蜜蜂と遠雷

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344030039

感想・レビュー・書評

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  • ピアノに挫折した過去がありますが、それぞれのピアニストと曲選びがとても興味深く、YouTubeで曲を聴きながら読みました。それぞれの曲や演奏者に対して、とても表現力が豊かな文面に気持ちが入れ込んでしまいました。恩田さん、何者?と思いました。
    読み終わるのがわ、なんかもったいないというか、寂しい気持ちになりました。
    CDも買いましたので、何回も余韻に浸れそうです。

  • 分厚くて、しかも2段組なのですが、ページをめくる手が止まらず、あっという間に読んでしまいました。とにかく先が気になって仕方ないです。余裕を持って、曲を聴きながら読めばもっと楽しめたかもしれない。
    映画化は楽しみなような怖いような。でも、やっぱり楽しみ。鳥肌が立つような映画を期待しています。

  • 長編なのに読み出したら止まらない。

  • ピアノの天下一武道会。
    全然ピアノの知識がなくても、手を変え品を変えた比喩で楽しめる。

  • ピアノコンクールを舞台にした物語。
    恩田陸の本は導入部分が小難しいイメージがあったけれど、この作品は最初から引き込まれるように読み進められ、最後まで一気に読み終えた。
    ピアノを弾く人はこんな風に弾いているんだなぁ。
    音楽を紐解いてイメージして、鍵盤にのせるという一連を自分も体験してみたくなった。

  • クラシックのピアノコンクールが舞台。
    芳ヶ江国際ピアノコンクール。パリのオーディション会場に、無名の日本人が参加、弱冠16歳の飾るところの無い少年が、伝説的ピアニスト・ユウジ・フォン=ホフマンの弟子として登場する。
    少年、風間塵の演奏は審査員三枝子の憎悪を搔き立てた。だが、それこそがホフマンからの推薦状に予言されていたことでもあったのだ。──彼はギフト、天から我々への。彼はけして甘い恩寵などではなく、劇薬なのだ。中には彼を嫌悪し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。彼を本物のギフトとするか、災厄にしてしまうのかは、皆さん、いや、我々にかかっている──(途中意訳省略)
    他の二人の審査員は絶賛し、三枝子は恥ずかしさにショックを受け、ふて腐れた。
    現在、クラシック界には楽譜を作曲家の意図を正確に再現するのがいい、という風潮がある。流通がしやすい方に曲の傾向が流れる問題もある。そして権威がものを言う、コネがなければどうにもならない閉塞感。
    コンテスタントの一人、マサルも大阪では実力を発揮したにも拘わらず、日本での音楽会に全く知り合いがいない(審査員やその関係者にコネがない)という理由で、つまらない難癖を付けられて失格扱いをされた。
    物語は、コンクールで勝ち上がり、プロとして成功する難しさと、クラシック界の閉塞感──音楽が一部の権威や商業主義のために決まった型へ押し込められている問題、それでも個性が求められる矛盾とどのように表現してくかという問題を浮き彫りにしながら、沢山の曲を小題としてテンポ良く進んでいく。
    各自のピアノを、情感豊かに様々な風景を思わせる描写で巧みに表現。曲を知らなくても、感じさせてくれる。
    沢山の曲、沢山の演奏者での書き分けが見事すぎて、舌を巻きまくり。
    妻子が居て就職もしていて、仕事の合間に練習をするしかない28歳の高島明石、彼を取材する雅美(と、明石の妻満智子)、天才少女としてプロの舞台活動もしていた栄伝亜夜の本心では望まぬ復帰戦、審査員三枝子の葛藤、マサルの師ナサニエル、亜夜の友である浜崎湊の審美眼(耳?)…多層構造のテーマを、これ以上無いくらいすっきりとしかし充分な描写でまとめ上げている。

