- Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344984905
感想・レビュー・書評
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「東大女子」という四字熟語が、ことさら意味深長に響くのは何故か?
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東京大学、誰もがこの名を聞けば、将来日本を背負って立つ人材が集まる大学、入学するのに一番難しい大学、つまりとてつもなく賢い人たちが入る大学と思う。
男性でも「東大出身です」と言えば、周りの人々はちょっと引く。これが女性となると…
しかしこの書によると世界の名だたる大学、ハーバードやプリンストン、ケンブリッジなどでも全学生にしめる女性の割合は約半数、ところが東大は2017年度で19.2パーセントという。2020年までに少なくとも30パーセントにするという政府の方針があるというがなかなか難しいのではないか。これはある意味、頷ける数字であろう。誰もが東大を出てから描く人生像は一般女性にとって有利か不利か。逆にいらぬ努力をしいられそうに思ってしまう。
とりもなおさず、これは未だ、日本では女性は卒業し、働いて、結婚出産で一旦育休後、または退職後仕事に復帰という既定路線を多くの人たちが思うからだろう。まず、結婚で東大出は敬遠される。たとえ結婚、出産しても仕事をどうするか、継続して働くとして夫と同等に分けることができるか等の問題をはらんでいる。
それならば、わざわざ東大に行かずとも…と考えてしまうのだろう。
国を挙げて、「働き方改革」「大学入試改革」を推し進めている。しかし旗を振っても日本人個々が自身の意識改革をして行かねば、東大の女性の割合は増えそうにはない。
日本の人口減少はすでに始まっている。有能な人材を育て、活かしていかなくては日本の将来は明るくない。眠っている有能な女性たちが苦労することなく、社会で活躍し、もちろんプライベートも充実した人生を送れるよう、私たちの意識改革から始めなくてはならないのだろう。 -
「課題先進者」としての「東大女子」に焦点を当て、「女性活躍」「少子化」「ジェンダーギャップ」「塾歴社会」「競争教育」「教育格差」など、複雑に絡み合った社会的課題の本質を、「東大女子」の視点を借りて、明らかにしていくというのが本書のコンセプトである。
これだけ「女性活躍」や「男女共同参画」と言われていても、いまだにそれらの真の実現には遠く、その課題が先鋭的に顕れているのが「東大女子」ということがよくわかった。結局、これまでの「女性活躍」や「男女共同参画」は、女性を旧来の「男並み」に働けるようにするという発想でおこなわれてきたことに無理があるのであり、本書でも指摘されているように、男性を旧来の「女並み」に近づけるという発想が必要だと感じた。
本書で紹介されている東大教養学部の「ジェンダー論」の講義の内容が面白かった。東大女子でもたまに専業主婦になりたいという人がいるが、東大女子が正社員として働き続けたら、その後3億円稼ぐ力を持っている、つまり確実にジャンボ宝くじが当たるのと同じ。その一方、1日3時間の男性の家事がフルタイムの女性の就業を可能にする。東大女子でなくとも一定のレベルの女性が一部上場企業に就職したら生涯で2億円稼ぐ。そのプラスの2億円のために必要なのが、たかだか2~3時間の男性の家事であり、男性が1人で働き残業で稼ぐより、家に早く帰って夕食つくってるほうが家計的にははるかに合理的だという。まさに目から鱗だった。
いわゆる「東大女子」の知り合いもいるが、普段のつきあいではあまりわからない「東大女子」の様々な側面について、本書を読んで理解が深まった。「東大女子」を切り口に複雑な社会的課題の本質に迫るという本書の狙いもかなり成功していると感じた。優れたルポタージュだと思う。 -
東大女子自体はややこしい存在のようだが、それを切り口として、男女の「働き方」「家事分担」のありかたに切り込んだ一冊になっている。「東大女子って女っ気がなくて・・・」という論調の本ではないので、これから読むかたはお気を付けください。
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東2法経図・6F開架 B1/11/489/K
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圧倒的に想像力の欠如だと思うのだが,想像できる層が社会の中でマイノリティであれば,世間圧として脆弱になるのは想像に難くない."働き方改革"とは専業主婦に頼らず社会を回す方法を考えること,"大学入試改革"とは偏差値の差に対する過敏症を治そうということ,と喝破する.発議した人達はそんなこと考えてもいないだろうが,見事な解釈である.
