取材・執筆・推敲 書く人の教科書

著者 :
  • ダイヤモンド社
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感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478112748

感想・レビュー・書評

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  • 『#取材・執筆・推敲 書く人の教科書』

    ほぼ日書評 Day397

    古典的名著以外で、初めて☆5つ(ブクログ評価)を付けたくなった一冊。
    映画監督の黒澤明は、もともと絵描きを目指していたが、自分にはその才がないと悟ったきっかけは、素人目には上手い絵が、すぐ描けてしまうこと。本当の絵描きには、自分達には見えていないものが見えるから、無限ともいえる時間を掛けて描くしかないのだ。冒頭に紹介されるエピソード、「書くこと」についても全てはここに立ち戻る。

    以下、読み返すためのノート。

    書くことは「読む」ことから始まる。
    良い文章を書きたければ読書せよといった類ではない。「読む」とは、世界を、書いていない時間の全てを、感じ、問を立て、自分の言葉で答えを出すこと。
    『枕草子』でも『徒然草』でも、優れた観察者の目が千年の時を超えて読み継がれる随筆作品を成立させている。★冒頭、「春はあけぼの」などはまさに言い得て妙である。
    インタビューするように本を読む。そこにあるものに目を奪われるのではなく、たとえば素晴らしい文章に出会った時、「なぜこう書いたのか?」だけでなく「なぜこう書かなかったのか?」まで考える。その裏には「自分ならこう書く」という能動的な意思が必要になるから。

    きく、聞く(hear)、聴く(listen)、訊く(ask)を使い分ける。インタビューは、聴く7割、訊く3割。
    相手の話を引き継ぎ、発展させる接続詞のストックを増やそう。例えば「ということは…」。「言い換えると」、「逆に言うと」なども有効。
    取材相手のこと(告知や主張を含む)を是非世の中に伝えたいという思い。最良の反対意見にも網を張り、そうした意見への自分なりの反駁を試みることで取材相手の気持ちになれる。

    「後取材」の重要性、インタビューを終えた後に「わからないこと」を洗い出す作業。ひとは「自分の頭で分かったことしか書けない」ゆえに必須のプロセスだ。
    例えば「私の好きな映画」という取材で、知らない映画が上がったら、その作品を観るのはもちろん、監督や俳優の評伝、さらには公開当時の映画雑誌も取り寄せる。時代の流れという文脈に、その映画を置くことで、取材相手の人生観のようなものも見えてくる★準備に時間をかけるのは当然と考えていたが、こちらの方がより大変な作業だ。

    ライターの機能。1.録音機、2.拡声器、3.翻訳機。
    録音機、語られた言葉を記録する。伝達のために読みやすく記録する機能が必要。
    拡声器、広く伝える。歪みが発生しない程度に音量を上げること。
    翻訳機、話し言葉を書き言葉に変えつつ、正しさと分かりやすさを両立させる。

    日本語に適した論理構造は「起転承結」。世間の常識(起)を、すぐに非常識な自らの主張ないし仮説(転)でひっくり返す。それを裏付ける理由や事実(承)で受け、最後に論証を経た上での結論(結)で結ぶ。

    何を書くか、よりも、何を書かないかの選択が重要。★昔話「桃太郎」を、シークエンスに分割し、最低限10枚の絵だけで「桃太郎ならでは」を表現するエクササイズは、非常にわかりやすい。

    各シークエンスを取りこぼさない「構造の頑強性」とならでは…を成立させる「情報の希少性」が決まったら、これは私のことでは!…と思わせる「話題の鏡面性」を入れ込む。

    第7章、原稿を作る…は、デパート理論でいう「専門店」、すべてが具体的なテクニックゆえ、選択的に拾うことができない。

    第8章、推敲。推敲の本質は「自分への取材」。このときあなた(過去の自分)は何を考えていたのか、なぜこう書いたのか…厳しい問いを容赦なくぶつけていく。書き手として未熟だから推敲が必要なのではない。読者としてすぐれているから、推敲ができるのだ。★プロの文章作りのシビアさが垣間見られる箇所。さらに、巻頭の「読むことから始まる」にしっかり戻っているのも流石。

    自分の文章を客観的に見直すために、書く時だけでなく、推敲段階で主要論点(柱)を箇条書きで書き出す。柱が傾いていたら文章(家)も確固たるものになるはずがない。
    集中して原稿を書いているとき、ライターはそこに没頭する。結果、平時の自分を超える文章が書ける。が、そこには必ず「盛り」と「漏れ」が出ることが避けられない。

    最終章の編集者云々の件、本書で主張される「デパート理論」で言えば、食堂街でも屋上でも無かった気がする。自分の主張を超えられない典型なのか、著者が意図的にそうしたツッコミ所を用意したのか…そんな深読みもしてしまう本であった。

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  • その直球度合いに圧倒された。感想めいたことが何も書けない。これまでいい加減に誤魔化しながらものを書いてきたことを思い知らされた。何度も再読したい。

  • ライター=取材者と定義し
    その哲学や心構えが述べられている。
    概要は実際の講義の様子がYoutubeにあるので、それを見た方がわかりやすい
    https://www.youtube.com/watch?v=5zWy2c8KoAk

    抽象的な内容が多く実践的なものは少ない
    唯一、シーンの取捨選択をする方法を、桃太郎の絵本から行うワーク部分があり役に立つ。

    ”本の価値は情報量ではない。
    情報の鮮度、視認性、複合性、双方向性、検索可能性、いずれにおいても本は、雑誌やウェブメディアにかなわない(中略)
    しかし一方、読み通すのに時間がかかるからこそ、提供可能なものがある。体験だ。”
    本の価値は体験。これがこの本の幹である

  • 『嫌われる勇気』の古賀氏による書籍。教科書というより文章論・ライター論と言えよう。ライター業の本質は「翻訳」にあるとし、いわば函数箱に素材をインプットし読者に興味ある記事をアウトプットすることが生業と語る。そのための姿勢や技法に関してなかなか色濃い主義主張が述べられている。(なので「教科書」のタイトルはミスリード)

    「取材」の質を重んじている点や「執筆」の章にある桃太郎のモンタージュテスト、各章設計の百貨店方式、情報の希少性・構造の頑強性・課題の鏡面性、リズム・レトリック・ストーリーなどなど。視点がユニークかつ実践的で文筆に関する事柄として大いに役に立つ。

  • 中身が無いから書けないのではなく、中身が無いからこそ書けるということ。
    ライターとしての心構えが学べて、手元に置いておく価値がある本だと思えた。
    正に教科書。

  • 「ライターの教科書」をコンセプトに書かれた本
    ライターという立場から解説してあるので、読書術を根本的に変えてしまう可能性も感じる。

    著者が真正面から「ライター」という職業に向き合っているから魂の叫びが聞こえてきているようだ。

    インタビューするように読む
    ①「この人に会ったら何を聞くか」を考えながら読む
    ②書かれたことではなく、書かれなかったことを考える
    ③第三者にどう紹介するか考えながら読む
    ④主人公を入れ換えて読む
    などは まず始めていきたい。

  • プロのライターになる為に必要となる、取材、執筆、推敲について体系化された教科書本。この年から自分がライターになる事はまずないと思うが、興味を感じたので読んでみた。結果、ライターとはこれ程大変な仕事なのかと肌で感じる事が出来た。
    特に推敲については、ここまでやるか?と言うぐらい幾度と無い手直しが求められており、どの分野であってもプロとして生きて行く事の大変さを改めて認識させられた。この本で学んだ厳しさを自分の専門分野でも反映して、更に良い仕事が出来るよう取り入れて行きたい。

  • 書店で手に取った段階で、これは大変な苦行の入口なのではないか?と戦慄した。

    国語辞典並みの厚みと重み。

    しかし、その厚みをも越えようかという学びも得られた。

    ライター育成を主眼とした内容ながら、文章を書くこと全般にとって大切なことが満載。

    良質なアウトプットのためには、質量ともに高いインプットが必要であること。

    インプットを活かすアウトプットを心がけることが難しくも重要であること。

    一旦アウトプットしたモノを厳しい目でチェックする読者としての自分や他者が求められること。

    「書く人の教科書」に偽りなし。

    改めてノートを広げて受講しようと思う。

  • 久しぶりの良書。書くことを仕事にしている人は必読の1冊だ。
    100年先も残る教科書となることは間違いない。
    最初はそんなキャッチコピー大袈裟な、と思ったけど、なぜ100年先も残るのか、根拠がしっかりとあった。
    ライターとはなんと素晴らしい仕事なのだろう。
    何度も、読み返します。

  • ライターとな何なのか、その神髄はどこにあるのか。
    単に文章を上手く書くためのノウハウではなく、モノづくりをお仕事とする人々に向けて、著者がどんなマインドを大切にしてライター業を営んでいるのかを推敲を重ねて書き上げた本になっています。

    p.167
     ぼくは、文章の書き方を学ぶことは、ひとえに「翻訳のしかた」を学ぶことだと思っている。われわれはみな、自分自身の翻訳者でなければならない。そしてライターはみな、「取材したこと」の翻訳者でなければならない。
     すべての文章は翻訳の産物であり、すぐれた書き手はみな、すぐれた翻訳者なのである。
    → IT技術の参考書で読んでいてワクワクするものに滅多にお目にかかれないのは技術がつまらないのでも、著者の技術への踏み込みが足りない訳でもない、著者の翻訳能力や技術を分かりやすく翻訳する努力が他のジャンルの本よりも不足してるんだなと理解できました。翻訳能力を日々向上させることで、どんどんと読み進めたくなる技術書を書きたいです。

    p.111
     本やネット記事を読んでいるとき、広告に触れたとき、誰かの話を聴いているとき。もはや習慣のように、投げかけるべき質問を考えている。
     どうやって質問を考えているのか?どうすれば質問が浮かぶのか?
     ぼくの答えは、接続詞である。
    → たしかに、『「ついやってしまう」体験のつくりかた』で著者の玉樹さんも聴衆の注目を集めるには「疑問のなげかけ」や「接続詞で次につなげる」ことが大切と言ってましたね。今日の打ち合わせに使わせていただきます。

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著者プロフィール

●古賀史健(こが ふみたけ)
 1973年、福岡県生まれ。ライター、株式会社バトンズ代表。『取材・執筆・推敲』『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』ほか著書多数。2014年「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。構成に幡野広志さんの思いをまとめた『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)など。

「2021年 『雨は五分後にやんで 異人と同人Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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