- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344023376
感想・レビュー・書評
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先日終わったソチオリンピック。
ヨーロッパでの開催だと、なかなかライブ映像を楽しむのは難しかった。
録画して見ると、民放の番組の前半は感動的な取材映像で埋め尽くされ、背中に背負うストーリーでお腹がいっぱいに・・・。
確かに葛西選手の今までのオリンピックシーンや新聞の記事くらいは興味深く見ているけれど、真央ちゃんや高橋大輔くん、弓弦くんの取材映像を見ていると、今回のオリンピックは以前にもまして過剰になっていた気がした。
彼らの競技だけに没頭できる環境を静観できるいいのだけど、マスコミに取り上げられるのもある種仕事だと思えばバランスが大事というところか。
で、この本。
ステップファミリーのたいへん魅力的な長男(ちょっとしたしぐさや行動が人を惹き付けずにはおかない!)が不慮の事故で亡くなってしまう。
溺愛していた息子を失った母親は精神的に大きなダメージを受けアルコールに依存症に。
母親の精神的なバランスをぎりぎり保とうと家族は全力を尽くすのだが・・・。
母親が実の兄を溺愛していたのを客観的に眺めながら何事にも踏み込めない長女。
兄に向けられていた血のつながらない母親の愛情を今こそ、手に入れようとする次男。
血縁のうえで両親を繋ぐ次女は、兄と過ごした時間が短かったにもかかわらず、学校や家庭に兄が遺した思い出に絡め取られそうになりながら、反発し、苦しんでいる。
ギリギリのバランスの上に成り立つ家族。
はた目から見ていると、母親がこれ以上壊れないように子ども達が自分を殺し我慢を重ねて成立しているのがわかる。
自分が自分らしく生きようとすることは、この家族を離脱し、自分というピースを取り去ることになり、バランスが崩壊することを意味すると考えている。
人のために生きることで、自分は今まで以上に強くなれたと感じる人がいる。
何もかもそぎ落として、自分という芯だけを頼りに生きる人もいる。
いろいろな事情に、物語が絡まってしまった家族関係。
苦しいね・・・。
シンプルに居心地のいい、帰ってくる場所としての『家族』とはもはや異なる世界。
そんなことを考えた1冊。
傍観者たちによって、勝手にストーリーを背負わされてしまったオリンピックの競技者たちに対してなんだか申し訳ない気持ちになってしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何事にも特別に秀でた長男 澄生を筆頭に、綺麗で特別で完璧な幸福に満ちた澄川家。
両親の子連れ再婚は成功し、新しい家族にも恵まれたのだが…。澄生が落雷に打たれて17歳という若さで命を落としてから、拠り所を失った一家はどう生きていくのか。
久しぶりのエイミーさん。卒論のテーマに山田詠美さんを選んだので、一通り著作は読んできたつもりですが「風味絶佳」以来かな…3.11以後に書かれた作品ということで、、、
テーマは家族の喪失と再生かな。
澄生を失い、アルコール依存症になるまで追い詰められてしまう母親、大切な人を突然失うのが怖くて恋愛に向き合えない長女、自分を素通りする母の愛を求めて年の離れた未亡人と付き合う次男、誰よりも愛された兄を死んでしまえばいいと憎みもした次女。
一人っ子の私には親の愛情を巡る兄弟間の争い、みたいなものはよく分からないけれど、大事な人は出来れば独り占めしたいし、されたいのが人の性。
不在なのに誰よりも色濃くその存在を感じさせる澄生に、他人ながら嫉妬します。 -
子連れどおしの再婚。末っ子の誕生。長男の死。アル中の母。
語り手を長女、次男、次女で語り継いでいくところや、家族の死をテーマにした部分が朝井リョウくんの「星やどりの声」を思い出させたのだけど、すぐさま消し去られましたね。こっちはもっとヘヴィ。
特に次男の創太に対する母親のひどい言動には読むたびチクリと胸が痛みました。
もうこの歳になれば、完璧な親ばかりではないのは重々承知してますが、それでもこの母親はひどい。
とは言え、私は子供もいないし、子供を亡くしたこともないので、環境が違っていたら、きっと感じかたも違うのかなと思う。同情の余地はありました。
そして皮肉なことに、この母親の存在があって、血の繋がりのない継父と長女が、そして長女と次男が本当の家族になっていくんですよね。苦しみを共有して。戦友のように。
最後のあれは正直どうなの?って思ったけど、ある意味ハッピーエンドでよかったよかった。でした。-
めぐさん、こんにちは。
この母親の態度にはもやもやが残りました。
長男が亡くなる前から次男へのひどいこと言ってませんでしたか?
