情報生産者になる (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.86
  • (20)
  • (39)
  • (18)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 555
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480071675

作品紹介・あらすじ

問いの立て方、データ収集、分析、アウトプットまで、新たな知を生産し発信するための方法を全部詰め込んだ一冊。学生はもちろん、すべての学びたい人たちへ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『情報生産者になる』上野千鶴子氏

    1.購読動機
    上野さん執筆の記事を通じて、
    ①どんな授業なのか?
    ②どんな思考なのか?
    を知りたかったことからです。
    そして、さらに
    ③情報消費→生産の変化に必要なことは何か学ぶためです。

    2.結論
    ①なぜ情報生産者なのか?
    ずばり、そちらの方が楽しいからと記載あります。
    ②どの分野で目指すのか?
    自己の関心があること。
    情報にリーチできること。
    解決できる、回答に辿りつけること。

    3.最後に
    8割は、論文を書くに関することです。
    しかし、上野氏がタイトルに情報生産者になるを選択したにはわけがあります。
    それは、長年、学生にそのテーマで教えつづけた自負、そして今社会に必要とされるスキルだからです。
    本。比較的に読むほうです。
    こちらの書籍の日本語は『綺麗でした。』
    それは、書き手上野氏が読み手を意識して執筆していることが後書きからも読み取れます。

  • 研究のしかたをきわめて具体的にノウハウ開示してくれている本。すみっコぐらしの中高年でももしかしたら今からでも情報を生産できる人間になれるんじゃないかと、目がひらかれる思い。
    ちゃんと勉強してこなかった自分にとってとてもためになった。

    P009 もはや勉強ではなく学問(学んで問う)ことが必要です。つまり正解のある問いではなく、まだ答えのない問いを立て、自らその問いに答えなければなりません。それが研究(問いを極める)というものです。

    P016 情報とは、システムとシステムの境界に生まれます。複数のシステムに股をかけたり、システムの周辺に位置したりすることは、情報生産性を高めます。

    P022 その分野で何が問われてきてどこまでが明らかにされているかというreview essayは研究の前段階にすぎません。

    P023 情報が相手に伝わらない責任は、もっぱら情報生産者にあります。もし誤解を生むとしたら、その責任も専ら情報生産者にあります。その点で研究という情報生産の特徴は、詩や文学のような多義性を許さない、という点にあります。

    P025 わたしは学問を、伝達可能な知の共有材と定義しています【中略】わたしは研究者を、アーチストよりはアルチザンだと考えています。 

    P037 情報生産者が立てる問いは、第一に答えの出る問いです。(×「人生に生きる意味はあるか?」〇「どんな時に人は生きる意味を感じるか?」)

    P065 批判はいつでも、後から来た者(late comer)の特権だからです。

    P077 「キミの研究の仮説は?」と聞かれてうまく答えられなかったら「仮説生成型です」と答えればよいのです。

    P093 時代区分を60年代、70年代、80年代というように十進法で区分するのは最低です。時代区分には画期となるepoch-making指標indexを用います。

    P102 問題が問題になるのは、現状に満足できない誰かが、それを問題と言い立てるからにほかなりません。ですから問題には必ず「宛先addresse」があります。

    P124 「孤独死」に先立つ「孤立生」は家族のいないシングル男性問題とも言えますが、他人と交わらない、助けを求めないのは彼らの選択でもあるので、当事者が問題とみなさないことに「解決」が必要かどうかはわかりません。そうなれば、「孤独死」はますます「死ぬ側」の問題ではなく、迷惑をかけられる周囲、すなわち死なれる側の問題だ、ということになるでしょう。

    P138 参与観察とは、その場に入り込んで同じような経験をしながら、観察の結果得られたデータをもとに記述する方法を言います。

    P149 研究の時間とエネルギーの配分から言えば、研究計画書からデータ・コレクションまでがほぼ半分、残りの半分は分析と論文執筆に充てる、つまり情報のインプットに1/2、アウトプットに1/2くらいのつもりでいたほうがよいでしょう。

    P136 言語情報には、1)語(Word)2)言説(discourse)3)物語(narative)の3つの次元があります。【中略】言語情報とは言説の集合、それを文脈化して物語を紡ぐのが「論文を書くということだといってもかまいません。なぜなら論文とは言語作品だからです。

    P170 のちに脱文脈化するために、情報をユニットに分解すること。これを情報ユニットの生産と言います。【中略】1時間半から2時間の面接調査で生産される情報ユニット数は100から150、話が弾んで情報量が多いなと思っても200が限度です。

