高安犬物語 (戸川幸夫動物物語 1)

著者 :
  • 国土社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784337122314

作品紹介・あらすじ

動物というものは、かわいいものです。もし、この世の中から、動物たちがいなくなったら、わたしたちの人生は、どんなにあじけないものになってしまうでしょう。動物たちは、人生をうるおす、きれいな流れであり、いこいの木陰をつくってくれるしげみであり、ほほえみをあたえてくれる花園であります。そういう動物たちを主題とした小説が動物文学です。みなさん、動物の物語をたくさん読んで、もっと、もっと、よく動物を知ろうではありませんか。

感想・レビュー・書評

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  • 子供の頃、これとは違う全集を読んでいた記憶があるが、久々に読み返したくなって探していたらこれが出てきた。
    昔読んでいたやつは表紙が写真でなくて絵だったはずだが、あの表紙ではもう買えないのかな。

    「高安犬物語」と「火の帯」の2編を収録。

    「高安犬物語」は作者の体験を元に書かれたもの。
    山形に生息する、最後の純粋な高安犬・チン。
    無理をいって猟師の吉から譲り受けたものの、チンは高齢で病魔に侵されてしまう。
    吉に会いたくて何度も脱走してしまうチン。
    最後には心を開いてくれるものの、チンの子供も、立派な姿を剥製にして残すこともできなかった。
    結局、戸川氏のやったことは何だったのか…、と悲しくなる。

    「火の帯」は捕鯨船の船長親子の物語。
    どれだけ苦労して、知恵のある当番クジラを捕まえたところで、市場に持っていけばその他のミンククジラと変わらない値段になる。
    それでも当番鯨をとるのは親としての、船長としての意地。
    こうやって、捕鯨は廃れて、時代は変わっていくのだなあ。

  • 著書の戸川さんが旧制山形高校時代の実体験をもとに1954年に発表した短編小説(直木賞受賞)。高安犬は高畠町高安を中心に生息していた日本犬で、この物語は、強く賢い高安犬チンと、チンにたくさんの愛情を注ぐ飼い主吉蔵、私、学友尾関、パン屋木村屋の姿が描かれている。山形県民としては、おなじみの地名や山川、当時の山形の生活文化が書かれてあるのが嬉しい。

  • 高安犬(こうやすいぬ)とは、かつて山形県東置賜郡高畠町の高安地区で繁殖していた日本犬の一種。中型だが犬張子を思わせるガッチリした体型で、雪山を幾日もさ迷い歩く我慢強さと、熊にも立ち向かう逞しさを持ち、番犬や熊猟犬として多く使われていたが、昭和初期に絶滅したという。
    戸川幸夫氏の初めての小説作品であり、直木賞受賞作となった『高安犬物語』は、おそらく純粋な高安犬の最後の1頭であろう雄犬「チン」の姿を描いた作品である。

    昭和の初め頃になると、高安犬の本場の高安付近でさえ、純粋な高安犬を見ることはできなくなっていた。
    山形高等学校(現在の山形大学)在学中、学友の影響からこの犬について知った“わたし”は、「滅びてゆく種族をなんとか残したい」という願いから、山形市を中心に日本犬の情報を求めて調査を始め、とうとう県内の日本犬名簿を作りあげるまでになった。
    やがて“わたし”のもとに集まる情報のなかに、山形と福島の県境に近い山間の村に、「いい地犬(高安犬)がいる」という話があった。それが“わたし”と「チン」の、出会いとなる。
    吉蔵という気難し屋のマタギが飼っていた「チン」。どうにかその写真だけでも撮ろうと、“わたし”は吉蔵と交流をはじめる。
    荒々しい自然の中で生まれ育ち、鍛えられた吉蔵と、その彼が育て鍛えた「チン」。時に大猿と知恵比べし、時に熊鷹と獲物を奪い合い、熊に食らいついて格闘する。強く賢く、優しい。吉蔵と「チン」の物語に夢中になる“わたし”だが、優秀な猟犬にも、避けがたい老いと病が忍び寄っていた――。

    “わたし”こと戸川氏と、日本犬の保存に尽力する人々、マタギの吉蔵さんと、彼の最後の高安犬「チン」との最期の日々を描く表題作のほか、北海道のクジラ獲り漁師と、当番クジラと呼ばれる絶対に捕まらない大物クジラとの死闘、廃れていく中小規模船の捕鯨に携わる父と息子の葛藤を描く『火の帯』2篇を収録。
    明治、大正、昭和と近代化・国際化が進む中、動植物は多くの日本固有の種が滅び、古来からある多くの人の生業もまた廃れていった。『爪王』では老いた鷹匠が、鷹で猟を行い毛皮を売る家業は自分が最後と覚悟していた。滅びを避けられない生き物や風俗への、戸川氏の深い観察と興味、記録への一貫した情熱を感じる動物文学短編集。

  • 犬は、すばらしいわ…

  • 「高安犬物語」「熊犬物語」「北へ帰る」「土佐犬物語」「秋田犬物語」の5篇の児童文学です。

    大正から昭和の初期という時代もあり、引っかかる内容や描写がところどころにありました。
    日本犬を大切にしたい、残したいというのは良いと思うのですが、日本犬が廃れてきたのは人間のせいであって、洋犬が悪いわけではありません。
    『垂れ耳犬の汚れた血がまじってきた』というのは酷い書き草だなと思いました。

    自分の犬への愛情と、この中に書かれてある犬への愛情は違うものでした。

  • 気高く強い日本犬。なんてかっこういいのだろう。

  • 「高安犬」とは、山形県東置賜郡高畠町高安地区に生息していたクマ猟犬。

    オオカミを調査していた著者が、滅びそうな日本犬「高安犬」のことを
    聞きつけ、最後の1匹に会いに行き、その荒々しい生態を知った実話に基づく物語。

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著者プロフィール

1912年、佐賀県生まれ。東京日日新聞社(現・毎日新聞社)に入社後、1955年に小説『高安犬物語』で直木賞を受賞。作家専業となり動物小説を次々と発表、「動物文学」をジャンルとして確立。多数の小説や児童文学作品を手掛ける。

「2018年 『新装合本 牙王物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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