- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344424203
作品紹介・あらすじ
昭和三十三年滋賀県に生まれた柏木イク。気難しい父親と、娘が犬に咬まれたのを笑う母親と暮らしたのは、水道も便所もない家。理不尽な毎日だったけど、傍らには時に猫が、いつも犬が、いてくれた。平凡なイクの歳月を通し見える、高度経済成長期の日本。その翳り。犬を撫でるように、猫の足音のように、濃やかで尊い日々の幸せを描く、直木賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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この作品で直木賞を受賞した時、ジャージで走ってきた事が話題になりました。
主人公・イクは、昭和33年滋賀県生まれ。姫野さんは、同世代同郷の女性を、昭和から平成を振り返りながら語るという構成で、その時代を描きました。
全八章からなります。イクの幼児期から年代順に、時代の背景、イクの生活、そして、流行していたと思われる種類の犬が書かれていきます。タイトルには、その時代印象的だったアメリカのテレビドラマの番組名が使われます。タイトルと内容は、関係するところはありません。
シベリア抑留経験を持つ気質の荒い父親。そんな夫を嫌悪する為か、娘への慈しみを見せない母親。イクは居心地の悪い家庭で、高校生まで、寡黙に生活します。昭和の戦後から復興、そしてバブルから平成へと、翳りある部分はあったとしても、華やかな変貌を遂げた時代を慎ましく献身的に生き抜きます。
半分ほど読んでも不確かだった物語が、最終章に向かって意味合いが深まっていきます。
50歳を目前としたイクは、両親の介護をやり遂げ、自身も幾つかの病気を経験します。決して贅沢でないむしろ抑制的とも思われる生き方の中、真の幸福感に満たされる瞬間がやってきます。「今までの私の人生は恵まれていました。」彼女は大きな声で言います。たぶん、この1行を読むために書かれてきたそんな小説です。
いつも、あともう少しと何かを求めてきたことに恥ずかしさを感じてしまいます。
昭和を全く知らない方には、読み難いと思います。あくまで一人の普通の女性の人生なので、淡々とした物語です。平成から令和への生き方への問いかけをしているようでもありました。 -
令和になって3年。昭和は随分昔の話となった。いつのまにか…。
昭和の50年余りの間に、生活の様子も、犬の飼い方もとても変わった。
地味なイク…昭和はこんな子ばかりだったようにも思うけど…が犬猫と関わりながら時に癒され成長して、大人になってもマロンに癒されるところはなんだかいい。
生活様式とか犬猫の飼い方とか変わっても、犬猫と人間の繋がりって変わってないのかもしれない。
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直木賞受賞作という事で買った一冊。
初めてよんだ姫野カオルコさんの小説でもあった。
1人の女性の人生ドラマだった。
この女性の人生を読んでいるとよくどこかで躓かなかったなと思う。
たんたんと進む話で大きな出来事があるわけでもないが、なぜか話に引き込まれた。
犬との交流は本当にこの女性は犬が好きなんだなと感じた。
犬がいたからグレなかったのかな?
時代の流れも感じられる小説でした。 -
これが直木賞とは…普通。所々に考えさせられる所があるけど、私は普通…昭和から平成に生きた人間だからこそ普通に感じてしまうのかな。だからこそ直木賞なのか…
でも、犬や猫好きにはたまらないのかなーこの本は。可愛いく、癒してくれたり時には、裏切られたり。
イクは人生通して犬や猫がいたから生きてこれたんだろうなー。これって凄い事なんではないかと思うけど。
人間の側に一番近い動物の事が分かった本。そう言った意味では面白くよめたかな。 -
生れた頃から小学校に上がるまで、いろんな人の家に預けられながら、一人で遊ぶ自分の傍には大好きな犬と猫がいた、という異色プロフィールをもつ著者の自伝的要素のつよい小説。 昭和33年滋賀県生まれの主人公・柏木イク(姫野カオルコ)が、幼児期から社会人になるまでの期間にTV放映されていた海外ドラマのタイトル(ララミ-牧場、逃亡者、宇宙家族ロビンソン、インベ-ダ-、鬼警部アイアンサイドなど)を各章に振り分け、平凡なようで風変りなイクの過ぎた歳月を描いた型破りな直木賞受賞作(朝井まかてサンと同時受賞)。
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好きな作家の一人、姫野カオルコさんの直木賞受賞作(スピーチ、面白かったです)。
受賞作の本作より、個人的には「リアルシンデレラ」の方が好きでした。
それにしても、著者が描く人物は「聖人」。
何故こんなにも、清く生き続けられるのか。切なくも、羨ましく思います。
主人公のイクは戦後に生まれ、両親の愛に恵まれずに、そしてそれを受け止め、ただ、自己の不甲斐なさ故に愛されないのだと思いながら育った女性。
そんなイクの5歳から、中年期までが描かれた作品です。
イクの父は理不尽な理由で怒りを撒き散らす人物ですが、犬を手懐けることに長けた人物。
小さな頃から犬と共に生活してきたイクもまた、犬を愛し、犬に心を癒される性格。
私自身、犬が大好きなので
「犬を見たり犬にふれたりすると、ふれた面‐てのひらや腕の内側や頬や‐から内側に向かって、ふくふくとした気持ちが生えてくる」
という描写が、
私に「ふくふくとした気持ち」をおもいださせ、それだけで嬉しくなりました。
そして、相対的には決して幸福で恵まれていたとは言えない人生を送ったイクが思うこと。
「獲得したものを数えるのではなく、彼らの厚情により、被らなくてすんだ不幸を数えれば、それは獲得したものとちがい目に見えないが、いっぱいいっぱいあるのではないか。」
自分の欲深さや傲慢さを、姫野作品はいつも指摘してくれます。
2014年8冊目。 -
直木賞受賞作ということで読んでみた。
終戦後の昭和から物語が始まっているせいか、昔っぽいタッチで描かれており個人的には最初入り込み難かったが、徐々に読み進めていくうちに面白く感じられた。
犬がタイトルにも使われておりそういった作品の多くが感動系であるから、そういう心持ちで読んでいたが、これにはいい意味で裏切られた。この小説は昭和から平成にまでの1人の女の人生を、その都度関わりのある犬と共に書き綴っている物語で、特にこれといって何か大きなイベントが起きたりするようなことや犬の死に寄り添う涙ちょうだい系の話は無く、その時代背景というか匂い?みたいなものに徐々に誘っていくといった不思議な雰囲気の小説だった。
何というか主人公が主人公らしくない性格で、読んでいて目新しい感があり、こういう捉え方をするんだ、と普通に違う側面の人間を見られた気がした。
作中のイクの成長と共に寄り添った様々な犬たちがその時その時でどういういった役割や影響をイクに与えていたのか、何を象徴していたのかを考えながら読み進めるのも面白そうだなと感じた。 -
気難しく割れて家族をビクビクさせる父親、ブラジャーを買い与えず娘を嘲笑う母親、今なら毒親でネグレクトだけど、それも昭和、犬を放し飼いにして人を噛んだり保健所に連れ去られたり、引っ越しの時にどこかに行ってしまったり、夕ご飯の残り物をあげるか鑑賞するものでしかない犬、それも昭和。私は昭和を知らないから、感情移入とか同情はせずに、戦後の粗野で雑で価値観の違う、そういう時代だったんだなと鑑賞しながら読む本。
ババアの昼飯
ひつまぶし
愛知の主婦Mさん
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ベストレビューは
我(わ)のおかげ
よく言うで蕉
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キレもメロンも
甘くなり
憂国疲労の一句
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