ナポレオンの生涯:ヨーロッパをわが手に (知の再発見双書 84)

  • 創元社
3.48
  • (1)
  • (11)
  • (15)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 131
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422211442

作品紹介・あらすじ

戴冠式でナポレオンは高らかに宣言した。フランスの領土を保全し、国民の権利と平等と自由を尊重すると。これはまさに、フランス革命がめざした理想そのものだった。本書は、ナポレオンの多面的な性格と歴史的位置とを、一面に偏ることなくバランスよく紹介している。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ルソーの「自由と平等」の精神に深く共感しつつも
    時代の流れの変革のために戦いの中へと
    人生のほとんどを投じたナポレオン。

    人生で唯一愛した人ジョゼフィーヌとの話は
    あまり詳しくは掲載されていなかったけれど、
    ナポレオンがジョゼフィーヌに贈った
    熱烈で官能的なラヴレターが資料篇に
    収録されていたのがうれしかった。

    民衆の自由と平等に奔走し、
    民法を編纂し、フランスの栄華を望み、
    短い生涯を激しいうねりのような栄光と挫折で
    彩ったナポレオン。

    フランスを追われ、孤島での最期に望んだ
    「セーヌ河のほとりでフランス国民に
    囲まれて眠りたい」との願いが切なかった。
    ナポレオンをっと知りたいと思えた1冊でした。

  • 恥ずかしながら、世界史に不案内です。
    (色々と理由は推察されますが、子供時分に激しく転校し過ぎたせいで、学校の教室の授業に全く興味も関心も持てず、学校教育の場で学問をする、ということがほぼ皆無だった、ということと、「マンガ世界の歴史」みたいなものに熱くなったことがついぞ無かったから。…かなあ、と思っています。)

    そうなんですが、今回せっかくの機会(長期休暇)に恵まれたので、何十年も手を出しかけては手に取らないまま過ごしてきた「戦争と平和」を読んでみることにしました。
    (NHKテレビでイギリス制作のドラマも放送していて録画しているので。英語でしゃべりロシア人たちが、「僕たちはロシア人なのにフランス語ばかりしゃべっています!」と、英語で絶叫する、という。これはこれで日本人から見たらヨーロッパという混沌の縮図を見るような快感…)

    なンですが、ふと考えて。
    19世紀初頭のロシア、ロマノフ王朝っていうのは、「ドストエフスキーの小説世界とほぼ同じかな」と思えば想像がつくのですが。
    (例えば「罪と罰」は1866年当時の現代劇です)
    「戦争と平和」は、1814年のナポレオン軍vs.ロシア軍の戦いが描かれているはずなんですね。

    と、言うわけで。
    「戦争と平和」を楽しむための助走として、ブックオフで衝動買いした1冊。
    なんですが、これ、なかなかの良書でした。

    ナポレオンさん、についても、恐らく30年以上前の「マンガ 世界の偉人伝」レベルしか知らなかったのですが、豊富な図解のお陰でするすると読めますし、細かいことは省いてくれるので、なんとなくその頃の全体俯瞰図をまず楽しめます。
    (それが「正しい」のかどうかは、知りませんけど)

    ●ナポレオンさんは、コルシカ島の弁護士さんの一家の息子さん。コルシカ島では恐らく有力者一族だったはずなので、「ほんとの貧民出身」ではないんですね。

    ●コルシカ島はコルス島とも呼ばれていて、その後、マフィアを排出したことでも有名ですね。つまりは、フランスとイタリアの間で常に争われた土地。どうやら、住民さんの意識としては、「イタリア人なのにフランスに支配されちゃってるぜ」というルサンチマンのほうが大きいのでは。マフィアという言葉も「すべてのフランス人に死を!」みたいなイタリア語の文章の頭文字を並べると、マフィアになる、という話を聞いたことがあります。

    ●ナポレオンさんも、コルシカ島の人として、フランスを憎む気持ちもあったんですね。なんだけど、お父さんが独立運動からフランス側に寝返って、お陰でフランス王朝の下士官養成学校に入り、パリで軍人として学んで、10代で砲兵下士官になったそうです。

