やわらかな棘

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018655

感想・レビュー・書評

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  • 評価は全章。
    まちあわせ…学生の頃の思い出が支えとなり辛い事も乗り越えていけることもある。女の敵が女ではなく男になった時の恐怖を味わえる。
    ヒヨコと番長…主人公は前章の女の元カレの嫁の姉。妹とは対照的に堅実で独立心が強く男勝りな性格だけど、実は妹への対抗心がそうさせている。双子の姉妹だけあってお互いの鋭い分析は的確。
    美しい雨…美雨ちゃんとそのお母さんの視点。娘が繋ぐ母娘の絆。最後のページは肌が粟立つ言葉の連続だった。言葉の力ここにあり。何度読んでも涙が出る。
    春待ち…晴美の友人の弟の叶えられなかった夢、汲み取れなかった壁一枚挟んだ隣の部屋の孤独感・無念さ。それでも絶望の先に彼女のほのかな希望が見え隠れする。

  • P181 いつの日かあなたにも、泣きじゃくる日がくるかもしれない。どうしようもなく、ふるえる日がくるかもしれない。誰かを憎んだり、失くしたり叶わなかったり裏切られたり傷つけられたりして、このまま世界が終わってしまえばよいと本気で願う日がくるかもしれない。
     その時あたしが、あなたの横に居られることを、今から祈ろう。あたしがあなたのために一日でも永く生きられることを。健康でいられることを。あたしがあなたのために一日でも永く生きられることを。あたしが、あなたへ吹きつける風を、すこしでも和らげてあげられるよう。そして、求められた時には、「なりふり構わずに」あなたを守れる強い自分であるように。あなたのぶんも、あたしが祈る。
     だから、今は安心しておやすみ。
     雨の朝生まれた、あたしだけのこども、美雨。

    ありがちな感想かもれないけれど、それぞれの「うまくいかなさ」を抱えながらも一生懸命生きようとする人を真っ正面から捉えて描き上げて行く朝比奈さんの姿勢に、いつも感銘を受けます。

  • つながっている短編集。

  • まず第一にタイトルが絶妙。“やわらかな棘”。やわらかいのだけれど確かに刺さっていてその棘が心を刺す。4篇の連作短編集。すこーしずつ話が繋がっていく。そのうち人物の相関関係がわかるようになってくる。人間って、ギリギリのところで見せる顔が結局はその人の本質なんだと思う。一番最初のお話の続きをもう少し読みたかった。2012/710

  • 図書館で何気なく手に取った初めて読む作家の作品。
    少しずつ登場人物の重なった、4つの連作。
    それぞれの人物がみな心にそっと闇を抱えながら、それでも人との関わりの中で生きていく物語。
    軽く読みやすい文体で、すぐ読める。同じ作者の他の作品も読んでみたくなった。
    2015/03

  • 好きだった人に裏切られ復讐を企むOLの話など4篇。
    心に刺さった棘を抜こうとする方法は人さまざまだ。

  • 図書館で何気なく手に取った本。
    4人の女性が自分のありふれた、でも決して無視できない事情と向き合うお話。
    誰でも持っていそうな一面をさらりとかつリアルに表現していて、まだまだ知らないけど素晴らしい作家さんがいる!とテンションがあがりました。
    他の単行本も読んでみたい。

  • 心に棘を抱えながらも、何とか、何とか生きていく人々を描いた四つの連作短篇集。
    朝比奈あすかさんは全く知らなくて、たまたま図書館で手にとって読んでみた。第一章は何だか安っぽい携帯小説みたいな文体で正直失敗したかと思ったが、徐々に引き込まれていくうち、四人の性格に合わせてそれぞれ文体まで変えてあるということに気付いた。心の深部に囁きかけるストーリーだった。

  • 久しぶりに一気に読んだ小説。「あの人どうなったの」と思う部分が少々あったものも、さらりと読みやすかった。所々に、この文章が書きたかったんだろうな、と思わせるような光る一文があって、素敵だった。
    2012/11/21 読了

  • 4つの短編

    長く付き合っていた比呂人に最悪の屈辱的な別れ方をされ、傷つき復讐をしようと計画を練る晴美

    資産家の祖父と女優の母のもとで裕福に育ったことに抵抗があり、普通の人として生活をする保育士でアフロヘアーの姉の奈津子と比呂人と結婚した妹の奈那子

    シングルマザーとして娘の美雨と入院している母と生活している亜季

    弟の死をきっかけに崩れた家族と摂食障害になった布由

    暗い…

    小さい子供をもつ親って設定が他の本でも出てくるよね。
    子供の名前がドキュンなのもすごい意識してるよねw
    春待ちは一番暗い気がするけど最後が希望的。
    アフロの奈津子のキャラが好き)^o^(

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著者プロフィール

1976年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。2000年、ノンフィクション『光さす故郷へ』を刊行。06年、群像新人文学賞受賞作を表題作とした『憂鬱なハスビーン』で小説家としてデビュー。その他の著書に『彼女のしあわせ』『憧れの女の子』『不自由な絆』『あの子が欲しい』『自画像』『少女は花の肌をむく』『人生のピース』『さよなら獣』『人間タワー』など多数。

「2021年 『君たちは今が世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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