シ...めぐさん、こんにちは。
この母親の態度にはもやもやが残りました。
長男が亡くなる前から次男へのひどいこと言ってませんでしたか?
シュークリームを焼いた場面とか。
それでも無心に母親を追い求める創太の姿が切なくて切なくて。
私はダダ泣きでした(笑)
結末は救いがあってよかったですよね。2013/07/02 -
vilureefさん こんにちは!
シュークリームのとこ!わかります。
わたしもシュークリームの場面がいちばん衝撃でした。
とにかく創太が...vilureefさん こんにちは!
シュークリームのとこ!わかります。
わたしもシュークリームの場面がいちばん衝撃でした。
とにかく創太が不憫でたまりませんでしたよね。
結末も、え~!?でしたけど、あの唐突さに救われた感じ 笑2013/07/02
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二組の合成された新家族が長男の突然の死によって、幸せとは一見違う表膜に長いこと包まれてしまいます。普通なら、年月と共に昇華されていくべき死者の魂が、精神を病んでしまった母親の強い想いによって、どこまでも傍から離れずに、呪縛のようにこの家族を捉え、苦しめていくお話です。
中盤までは、読んでいても辛く感じてしまいましたが、読み進めていくうちに次第に自分の中で納得できる要素が見つかり、最終章「皆」に至っては意外なサプライズにささやかな希望を見つけることも出来ます。よかったのは親も性格も皆違う3人の子供たちの視点から、それぞれが家族以外の他者との関わりの中で「死生観」に対する考えを自分自身のこととして咀嚼していったことです。
遺された家族の軌跡。想像以上に、読み応えあった作品でした。 -
最後に山田詠美を読んだのはいつだったか思い出せないくらい久しぶりの山田作品。
再婚同士の二つの家族が、新しい家族になるべく共に暮らし始めた。ある死の影を背負い続けた家族の再生の物語。
子どもたちの独白という形で進むストーリーは、悲惨で切なく、愚かしくもあり、そして温かくもある。一つの家族の物語だけれど、そこにはたくさんの人々の人生が映し出されているようにも見える。
だって、人はいつか必ず死ぬ時が来るのだからね。すべての人に平等に、生きることの隣にはいつも死があり、死を描くことで、残された者の生が浮き彫りにされる。
実は結末はちょっと私が想像していたのと違っていた。う~ん、あれはあれでよかったのだろうけれど、少し違和感を感じなくもない。
最終章の千絵のくだりは必要だったかな~、なくてもよかったような気がするけど、好みの問題? -
昨日からこの本を二日で読み上げました。
さすが大好きな山田詠美さん
と思ったり、
少し描写が古臭くなったな…
と悲しかったり
でもやっぱり、
ベッドタイムアイズでデビューして
50代になった作家が行きついた
深みもちゃんとあります。
温か下町みたいな感じじゃなくて
ちょっと向田邦子さんみたいな
家族を冷静にみられる世界観なので、
こういう本を読むと
あーやっぱり私の落ち着く世界は
ここだわ
と山田詠美さんの世界からは
かけ離れた場所で
陳腐な渡鬼状態に
心を砕き
疲れ果てている身体には
本当に安心させてもらえるので、
ありがたいです。
特に誰かの死に向き合った事が
ある人、あるいはそういう事を考えなくては
いけない時に読んでみるといいかもしれません -
家族を失う。その意味を、残された家族のそれぞれの物語として描いた小説。
食わず嫌いというわけでもなく読む機会を逃してきた同世代の作家。同世代の作家を読みたい時期になったのかもしれない。書かれていない行間に、好きとか嫌いとかを越えた心地よさを感じてしまう。
長兄を失ったある家族の物語。残された弟と妹たちの一人称による語りは
微妙なニュアンスの差を含み、人はそれぞれ同じようで異なるのだという
ことを、新鮮に描き出している。陰影という言葉が似合う。
私は次女にもっとも共感する。その投げやりな感覚は、全共闘世代よりも
後の世代が持つ『遅れてきた者』特有の醒めた目と、前の世代の挫折を
引き受けない覚悟とを共有している。「俺はあんたらが嫌いだよ。あんた
らとは一緒にしないでほしいもんだ」という運命を共にせざるを得ない暗黙の憎しみと自立に根ざしている。 -
久々◎な作品に出会えた。
幅・厚み・深み
どれをとっても申し分なく(*^^*)
風味絶佳以来、山田さんの作品は
読んでなかったけれど、これはお勧めです。