    ●1789年にフランス革命が始まります。フランス革命っていうのはいったいなんだったのか、何があったのか、というのもいずれ詳しく知りたいなあ、と思うんですが、つまりは1789年から、ナポレオンさんがフランス前後の実権を握るまでは、ジャコバン党やら王政復古希望者やら、入り乱れての混乱だったんですね。

    ●その混乱の間は、「王政が倒された」ことに驚いた周辺の王国(ドイツとかスペインとかイタリアとかイギリスとか、全部ですね)からの干渉や戦争もずっと行われていました。それに、内戦。

    ●20歳でフランス革命時代に突入したナポレオンさんは、天才的な戦闘指揮官として、「混乱する革命政府」にとって、大切なコマになるわけです。

    ●あと、明治維新とかと似ていますが、そういう混乱の戦乱の時代だったので、恐らく年功序列とか飛び越えて、ナポレオンさんは大出世します。

    ●次々実権者が代わり、追い落とされ、陰謀と暗殺が渦巻くなかで、ナポレオンさんはパリを離れてイタリアとの戦いやエジプト遠征とかで名声を博します。そして、その中で勝手に征服地で政治家として治世したりもします。このあたり、きっと、秩序ある世の中だったら、即刻逮捕レベルのわがまま勝手。なんだけど、上手くこなして、その上莫大な財宝財産を握ってしまって、それを、うまくパリにいる自分の保護者的な権力者に貢いだりするわけです。
     誰からも咎められず、出世します。そして、人気も出ます。

    ●で、兄弟などと連携して陰謀術数の末に、30歳くらいでパリに戻り、ほぼ実権を握ります。
     当時の複数の権力者の1人に取り入って、政敵を追い落とし、自分も連名で政権を握り、その後に相棒も追い落としてしまう、みたいな。
     このあたりは、ヒトラーの総統への道のりと同じくらい、悪漢出世物語としてわくわくしますね。

    ●なんだかんだ、実権を握ります。そして、イギリス、ドイツ、ロシア、イタリア、オーストリアなどとの戦争でも、ほぼほぼ勝利を収めます。

    ●そして、同時に彼は、優れた内政家でもあり。王政の頃とは違う、民衆市民階級の自由と平等、経済の自由化、工業化の推進、などなどについて、法整備を行います。パリの都市整備も行います。このあたり、実は21世紀現在までいたる、フランスの、というか、民主資本主義国家の決まりごとの基礎がここで作られいてるそうです。
    作者(フランスの歴史学者なんですかね)は、「晩年はまあ、たしかに一族優先専制君主独裁って言われてもその通りな部分も多かったけど、全般的に「フランス革命の精神」を国家という仕組みに落とし込んだ、という功績はある。そして、王侯貴族出身ではなかったからか、最前線の軍人出身だからか、理想主義、精神主義、教条主義、権威主義、懐古趣味が一切なく。民衆のニーズに答えるという意味では徹底したリアリストだった」というのようなことを書いています。

    ●で、結局は宿敵はイギリスだったんですね。18世紀までの、植民地争いでフランスはイギリスに敗れていて。そこからの因縁なんでしょうが。大陸を制しても、どうやってもイギリスの海軍に阻まれて。イギリスは大陸の反ナポレオン勢力のスポンサーとなっていく。商品、関税、流通みたいな経済戦争の側面もある。

    ●ナポレオン自身が戦場に行けば、ほぼ無敗。凄いのは、負けてもさっさと撤退して傷を最小限に留める。リアリスト。
     民衆の人気も得て皇帝に即位。ほぼ全欧州を勢力下に収めるのだけど。戦線が広がりすぎて、ナポレオン自身が行かない現場から、ほころびが出始める。

    ●スペイン侵略は、イギリスの後押しを受けたスペイン軍、そしてゲリラ戦術の前に苦戦。
     この辺面白いのは、自由と平等、という思想と別に、全欧州に広がるナポレオン勢力に対して、「おらが村、おらが国」という民族的反発もあったようですね。