    場面転換(主人公転換)が多く、2行空けで、視点を変えて各人の心情を交えて、どんどん語られていくので、とんでもないボリュームでも一日で読めてしまう。
    基本的に3人称だが、うまい具合に、あたしが──とか、僕が──と、地の文で心情の吐露がある。
    音楽用語であるリタルダンド(曲想の変わり目などを強調する手法)トゥッティ(全員が同時に演奏すること)など、余り知られていないだろう単語でも作中では一切解説しないので、むしろ冗長すぎない。
    専門用語を敢えてスッパリ説明しないのは、こんなに心地いいものかと驚いた。この小説の命題は音楽用語の解説ではないのだし、読者が知らなくて気になったのならスマホなどですぐ調べられる時代だから、これでいいのだと思う。

    各キャラの内面描写、過剰すぎない外見描写も心地良い。ラストのページは、読み終わるまでけして捲ってはいけません。これも良かった。スッキリした終わり方。

    久し振りに2段組のこんなに分厚い小説を読んだが、二段組みは精神的に圧がある。読み始めるまで気合いをためてしまった。それだけが難点だったが、一冊に纏めようと思えば、これがベストだっただろう。

    P402~403抜粋
    「──ちっぽけな自尊心、音楽をしている、音楽を分かっているといううぬぼれだけが肥大していただけだったのに。
     なんて馬鹿なんだろう。小さい時のほうがよっぽど賢かったし、きちんと世界を理解していた。
     あたしは、全く成長しないまま、おのれの見たいものだけを見て、おのれの聞きたいものだけを聞いて生きてきた。鏡の中に、自分の都合のいいものだけを映してきたのだ。
     きちんと音楽を聴けてさえもいなかった。
     苦いものが込み上げてくる。
     音楽は素晴しい、あたしは音楽に一生関わっていくのだとうそぶきながらも、実際にやっていることはその逆だった。音楽に甘え、音楽を舐め切り、ぬるま湯のような音楽に浸かっていた。ここにいれば楽だとばかりに、音楽と馴れ合っていたのだ。自分は違うと思いながら、音楽を楽しむことすらしていなかった。──」
    ここが凄く刺さりました。

  • *感想
    久しぶりに小説を読んだ。とてもキラキラした青春物語であり、読み終わった後は、爽快感があった。
    今まで見たことがないほどピアノを自由に楽しそうに弾く天才少年を中心として、ピアノコンクールの舞台は進む。
    天才少年以外のコンクール参加者についても、人生、感情がめまぐるしく描写されており、飽きることなく一気に読み進めることができた。

  • 素晴らしい本に出会えました…
    綺麗すぎる内容で心が浄化されていく感覚。

    それぞれの想いがコンクールを通して、重なり合い共鳴する音楽。本当に美しい本でした。

    音楽を文章にしたらこうなるんだなと感心しつつ、これは映像では不可能なのではないかと感じました。

    どの人物も魅力的ですが、個人的には栄伝亜夜という人物が魅力的で、ぜひぜひ音楽を聞いてみたいと思いました_φ(・_・

    ★5 2019/3/11

  • アメトーークで芸人が紹介していた。本から音楽が聴こえてくるような文章だと。
    そんな体験をしたことがないので、クラシックは全く疎いけど、手にとってみた。
    本当に音楽が聴こえてくるようで、読んでいて感動する。
    ただ、二段組みに最初は心が折れて、すぐには読みだせなかったし、慣れるのに少し時間がかかり、間違えて次のページを読んだりしちゃいましたが、本の世界感に入りこんでからは苦なく読めました。
    最後はこの本が終わってしまうのが悲しいくらい。

    久々に感動できた本。

  • ピアノに詳しくないので、大丈夫かなぁと思いましたが、すごく面白かったです!一気に読んじゃいました。

  • 「音楽が聴こえてくる」と聞いていたのですが、本当にその通りでした。悲しいことは何も起こらないのに、音楽の素晴らしさやその裏の血が滲むような努力や葛藤にうるうるしてしまいました。菱沼賞の場面でも泣きました。

  • 久しぶりに楽しくどんどん読み進められる小説でした。
    文章を読んで、情景がスルスルと浮かぶ体験は久しぶりで、読後はさっぱりとしてとても良かった!

