「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか (ちくま新書 1168)
- 筑摩書房 (2016年2月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480068835
感想・レビュー・書評
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反戦と脱原発を主張するリベラル派の運動が、現実の日本の政治を動かす力となりえない理由について語っている本です。
インタヴューに著者がこたえるという形式で書かれており、呉智英譲りの露悪趣味と痛烈な皮肉が利いていて、おもしろく読むことができました。もっとも、こうした冷笑家気取りの語り口が気に入らないというひとには、とことん気に入らない本なのだろうと思いますが。
おもしろいことはおもしろいのですが、毒が利きすぎて薬にしたくともできないというほかありません。この点は封建主義者だと主張する呉智英と同様で、「命より大事なものはない」ということばが現実を遊離した観念にすぎないというのはまさしくその通りだとしても、これまであった建物を全部取っ払って更地に寝そべってみせただけではないかという気もします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会
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著者の、在野の学者さん的な悪い意味で独自かつ極端な方法論の提示は、あまり参考にならなかった。市民運動の現実を見ずに理屈が先走る傾向も、あまりいただけない。
他方で、なぜリベラルが勝てないのかという分析は、とてもわかりやすかった。そして、そういった分析こそリベラルに欠けているものだと、しみじみと感じた。 -
ごもっともかなと思ったり。
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痛快すぎる。
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反戦・脱原発リベラルが安倍政権に勝てない理由。1)デモだけでは何も結果に繋がらない。また、結果に繋がる決定的なカードを何も持っていない。2)安保法案の阻止や脱原発といった本来の目的と、手段(デモ)が転倒している。仲間内でデモやるだけで自己満足している。3)そのアピールが安倍政権へ投票している層に対して納得させるリアリティに乏しい。自民党に投票する人たちは「意見」は持たないが、それなりの大人の「立場」があるのだそうだ(口利きとか)。
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『ニセ学生』以来の浅羽通明。こんな人だったっけ?というのが第一印象。対談本というかインタビュー本で論説にまとまりがなく議論も浅い。勝てない理由は勝てなくても満足しているからというトートロジー的な批判ばかりになっている。「デモ自体に意味が無いとは言わないが、今の自己満足的デモじゃ勝てませんよ。ちゃんと分析しないと。理想主義に走らず、もっと現実を見なさい」というのが言いたい事のようで、具体な解決策の提示は殆どない。批判はそれなりに正しいのだが、脱線しながら同じ事を何度も繰り返して話しているだけで、酔っ払いの居酒屋談義的。これは編集の問題か。ただし、「組織を嫌うワガママがリベラルを勝てなくする」「デモよりストを」というのは傾聴に値するかな。
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批判ばかりで面白みのない本。結局何を言いたいのだろうか。
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リベラルが安倍政権に勝てない理由
・決定的なカードを何も持っていない
実力には実力を伴う行動によってしか倒せない
・現実な生活の危機こそがはるかなリアルで優先すると言うことが分かっていない。
力がなかったらぶつくさ文句を言っても仕方がないということか。 -
効果測定や事後検証の必要性、翻って政策目的達成のための戦略・戦術立案の必要性、サラリーマンや実務家社会人を巻き込む必要性は完全に同意できる。
しかし、リベラリストが共有している、言論の自由が失われ始めていること、その結果、民主主義が機能不全に陥っていることの現状認識を(敢えて?)無視して、その主張・論証に反論せずに人身攻撃論法を多用している点がとても下品で、読んでいて嫌になる。もともと著者は民主主義にも懐疑的な立場らしいので、リベラリストの危機感を共有できないのは致し方ないのかもしれないが。
著者がどんなに歴史や思想史に詳しくても、個人が自分で考えて行う行動(デモへの参加など)と、個人が思考停止して全体主義的権威からの命令に従った戦時中の竹槍訓練とを同視して、自分の冷笑的態度を正当化する著者のスタンスに、どうしても共感できない。
いわゆる保守とも距離をおく本書にも共感できる人が意外と多いのが、リベラルの難しさなんだろう。