    ●オスマン帝国、プロイセン、そしてロシアという、東側の外交経済戦略では。どうやらナポレオンさんは、現在のポーランドに傀儡王国を作って、そこから勢力を伸ばしていこうとしたようなんですが、オスマンとロシアとの外交でどっちにも良い顔しようとして、糞づまったようですね。ロシアと開戦。焦土作戦、冬将軍の前に、初めての壊滅的敗戦。
    ※ここンところが「戦争と平和」のはず。

    ●そこから一気に各方面から押し込まれ、連合国に降伏。ここらあたりのパワーバランスがわからないんですが、処刑されずに。
    エルバ島、という、コルシカ島のとなりの、「村」レベルの孤島の領主となって、去ります。

    ●でも、連合国の肝いりで再開したブルボン王朝は、不人気で大混乱。1年もしないうちに、「俺、またイケるんじゃなね?」ということで、フランスに再上陸。
     このあたり、詳しく知れば極めて面白そうなんですが、
    「南仏に少人数で上陸して、一発の銃も撃たずに全フランスに熱狂的に迎えられて、パリまでイッキに入城してしまった」
     なんだかすごいですねえ。
     ブルボン王朝の人たちは、さっさと逃げちゃったそうです。

    ●なんだけど、すぐに、イギリス=プロイセン連合軍と、今のベルギーのワーテルローで戦って、敗戦。降伏。
     で、今度は西アフリカ横のイギリス領、セント=ヘレナ島に島流し。そこで、自伝を口述筆記して、51歳くらいで病死したそうです。

    ●当時のフランスの爆発的な人口増加が背景にある、という指摘とか。結局、保守欧州連合に敗れたんだけど、ナポレオンが欧州全土に輸出したフランス革命の精神っていうのは、ナポレオンが去っても各地に残り、その後の歴史を作った、という話とか。
     ナポレオンという個人の物語も面白いけど、大きな歴史の流れの中での位置づけ、という視点もあって、面白かった。

    ●産業革命がイギリスから完全にやってくる前のナポレオン時代の大陸側の産業経済ってどうなってたのかなあ、とか。
    ナポレオン三世ってどういう台頭をしたのかなあ、とか。色々興味が湧きました。

    ●この創元社のシリーズは、読みやすいなあ、と思いました。挿絵、図解、などが豊富で、ビジュアルに内容が頭に入ってきます。こういうのは、電子書籍だと駄目なんですよね。やっぱり紙の本っていうのも、絶対なくなることはないと思いました。

  • fra フランス

  • 理代子先生の「栄光のナポレオン」用副読本のつもりで購入したけど、マンガの方が詳しくて内容を補完してくれなかった。
    と、はじめは感じたけど補完してくれる面もあります。戦術に関しては「栄光のナポレオンの方が詳しいけど、政治面に関してはこちらの方が少しだけ詳しく書いてあります。
    巻末のナポレオンがジョゼフィーヌに宛てた手紙の抜粋や、ナポレオンに関わりのあった人の書いた回想などが記載されていて、英雄の人となりを垣間見ることができた。
    文字よりも図版が多い本。

  • 2011年6月19日 読書会
    テーマ:ナポレオン

  • 部長選

  • イギリスが対応をマズってたら大陸封鎖は成功したって初耳。しかしナポレオン研究所なんてあるんだ(まぁあるんだろう)。著者は研究所理事。でも特にホメてない。つかず離れずで、人物像を掘り下げるのではなく政治的な現象とその物体を観察しましたって感じ。シリーズの趣旨かな。

  • ナポレオンの生涯を簡潔なまとめ。 、
    視覚的に当時の様子を知りたいとか華やかな写真を
    見るには十分だと思う。
    詳しいことが知りたければ別の本を・・・

  • ナポレオンは宗教の自由を尊重する自らの姿勢を示すために、カトリックと教義の異なるプロテスタントやユダヤ教も信仰の自由を認めた。

  • ナポレオンの一生が偏ることなく書かれています。図版も多いので、楽しみながら読むことができます。けど、あまりにあっさりしすぎているせいか、ナポレオンの魅力などは感じられず、さらに他の本も読んでみようという気にさせられなかったのは残念。それにしてもナポレオンってほんとにずんぐりむっくりですね。

全13件中 1 - 10件を表示

遠藤ゆかりの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×