    追記:
    半年ぶりに読み返したけれど、相変わらず最初から映画の導入のように静かに始まって、冒頭からゾワゾワさせられる。やっぱりすごい。


    そういや、映画も見ないとなー

  • クラシック音楽に一気に興味が出た。いい言葉もたくさんあったな。読み終えた後に心地よい疲れがあったのは、久しぶり。

  • 頭の中でピアノの旋律が奏でられるかのような読後感。

    モデルとなった浜松のピアノコンテストを聴いてみたくなった。

    若き才能がぶつかり合う、その輝きの眩しさといったら。

    誰を応援したくなるか、それもまた興味深い。

  • 自分にとっての特別な本がまた増えた。
    それがこの
    「蜜蜂と遠雷」だ。

    音楽表現の素晴らしさは前評判の通りだったので、
    今回は特別語ることはしないけれど
    今まで読んできた音楽を題材にした小説の中では
    群を抜いて素晴らしい。

    今まで恩田さんの小説は何冊か読んできたけれど
    まさに最高傑作。
    この本を書いてくれてありがとう。
    たくさんの人がきっとそう思ったに違いない。


    音楽、コンクール、天才――
    この物語には様々なテーマが含まれているけれど
    私はその中でも「ギフト」というキーワードが
    気に入った。そして考えさせられた。

    人間にはそれぞれに、神様からギフトが与えられていて
    誰もがそれを持っている。
    音楽や絵なんかは最も分かりやすいギフトの形だけれど
    努力とか、好奇心とか、感受性とか
    いろんな形のギフトがある。
    そう思うと
    自分も、街ですれ違う話したことものない人たちも、
    家族も
    皆「唯一無二の存在」であると思えた。

    ギフト。
    まだ1歳の私の息子は、神様からどんなギフトを貰ったんだろう。
    寝顔を見ながら、そんなこともぼんやりと考えた。


    登場人物で最も印象的だったのは、高島明石。
    天才の中に埋もれる、いわゆる「凡人」で
    登場した当初から、「あぁ、きっと本選には行けないん
    だろうな」という雰囲気が漂っていて
    正直、最初は哀れむように見ていた。
    けれども明石がいたからこそ、私たち読者は
    この物語に入れたし、感情移入できた。
    実際、自分が泣いた箇所はほとんど明石のエピソード。

    ベタだけど、努力して、挫折して、
    もがいて、苦しんで、でも報われる瞬間がある。
    そういう姿はやっぱり好感が持てるし
    自分も頑張ろうと思えた。
    まったく、本当に精巧に作られた物語だ。

  • この分厚さでその分厚さを感じられない物語。たった数日間のコンクールの間の出来事なのに飽きずに、コンテクスト達の成長が見られる。よくも間延びしないで最後まで突き進んだなぁ。
    出てきた音楽のどれも多分知らないけど、なんだか楽しく音楽をわかっちゃうような気分になる作品です。
    3人の関係性もすごくよかったなぁ。本当はコンクールならもっとピリピするんだろうけど、ひたすら純粋だった。

    2019.1.3
    1

  • とても気持ちいい読後感です。

    自分がピアノの音が好きだったと思い出した。
    ピアノコンクールに触れたい、そう思った。

    ズッシリとしたページ数なんだけど読み終えたら軽くなっている気がした。

    どんどんと引き込まれていくテンポに、未来が開かれていく希望に、人の本質に戻っていく純粋さに、気持ち良さが積み重ねられていった。

    ピアノが奏でる滴に耳を澄ましたくなった。

  • 音楽が存在する、この世界に生まれてよかった。
    第3次予選ラストでは、聴衆や明石と共に涙していました。

  • 読み始めたら止められず二日間で読了。大変面白かったです。タイトルだけであの曲だ!と分かる曲がエリック・サティの「あなたが欲しい」一曲しか無いのにすごく面白かった。恩田さんはピアノを弾く人なのだろうか。映画化するそうです。サントラ盤を聴いてみたい。読み終わるのが惜しかったです。

  • 冗長的な所もあったけど、読み終わると一瞬のように思える、素晴らしい作品。

    自分も“生活者“だから明石のパートがやっぱり一番好きで、一々込み上げるものがあった。

    モデルになってる浜松国際ピアノコンクールに行ってみたい。けど、次の開催はまだ先だからとりあえず他のピアノコンクールに行ってみよう。

    Spotifyにプレイリストがあるのが本当によかった。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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