    P193 およそ100から150ユニットの情報処理の結果、得られるグループ数の経験則はなぜだか20から30内に収まります。おそらくそれが、目と手で情報処理する人間の身体的限界なのかもしれません。
    経験則とは面白いもので、なぜそうなるかはよくわからないが、何度やっても結果的にそうなる、という傾向のことを言います。社会学にはインフォーマルグループについての小集団研究がありますが、なぜだかその最大サイズは15人、それを越すと集団は二つに分解する傾向がある、とわかっています。

    P240 研究のアウトプットとは、根拠に基づいて発見を示すことですから、基本は結論先取り、AはBである、なぜならば・・という書き方をします。【中略】論文のコミュニケーション技術とは説得の技術であって、共感の技術ではありません。

    P287 「しろうとにわからないことは、くろうとにもわからない」説明不足や論理の飛躍、過度な一般化などは、どんな読者にも見抜けます。

    P291 内在的コメントと外在的コメントとを区別するのが役に立ちます。【中略】外在的コメントには「あれがない」「これが触れられていない」というものがありますが、いちいちまともに取り合う必要はありません。「あれがない」とは、翻訳すれば「オレの知りたいことが書かれていない」と同義のことが多く、それってあなたの問いでしょ、あなたの問いに私が答える責任はない、と言い放てばそれでよい。裏返しに言えば、コメンテーターとは、まず論者の立てた問いを共有したうえで、その問いの射程の中で、よりよい答えを出すお手伝いをする役割です。

    P297 コメントは、コメントする側と受ける側、両方に立つことが大事です。

    P300 ディフェンス力とは、自分の主張を通すためのスキルです。適切なコメントならありがたく採用したらよいし、そうでなければ反論し、場合によっては突っぱねる・・当たり前のことです。これもまた場数を踏むことによって培われる能力です。

    P361 読者には正統な読者と非正統な読者とがいます。正統な読者とは、その人に充てて読んでもらいたいストライクゾーンど真ん中の読者。非正統な読者とは、直接宛先にしたわけではないがたまたま立ち聞きした読者のことです。正統な読者がどんなに少数派でも、読者の宛先が鮮明に見えているほど、非正統な読者もまた「立ち聞き」から心を動かされる・・書物とはそういうものです。

    P368 無能なあなたもプロデューサーになれます。有能な誰かを使う能力さえあれば。但し自分がほしいまだ見ぬものが何か、がわかっている必要があります。いわば夢を見る能力、それだけでなく夢を形にする能力と言ってもよいでしょうか。

    P370 最後にプロデューサーになることを追加したのは、情報生産者は、同時に自分自身のプロデューサーでもなければならないからです。

    P371 「まだ見ぬもの」とは、もともとその人の中に存在しています。それにかたちを与えてこの世に引き出すのが、教育者の役目です。

  • 必要に迫られて・・。
    論文を書く必要のある方。研究者のための本。
    なのか。

    ①オリジナリティとは何か。
    今までにどんな問いが出て、
    どんな答えが出たのかを知っていなければ、
    オリジナリティは出せない。
    そりゃそうだ。

    ②論文は結論先行型で。

    ③引用の仕方。
    他人の考えと自分の考えを区別し、
    その違いが分かるような書き方をする。
    すごい人のすごい論文なんか(先行研究のため)
    見ちゃうと、その文体などが乗り移っちゃう
    っていうの、分かるなあ。
    太宰治が好きで、太宰治みたいな
    文体になっちゃう、っていうのと
    同じかな。
    でも、論文においては
    文体がにているというだけで、
    考えや研究していることが違うのであるならば
    そこはよし、の範囲なのだろうか。
    よし、の範囲であってほしい。
    じゃないと全部借り物になってしまうではないか。

    音楽や小説など、芸術的なことは難しいよね。
    線引きできない。
    ミスチルが好きだったら、どうしたって
    作ったものもミスチルっぽくなっちゃいそうだもん。
    ああいう分野で新しいものを作っていく
    オリジナリティを出していく方々は
    本当にすごいと思う。

    論文は
    9割借り物
    1割オリジナル
    でよいといった人もいるそうだ。
    まあ、ほんのちょっと変えるだけでも、
    十分に研究としては通用すると思う、
    そのオリジナルな部分が
    本当にオリジナルでなければならないのだろうが。
    借り物、を自分の中で
    どこまで消化するかも
    大事だな。

  • 大学教育の場での論文の書き方や、そのトピックを如何にして抽出するか。論文発表の場でのプレゼンの仕方までを網羅する。

    論文のトピックを選ぶときに、漠然としたもの曖昧としたものを選んではいけない。より具体的で、前例のないものが良いと言う。確かに、日本人や日本史、江戸なんていうタイトルは範囲も広いし、自分よりも優れた先行者が何人もいるかもしれない。

