とりかえばや物語 (ちくま文庫 な 12-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025975

感想・レビュー・書評

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  • 「とりかえっこもの」と聞いて興味はあったんですが、平安時代の話ということで、なんだか難しそうでなかなか手が出せずにいました。
    でも、最近、読んでみる気になって、1ヶ月くらいかけて読みましたよ。

    「女装と男装」ということで、歌舞伎の女形とか宝塚の男役みたいなイメージが浮かんできて、果ては兄妹以外のキャラまで歌舞伎役者とタカラジェンヌのイメージで読み進めておりました……。
    読みながら、歌舞伎っぽい話し方や宝塚歌劇っぽい話し方に勝手に脳内変換w

    ストーリーが進むにつれてキャラクターの呼び名も変わってくるので、その都度メモしながら読み進めないと分かりにくかったり、平安京の内部の名称とか役職とか、馴染みのない単語が多かったりで、むずかしかったですが……
    慣れてくると、ストーリーが入ってきて、おもしろかったですよ。
    今度読み返すとき、2回目、3回目は、もっと楽しめるんじゃないかなあと思います!

  • 『少女たちの19世紀』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4000259423で読みたくなった双子いれかわりもの。
    筋はおおむね知っていたので、「結局シスジェンダーヘテロ枠に押し込められちゃう話」というイメージを持っていた。
    が、思っていたより柔軟で面白かった。

    感情の表現が豊かで…というか完全に感情の小説で、千年前の価値観なのに理解や共感が及ぶ。
    涙する理由を次々につくっていくのは余裕のある暮らしの産物か。
    泣いたり嘆いたり悲しんだりするばかりで刃傷沙汰も権力争いもないってのはある意味平和なことだ。
    世界とか信念とか正義とか忠義とか、大きい正しい話はしない。
    徹頭徹尾アイデンティティや恋に思い悩んでいるから、下らなさに救われる。


    男のクズっぷりに気づいていてもズルズル続いちゃったり、家にこもってただ男を待つ日々に暗澹たる思いを抱える女性の気持ち。
    本人たちの意思のみによる逆転と、なんで普通じゃないんだと思いつつ、泣くだけで無理やり髪を切ったり服を着せたりはしない父親。
    子供のころはただ好きなようにふるまっていたけれど成長につれて自分が普通でないことに悩みだしたり、世の中に生きていたくないと思うセクマイの気持ち。
    気づいていても特に取り沙汰さない周囲の人たち。
    セックスレス夫婦のすれ違い。
    あの女はこうでこの女はこうでと品定めを散々した後で、そういう自分をちょっと恥じる男性。
    男だと思いこんだまま友人を口説く節操なしの男。(解説では女だと気づいて襲うとあるけれど、本分では襲って初めて気づいたことになっている)
    こういうものを古典の中に見つけるとは思いよらなかった。新鮮。

    三人称はその時々で変わる。
    生まれた時は姫君、男装になったら若君、参内したら侍従、出世して中納言…
    たまにこれ誰だっけ?となるけれど、今のその人を受け容れるようでいいなあと思った。
    これはぜひ「彼」や「彼女」を三人称にする言語の国の人に感想を聞きたい。

    みんなすんごい泣いてるんだけど、泣きすぎて涙の価値が軽くなっているような逆説的な軽さが面白い。
    このごろの癖でぼろぼろと涙を落として――とか、「あなたが恋しくて死んでしまいそうです」「誰にでもそれ言ってますよね、あなたは長生きしますよ」とか、しょうもなさすぎ。

    男どもは最低なんだけど、個々の男の性格や生理現象ではなく「男ジェンダー」ゆえであるところが面白い。
    娘も息子も男モードと女モードで性格が変わっている。
    宰相はもう…こうも突き抜けてると嫌うより前に笑ってしまう。

    結局「ただしい」男女の型に戻してしまう話ではあるけれど、女は男に従う形のシスジェンダーヘテロだけが正しいのです!という話には見えない。
    ストーリーは決着するけれどそれぞれの悩みに正しい決着をつけてしまわないから、時代を超えて読めるんだろうな。


    解説はなんか色々難しいことを言っている。
    わかる気がするところもあるし、自分の感情を投影しているだけにも見える。
    あらすじだけ読むとこんな感じだけど実はこうなんだよと語るためにあらすじを捻じ曲げるような書き方は嫌いだ。
    今度対訳で読みたい。

    表紙の絵はあまり好きじゃない。

  • 今度の土曜日にカムヰヤッセンさんの「新説とりかへばや物語」というお芝居があるので予習のために読んでみた。

    それに、むかし河合隼雄さんに傾倒していた頃、ちらと河合隼雄さんがとりかへばや物語に触れられるのを読んだことがあって「とりかへばや、男と女」とい本も書かれているということを知っていたのでこの機会に思い切って読んでみようと思った次第である。

    はっきりいって面白い。手頃な長さで、筋が突飛でいながら巧妙に男女の心の機微を描き出している。男の浮気さや女の複雑な思いやらが簡潔かつ精妙に綴られていて、非常に趣深かった。

    それにしても平安時代の宮中はまさしく身体性を覆い隠した「脳化社会」だったのだなぁ~としみじみ感慨深かった。

    Mahalo

  • 男女取替えの物語。
    平安時代にも、この「ネタ」はあったのかと思うと驚き。

    本当は姫君なのに男の格好をして出仕したり、
    本当は男君なのに姫君の格好をして出仕する。
    最後には双方あるべき姿にもどってめでたしめでたし、のお話です。

    一夫多妻制のこの時代、いろいろなところに女の人をつくるのは
    男として当たり前。
    そんな男の人を思って、夜な夜な涙を流している女性たちのことを思うと、
    あはれと思いますよ。


    女として出仕していた男君。
    そこで男としての自分に目覚めて
    つかえていた女東宮に手を出し妊娠させたのに、
    「そんなでもないんだよね」とあっさり他の女を正妻として迎えてしまう男君。
    ひどすぎる。

    中学生のときに、氷室冴子さんが書いた「新釈 とりかえばや物語」を読みました。
    元ネタのとの違いを知りたくて本書を読んだのでした。

  • 非常に興味深い作品です。

    是非、原書を見てみたい1冊です。

  • 元祖?男女逆転と申しますか、男性的な姫君と女性的な若君をとりかえて育てるといった内容。王朝末期の文学でここまでしっかり出来上がっているのはすごいと思う

  • 2002年3月17日読了。
    2021年11月24日再読。

  • 途中までは面白かったけど、右大将が妊娠した辺りから読む気が失せた…

  • 久しぶりの再読。
    一女一男の子育て真っ最中に河合隼雄『とりかえばや男と女』を読む。元になった物語も読みたいと、手頃感のある現代語訳を手に取った。シンプルな訳文なので、読み手の想像力でかなり補わないといけない。

  • 大学受験期にやたらと古典の問題に出てきて、ずっと気になっていたので(笑)現代語訳で、わりと読みやすかった。

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著者プロフィール

中村真一郎(なかむら・しんいちろう)1918年、東京生まれ。東大仏文科卒。42年、福永武彦、加藤周一らと「マチネ・ポエティク」を結成し、47年、『1946文学的考察』を刊行する一方、『死の影の下に』で戦後派作家として認められる。以後、小説、詩、評論、戯曲、翻訳と多分野で活躍。王朝物語、江戸漢詩にも造詣が深い。作品に『回転木馬』、『空中庭園』、『孤独』、『四季』四部作、『頼山陽とその時代』、『蠣崎波響の生涯』他多数がある。

「2019年 『この百年の小説 人生と文学と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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