
    絶好の舞台立てにもかかわらず、サスペンスを煽りまくるでなし。
    淡々とロジックを見せていく感じ。
    著者はほぼ同じシチュエーションでの船旅の経験があるそうで、そのあたりの描写はさすがに緻密だが、悲しいかな原著刊行からすでに70年以上が経過。21世紀の日本に生きるド庶民には古き良きヨーロッパのブルジョア生活の基礎知識がなさすぎて、リアルに描かれるほどに、かえって遠い絵空事のように感じられてしまった。

    なんだか貶すみたいになってしまったが、普通のミステリとして、普通に楽しめる佳品である。
    あとは船内の見取り図が欲しかった。

    2013/9/2〜9/6読了

  • 従来概念が通用しない作品。
    疑わしい人物が1名いて
    その人がどーみても怪しく感じますが
    疑ってはいけません。
    というかそんなやすやすと犯人は
    でてきませんので。

    しかしトリックは大胆不敵。
    きちんとヒントは出てはいますが
    見逃してしまう人が大半でしょう。
    意外性は、というと傾向がわかるから
    そんなんでもないですね。

    しかしメリヴェール卿を狙う
    犯人は勇気ありますね。
    一度はガツンとやったものの…
    及ばずでしたね。

  • <pre><b>第二次大戦中、ドイツ潜水艦の襲撃に脅えながらイ
    ギリスへ向かう商船エドワーディック号の一室で、
    喉を切られた女の死体が発見された。現場には血染
    めの指紋が残されていたが、調査の結果、船内の誰
    のものでもないことが判明する…。怪事件に挑むH
    ・Mの活躍。</b>
    (「BOOK」データベース より)

    資料番号:010472538
    請求記号:933.7/セ/26
    形態:図書</pre>

  • H・M卿シリーズ

    第二次大戦中アメリカからイギリスに向かう輸送船内での殺人事件。被害者はジベア・ベイ夫人。社交界の注目を集める夫人の死。夫人と親しくしていたマックス・マシューズ。彼の部屋に潜んでいたヴァレリーの頼み。ジア・ベイ夫人の持つ手紙の秘密。凶器のナイフに残された指紋は乗客9人の誰とも一致しない。10人目の人物の秘密。フランス人大尉バワン殺害事件。夜の甲板で後ろから撃たれ海に転落したバワン。ヴァレリーの嘘と
    巻き込まれたケンワージー。指紋の控えを盗み出そうとした犯人。親からの仕送りに頼るケンワージー。床屋に勧められた毛生え薬からヒントを得たH・M卿の推理。

    船橋図書館
     
     2011年3月7日再読

  • H・M卿のファルス色は、舞台が戦時下ということもあるのか抑え気味だったが相変わらずの筆力と事件の不思議さで一気に読み進められた。
    トリックに関して言えば、初期のすさまじいトリックメーカー振りというよりは、解説にもあったけどいくつかのトリックを組み合わせ、またそれを上手く見せることによりかなり見事な仕掛けになっていると思った。まあそのいくつかは現代の、特に日本人には9割がた分からない(説明聞いてもピンと来ない)ものではあったけど、別にそれは瑕疵にはならないでしょう。発表当時はリアルだったんだろうし。
    解決の場面でのH・M卿の話はいちいち感嘆させられた。もやもやが次々に解決され、盲点を突かれ、膝を打って、の連続だった。ラストもカーおなじみのハッピーエンドで「めでたしめでたし」と思いつつ読み終わることができて一安心。

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著者プロフィール

Carter Dickson (1906-1977)
本名ジョン・ディクスン・カー。エラリー・クイーン、アガサ・クリスティーらとともにパズラー黄金時代を代表する作家のひとり。アメリカ合衆国のペンシルベニア州に生まれる。1930年、カー名義の『夜歩く』で彗星のようにデビュー。怪事件の連続と複雑な話を読ませる筆力で地歩を築く。1932年にイギリスに渡り、第二次世界大戦の勃発で一時帰国するも、再び渡英、その後空襲で家を失い、1947年にアメリカに帰国した。カー、ディクスンの二つの名義を使って、アンリ・バンコラン、ギデオン・フェル博士、ヘンリー・メリヴェール卿(H・M卿)らの名探偵を主人公に、密室、人間消失、足跡のない殺人など、不可能興味満点の本格ミステリを次々に発表、「不可能犯罪の巨匠」「密室のカー」と言われた。晩年には歴史ミステリの執筆も手掛け、このジャンルの先駆者ともされる。代表作に、「密室講義」でも知られる『三つの棺』(35)、『火刑法廷』(37)、『ユダの窓』(38)、『ビロードの悪魔』(51)などがある。

「2023年 『五つの箱の死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カーター・ディクスンの作品

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