    一次情報に従った論文や根拠は、仕事でも大切だと思う。勿論、メタ情報や二次情報も立場によっては、どうしても取り組まなければならない課題があったなら必用になるだろう。それでも、一次情報に依るところは大いにあると思う。

    新しい付加価値を作り出していくって、大変だけどやりがいがあるのだろうと思う。著書のゼミは大変そうですが。

  • 研究論文を書く人たちを主対象としているのはすぐに分かったが、いやきっとそれだけではないに違いないと手にしてみたら、その通り。上野ゼミでビシバシしごかれている疑似体験をしつつ、これは研究論文以外にも応用がきくだろうなと頷くところがあちこちに。これは仕事にも使える!と書くのが多分まっとうな社会人のやることなんだろうが、仕事以外のことへの応用ばかり思いついてしまう。我ながらまっとうだな、とひとりごつ年末。

  • 同著 サヨナラ、学校化社会 (ちくま文庫) を読んだのがきっかけです。
    私は専門学校でソフトウェア開発関連の勉強をしていました。
    大学の様に研究をした経験が少ないので、この本を教本にさせてもらいたくて読みました。

    サヨナラ、学校化社会 (ちくま文庫)では、著者の上野さんが実際に大学で講義した流れをそのまま解説してくださっていて、いいなぁ〜私も同じ様な講義を受けてみたいな〜と感じて、この本を読めて嬉しかったです。

    図書館で借りて読んだのですが、買って手元に置いておきたいですね。
    マグカップの横に置いておきたいぐらいです。

    P281
    誰が宛先か?

    心にグッと来た章でした。
    私はWebで文章を書いています。
    誰に読んで欲しいのか、誰に宛てて書いているのか?が定まらないまま、自分が調べたことを書き並べている時に文体も構成もぐちゃぐちゃになることが悩みのタネでした。

    20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)
    古賀史健
    →10年前の自分に向けて書くか、たった一人の特定の人に向けて書く。

    いますぐ書け、の文章法 (ちくま新書)
    堀井憲一郎
    →基本は相手の身になって書け。

    こちらも参考になりました。

    上野さんは”自分の理解者でもあり、もっともきびしい批判者でもある読み手を想定しましょう”と書かれていて、妙に腑に落ちました。

    そっか!
    こちらの想いや意図を受け取ってくれる優しさがあって、批判で応援してくれる。
    そういうイメージを持ちながら書けたら嬉しい気持ちがする!確かにそんな気持ちで書ける!

  • 具体的な方法論の部分はカスタマイズする必要はあるけれど、基礎ゼミや特別研究(卒論)の導入時に使うといいかも。

  • 上野さんは、喰わず嫌いでしたので、読んでみて、とても理論的でわかりやすかった

  • フィールド調査をして論文を書く作法。創作意欲がわく一冊です。

  • 【メモ】
    情報の消費者より生産者のほうがえらい!なぜなら生産者はいつでも消費者に回ることができるが、逆はできない。
    どんなにつたないものでもいいので、オリジナルな情報生産者になること。

    情報はノイズから生まれる
    ノイズとは違和感、こだわり、疑問、ひっかかりのこと

    自分が当たり前だと思ってなんの疑問も抱かない環境ではノイズは発生しない(社会学用語で#自明性)
    自分から距離が遠すぎて受信しないこともある(認知的不協和)

    先行研究をフォローするときに気を付けてけること
    (1)単行本ばかりを追うな。本になるまでに情報が古くなっていること多い。新鮮な情報は雑誌や専門誌のほうが多い。
    (2)専門分野だけしらべない。学際的でなく超域的に。予想もしない分野からヒントが得られるかも
    (3)言語の壁を越えること。日本語で検索すると日本語しか引っかからない。少なくとも英語で検索するように

    先行研究を調べるときに問いが巨大すぎると手に負えない。問いを絞ること
    「地球温暖化」→「地球温暖化が○○に与える影響」→「〇〇に見る地球温暖化対策」

全50件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

上野千鶴子(うえの ちづこ)
1948年富山県生まれの研究者。専攻は社会学で、女性学やジェンダー研究の第一人者として知られる。東京大学名誉教授。著書に『近代家族の成立と終焉』、『家父長制と資本』(岩波書店)、『おひとりさまの老後』(文春文庫)、『女ぎらい』(紀伊國屋書店)、『ケアの社会学』(太田出版)、『サヨナラ、学校化社会』など多数。

上野千鶴子の作品

情報生産者になる (ちくま新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする