三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.81
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本棚登録 : 4048
感想 : 475
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025777

感想・レビュー・書評

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  • 三島由起夫、いや由紀夫が(笑)、手紙形式というちょっと変わった着想にて、手紙ならではの人間の機微な感情の行き来について物語しています。
    登場人物は、金持ちマダム、色男の中年デザイナー、若き劇団青年、OL、太ったぐうたら青年という感じでこれだけでも、これからのわくわくするような話の展開が期待されます。
    手紙でやり取りする話の内容が割と軽いので手軽に面白く読めてしまいますが、そこは三島由紀夫なりのそれぞれの心理描写が楽しくて、なかなかじっくりと読ませてくれましたね。
    特に金持ちマダムと色男の中年デザイナー、太ったぐうたら青年のキャラが際立っていて、終始にやにやしながら読了しました。
    群ようこの解説にもある通り、それぞれの年代に即した感情移入ができるようにもなっていると思われ、十年二十年後に読み直すと、また違った見方で本書に接することができるほど、軽いなりに味わい深い物語になっていると思います。
    これは手紙ならではの、何回も読み直すという特質を上手く使った筆致になっているからなんでしょうね。
    あと、最後の三島由紀夫からの読者への言葉もなかなか面白いものでした。
    名前を間違えるなというのは当然として、手紙を書く時は相手は自分に関心を持っていないと思って書け、というのは目から鱗が落ちないまでもなるほどそうかなと思わせるものがありました。
    現代では手紙を書く機会が減り、電子メールでやり取りする機会の方が断トツで多くなっていますが、電子メールでも同じことが言えますよね。
    電子メールでは味わいを感じることは少ないですが、私も相手の関心を引くような書き方を心がけたいと思います。
    三島由紀夫によれば、相手の関心を得るには、一、大金 二、名誉 三、性欲 四、感情 だそうですが。(笑)

    • やまさん
      mkt99さん、こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      mkt99さん、こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      2019/11/03
    • mkt99さん
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそ、いいね!をありがとうございます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそ、いいね!をありがとうございます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      2019/11/09
  • 面白かった。私は三島作品は、この様なライトなものしか読んだ事が無い。他の文学作品は、敷居が高くて…。

  • 難しいイメージがある三島由紀夫作品の中で、この作品は一番読みやすくて、エンタメ性が溢れている作品だと思います。内容としては、手紙を通じての会話が文章になっていく書簡体小説で、三島らしい毒とユーモアがクセになる一作になります。初心者にオススメだと思います。

  • 手紙へのこだわり、手紙の性質、手紙の恐ろしさがわかるエンタメ小説。
    今では体験できない、やり取りにおける言葉の熟成期間を持ったシンプルなコミュニケーションは言葉の貴重さを際立たせた

  • 5人の男女のあいだでやり取りされた手紙で進む本書、とにかく書き手の人間性が丸見えでおもしろい!
    なんせ5人が5人とも曲者ぞろい。
    筆まめな彼らのペンが生み出す文章と、移ろう人間関係に、にんまり笑いが止まりませんでした。

    手紙は「キチンと封をされた紙の密室」。
    ラブレターに脅迫状、借金の申込みに肉体関係を求める手紙まで、こんなことも書いちゃうのか、と驚くような内容の手紙が飛び交います。
    他人同士の手紙だから笑って読んでいられるけれど、当事者にはなりたくないな~とも思ったり。
    でもここまで自分の感情や思惑を文字で表現できる文章力には憧れます。

    最後に添えられた作者から読者への手紙も奮っています。
    三島が女性からのファンレターをばっさり切って捨てる痛快さがたまりません。
    けらけら笑いたいとき、ブラックユーモアににんまりしたいときに読み返したい1冊です。

  • ▼手紙を書くときには、相手はまったくこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません。これがいちばん大切なところです。
     世の中を知る、ということは、他人は決して他人に深い関心を持ちえない、もし持ち得るとすれば自分の利害にからんだ時だけだ、というニガいニガい哲学を、腹の底からよく知ることです。
     世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。(本文から)
    ▼「三島由紀夫のレター教室」三島由紀夫。ちくま文庫、221頁。サクッと読めます。2020年2月読了。初出1966年。ウディ・アレンの良くできた恋愛コメディを観た気分。軽いだけに見えて、人生と恋愛への皮肉と諧謔に満ち。ヒトの愚かさに肩をすくめる感じと、そんな愚かさが愛おしい感じ。
    ▼「女性自身」に連載した小説。編集者もちゃんと役割を果たしたのか、三島さんの小説の中でもおそらくかなり柔らかく、読み易い。で、十分に面白かった。うまいなー。職人というか娯楽に徹しているのか、かなり、マトモです。ヘンタイな感じが薄かった。普通のも、書けるんやんか。
    ▼5人の、手紙のやり取りが、小説になっています。
    ①40代の未亡人、英会話塾経営者
    ②40代の衣服デザイナー、既婚だが、①のボーイフレンド
    ③20代の会社員女子(①の元生徒)
    ④20代の演劇青年(②の知人)
    ⑤30代の暢気なTvばかり見てる男(③の従兄弟)
    最後には、ここから二組のカップルが出来上がります。かなり笑えます。あははと笑ってると、まさにエスプリの効いた名台詞にうなります。
    ▼実は現代性が高い。さすが、ちくま文庫。
    メールやSNSが手紙の一種だとすれば、有史以来日本人が(世界中も)これほど手紙を書いている時代はありません。テレビ漬けな男は、ネットやゲームの中毒にも似ています。会ったり電話するよりも手紙を選ぶコミュニケーションは、生ではない活字依存と考えれば、今風ですね。
    ▼しかし、三島、キレ者だなあ、と、改めて。まだまだ読んでない本がいっぱい。楽しみです。
    ▼そして、この本には「男が好きな男」が、出てきません。同性愛が出てこない。三島なのに。
    ▼同性愛者である男性は、女性に冷徹かつシビアかつ洞察的で無駄な優しさの無い助言をできるという、「ベスト・フレンズ・ウェディング」などでパターン化された【イイ男、ゲイ、女の友達】というのが、なんとなく当てはまる気が(三島さんが)。

    /////////以下全て本文より///////

    ▼だれでも、自分と全く同じ種類の人間を愛することはできませんものね。

    ▼*英語の手紙について
    1.手紙はなるべくなら、I(アイ)ではじまらぬようにすることです。
    2.物喜びをなさい。
    3.日常の些事をユーモアを混ぜて入れなさい。
    4.文法や構文に凝るよりも、形容詞に凝りなさい。
    5.ときどきちょっと文法や綴(スペリング)をまちがえなさい。
    6.英語の手紙ということを忘れて書きなさい。
    返事はなるたけすぐ出すように。私は世界中で、日本人ほど筆不精な国民はないのではないかと思います。

    ▼大ていの女は、年をとり、魅力を失えば失うほど、相手への思いやりや賛美を忘れ、しゃにむに自分を売りこもうとして失敗するのです。

    ▼恋愛というものは『若さ』と『バカさ』をあわせもった年齢の特技で、『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれません

    ▼なぜ断られるか?それは彼女にやさしさと自信との平和な結合がないからです。女の真の魅力は、その二つのものの平和で自然な結合以外にはないのですからね。彼女の心のアンバランスを、男性は一目で見抜いてしまうのです。

  • 性別も年齢も職業も異なる、筆まめな5人がおくる書簡体小説。

    デートのお誘い、金銭の依頼、恋愛相談、お見舞い状、果ては悪口や裏切り絶縁まで悲喜交々、様々なやりとりが手紙上で行われます。連作小説のように、読み進めていけばいくほどそれぞれの気持ちや思惑が複雑に絡み合い、「まったく人間ってやつは…」と妙な悟りと愛着を感じます。氷ママ子女史と山トビ夫氏のやりとりには終始にやにやとさせられました。トビ夫氏の株が後半に向けて急上昇したのは私だけではないはず。
    一回のやりとりに時間を掛け、内容も熟考でき(時として殴り書く場面もあるようですが笑)、相手の顔を思い浮かべながら一文字一文字を綴る手紙、そして文面からこうも隠しきれない個性が光ってしまう手紙というツールに改めて魅力を感じます。
    三島由紀夫の魅力再発見!ユーモアに富んだ愉快な作品でした。

  • れっきとした小説。

    男女5人の手紙のやりとりだけでストーリーが展開していくという変わった小説だが、構成がマジで巧み!!!!!!!

    登場人物の名前も「炎タケル」「氷ママ子」などとかなりユニークだし、各章のタイトルも「借金の申し込み」「処女でないことを打ち明ける手紙」など、最初パラパラと本を捲っただけでは、なんじゃこりゃと言いたくなる本だ。

    が、少ない情報量や話しかけるような手紙の何気ない一文によって、登場人物たちの性格や人生、ストーリーの上での感情の動きなどを明らかにしていく作者のセンスが光る。

    皮肉とユーモアたっぷりの独特な世界観の中で、どこかコミカルなテンポで進んで行く文章の中にも、人生の悲哀のようなものが感じられる。

    あまり力を入れずに読むことができる。三島由紀夫は苦手という人にもおすすめ。

    最後のほうはストーリーの流れに読み込まれてしまって、私は三重県鈴鹿市のローカル線で乗り過ごしてしまいました。

  • 前職で一緒だった人と久しぶりに再会し、
    夕食を楽しみました。
    そのときにおすすめしていただいた一冊。

    近代文学とかあんまり得意でない、
    (国文学出身のわりに。笑)
    という気持ちがあったため、
    読めるかどうか不安でしたが、
    手に取りました。

    面白い!そして読める!
    私、三島さんの言葉読めてる!!笑
    …が最初の感想でした。笑

    登場人物たちがそれぞれとの手紙のやり取りをして
    展開していくのですが。

    みんなクセが強い。笑
    そして策略家とうか、したたか。笑

    人間味があって、ずるいところがあって、
    途中からはミステリーのような謎解きのような気配もあり、
    とにかく一瞬で読み切りました。

    最初は登場人物も覚えられるか不安だったのに、
    「あいつからあいつへの手紙か…」とか思いながら読めてる自分に驚きでした。笑

    メール、SNSではなくて、手紙。
    あっち行ったり、こっち行ったりする手紙。

    次は、普通の小説にもチャレンジしてみたいと思います。

  • 昔の人だからもっと固い感じを覚悟してたけど、びっくりするくらいユーモアに溢れた一冊。

    タイトルに偽りなしというか、「レター教室」と言うだけあって現実に応用できそうなテクニックみたいなものがちらほら。
    とくに「英文の手紙を書くコツ」は「自分本位で文章を構成するな」とか、「文法や構文ばかりに拘るな」とか、実は日本語にも通ずることが多い気がして、学びが多い。

    物語的にはなんやかんやで2カップル出来上がったけど、1人残った丸トラ一の「他人の幸福なんて、絶対だれにもわかりっこないのですから。」って終わり方がいい。

著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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