- Amazon.co.jp ・本 (77ページ)
- / ISBN・EAN: 9784403010057
感想・レビュー・書評
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繊細な様式美を楽しめる作品。7話のノルウェー民話に、デンマーク出身の挿絵画家カイ・ニールセン(1886-1958)が25枚のカラー挿絵と無数のモノクロ挿絵を描いた絵本です。オリジナルは1914年刊行で、ニールセンの最高傑作とされています。
ニールセンの挿絵をじっくり眺めていると、作品内の解説のとおり、ニールセンを特徴付ける二大要素の一つである、線の細さと独特の緻密さは、ワイルドの小説「サロメ」の挿絵などで知られるオーブリー・ビアズリー(1872-1898、英国)に影響を受け、彼なりに咀嚼したことが、確かによくわかります。(といっても、ビアズリーにあったグロテスクさや毒々しさはニールセンにはなく、線が細く、細かい描写を厭わない点に強い影響を感じるのですが。)
そして、もう一つの要素である、平面的に様式化された魅力は、北斎や広重といった日本の浮世絵に強い影響を受けているとのこと。確かに、波の描きかたは、明らかに北斎の有名作「富嶽三十六景神奈川沖浪裏」を連想させるし、樹木の幹の屈折具合や枝のしな垂れ具合、木肌模様、そして、余白の使い方は、浮世絵の伝統表現そのものといった感じ。
日本の伝統と、イギリスきっての異端児の表現、そして、北欧らしさを融合させて、「ニールセンらしい繊細な世界観」を作り上げた意欲を感じさせます。
(とはいえ、ニールセンの画家として名を馳せた時期は短く、晩年は極貧生活だった様です。)
そして、ノルウェー民話を読むのは初めてでしたが、日本やグリム童話などとは多少違うパターン、雰囲気があるのが、興味深かったです。
多少乱暴にまとめてしまえば、美男美女が、恋に落ちるけど、悪いトロル(魔族)のおかげで困難に出会う。それでもトロルを倒した後は結婚してめでたしめでたし…が定番なパターンのようでした。
綺麗な挿絵と、よく知るおとぎ話とは少し違うものを楽しみたい時にオススメです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うっとり……(*^.^*)
装幀 / 宇野 亜喜良
原題 / "EAST OF THE SUN AND WEST OF THE MOON"(1977)-
2012/05/10
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イラストがステキ。
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出会ったときからずっとこの本が好きです。
この本の文章でなければ読めない(というか物足りないと思う)ほどに。
おばあさん(もしくは乳母?)の語り口調から、時々混じる韻を含んだ歌詞のような言葉、そして話の最後に付くおやすみなさいの言葉。
優しく恐ろしく妖しい言葉。
そして何より挿絵の素晴らしいです。
はじめて親戚のお姉さんから貰って、
それ以来ずっと私の中に根付いている物語。 -
北欧の物語 眠りにつくまえに子供達に話てきかせるおばあさんの口調で
時には歌ったりしながら詩的に物語が進んでいく
お話も十分面白いのだけど 挿絵がとにかく秀逸。
カイ・ニールセンはデンマークのアーティストで ディズニーの名作ファンタジアでも名を馳せたイラストレーターで 彼の世界観はとっても素敵。
こんな素敵な独自世界をもっているから ディズニーの世界観と折り合いがつかなくなったのかもしれません。
ファンタジア以降はディズニー作品から姿を消します。
太陽の東・月の西で彼の才能は爆発してますが、日本語訳はその本のなかから数枚の挿絵をつかった本に仕上がっています 数枚といえどその絶品の挿絵です。
太陽の東・月の西は絶版していますので入手困難かもしれませんね。 -
7つのノルウェーの昔話が収録されている。王子と姫の恋物語で、主人公が旅をし、途中で相手にめぐり会う。でももちろん困難があって、それを乗り越えてやっと結ばれる。
ノルウェーの昔話には動物がよく登場して主人公を助けてくれる。さらに必ずと言っていいほど登場するのがトロルだ。
挿絵はカイ・ニールセン。コペンハーゲン出身でイギリスのビアズリーの無彩画と北斎、広重、歌麿などの日本の浮世絵の影響を受けたそうな。不思議な、神秘的な雰囲気の絵で〈北欧神話〉の雰囲気には合ってると思う。
2006/7 -
妖しく、美しく、恐ろしく、幻想的。虚ろで寂しいけれども、豪華で煌びやか。私の最も好きな本の内のひとつです。