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偏差値ヒエラルキーの最高峰にあって、競争社会の最前線から専業主婦までの選択肢が視野に入れられる「東大女子」
“究極の高学歴女子”である彼女たちがかかえる葛藤や生きづらさを切り口に、世の中の矛盾を描き出す
《問題の本質は「男vs女」ではない。男であれ女であれ、家事や育児に従事する者が軽んじられていることである。「競争vsケア」なのだ。》
バリバリ働いていた男性が父親になった瞬間に仕事と家庭の板ばさみになる様子を描く『ルポ 父親たちの葛藤』
過度な競争教育の中で学歴や偏差値にとらわれる社会のゆがみを描く『ルポ 塾歴社会』
2冊の著書の延長線が交わるところにできた一冊 -
私がその大学と縁が無いからですが、この本の主題となっている、東大生女子と縁が私にはありません。なので、現役及び卒業生と実際に取材して書かれたこの本の内容は非常に興味がありました。
この本を読んで感じたことは、東大の女性は、東大の男性とも、他の大学を卒業した女性とも、違う対象として世間から見られていて、そのことを十分に理解している彼女たちは、それに対して、どうすべきかを考えた結果、行動をしている人が多いということです。
私が社会人になって30年になりますが、少なくとも日系の会社及び日本人男性が多くを占める会社では、男性を基準に制度がつくられていて、女性には不利な面が多く、この30年、ほとんど改善されてきてないように思います。その中で、彼女たちは何かを犠牲にしながら必死に頑張っていることがよくわかりました。
また、東大卒業生ではないものの、会社に勤務している女性は、結婚・出産(子育て)について同様の悩みを持っていることにも気づきました。妻には大変な思いをさせてしまったことを、今更ですが気づきました。
以下は気になったポイントです。
・働き方改革と、大学入試改革が同時に議論されている、働き方改革とは、要するに、専業主婦に頼らないで社会を回す方法を考えようということ、大学入試改革は、偏差値の差に対する過敏症を治そうということ(p3)
・何かで満点を取ろうと思ったら、何かを捨てなければならない、女の人生は5教科七科目でバランス良く得点すれば勝ち残れる東大入試のようにはいかない(p25)
・東大の卒業生は、20代前半までずっと勝ち続けている、だから評価されなったとき、自分を立て直す術を持っていない。自分を立て直す必要のないキャリアを歩いてきたから(p29)
・妻が年間1000万円稼いで来たら、家事労働の時給は1万円となる、1日3時間365日として考える(p38)
・ライフコースをどのように考えるかの分かれ目は、第一子の出産後にある(p43)
・女子はバカだと思われている方が東大の中でもうまくいく気がする(p65)
・東大女子と結婚した男性が家事をして共働きを継続できれば、生涯世帯収入は3億円増える(p78)
・男性の成功は本人の実力によるものと認められやすいが、女性の成功はそうとは認められにくい傾向がある(p124)
・キャリアを続けたいという思いがあるなら、結婚を決める時点でその先の人生設計をパートナーと話し合い、合意する必要がある(p154)
・いままでは、キャリアをスローダウンする役割を主に女性が引き受けることで、この社会は回っていた、これからは男性もその役割を担うべきである、そうすることで女性の活躍が推進され、同時に男性の生き方も多様化する(p156)
2018年4月15日作成 -
【試し読み】「過度な競争社会を勝ち抜くためには、高い偏差値と専業主婦が必要だった」え?!それは日本だけであり得る、堂々と正当化される考えでしょう。昔フランスの大学で知り合った日本人女子交換生を思い出した。彼女は東大女子ではないが上位大学だった。卒業後私は懸命に働いていたが、彼女は結婚してもう主婦になろうと考えたそうだ。日本社会は高い偏差値を持つ子に、主婦を職業にする選択を真剣に考えさせるのはどうだろう。主婦は一家にしか集中せず、全社会への創造や可能性は抑えられてしまう。教育の資源、人の努力、無駄になってもったいない。