暗黙知の次元 (ちくま学芸文庫 ホ 10-1)

  • 筑摩書房
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  • / ISBN・EAN: 9784480088161

感想・レビュー・書評

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  • 「木の中に仏様がいて自分はそれを取り出すだけなんだ」
    我々はすべてを知っているから無知なのであり、次元を超えて進化しなければならない

    理解をするという目の前の段階から、生命の定義、人類がどこに向かうのかまでが、この短い一冊のたった一つの理論の中に詰まっていると思うと人の知能のすごさと優美さを感じます

  • 正直難しすぎて何言ってるかわかりませんが、頑張って読み切りました。
    暗黙知とは、言葉にすることのできない認識のことである。
    暗黙知が機能しているとき、私たちは何か別のものにむかって注意を払うために、あるものから注意を向ける。
    人の特徴として感覚をもっている。
    一つの世代から後続の世代への知識の伝達は、主として、暗黙知的なものである。このことから、大人の振る舞いのうちに隠された意味を子供は推測する。

  • 暗黙知とは、構成要素の統合であり、それが要素ごとにみられることと、全体として見られることを繰り返して形成されていくもの。
    と、、、読み取ったけど、難しかった。。。
    きっと私たちが、なんとなく行なっている動作であったり、知覚というのは、要素としてみることももちろんなんだけれども、それよりも全体として捉えていることのほうが多いのかもしれない。
    特に、流れや経験というものは、その結果に焦点を当てていて、ここの過程や原因などにあまり目を向けていないのかもしれないな。。。
    もう少し、暗黙知について読んでみないとわからないと感じた今日この頃。。

  • 音、映像などと表現方法が広がるについて、「語れる」「伝えられる」範囲は広がったのか、それともそれを知覚することは相手に委ねられているから変わらないのだろうか、などと読みながら考えた。十分理解したとは言い難いので、何度か読み返すと解釈が変わってくるんだろうな。

  • 身体知を学ぶ人はやはり一度は読むべきであろうが、感銘を受けるかと言われれば、ちと違う気がする。あくまでも私見。

  • NDC: 116.5

  • 100字要約
    「人は言葉にできるより多くのことを知ることができる」言葉にできない認識を暗黙知と定義した。暗黙知は、内在化により包括理解することが可能であるが、階層性により個々の諸要素の総和ではないと言及している。

    === memo ===

    暗黙知の構造によれば、すべての思考には、その思考の焦点たる対象の中に私たちが従属的に感知する、諸要素が含まれている。

    しかも、およそ思考は、あたかもそれらが自分の体の一部ででもあるかのように、その従属的諸要素の中に内在化していくものなのだ。

    思考は〜から〜へという志向的構造を持つということである。

    私たちの文明全体は極端な批判的明晰性と強烈な道義心の奏でる不協和音に満たされている。

    私たちは言葉にできるより多くのことを知ることができる。言葉にすることのできない認識が存在することを示している。
    例: 身近な人の顔の判別

    ゲシュタルト心理学によれば、ある対象の外形を認識するとき、私たちは感知している個々の特徴を、それが何とは特定できないままに、統合しているのだという。

    ゲシュタルト(形態)は、認識を求める過程で、能動的に経験を形成しようとする結果として、生起するものである。この形成もしくは統合こそ、私が偉大にして不可欠な暗黙の力とみなすものに他ならない。

    ーー
    西田幾多郎の「行為的直観」
    ルビンの壺に代表される人間の知覚に使われている。デザインにも応用。
    ドイツ語で、『全体として認識して初めて意味を成す』という意味。相互関連性を帯びた構造
    全体には、部分の単純な総和以上のものがあるという立場。← プレグナンツの法則
    → 微積分やA/D変換、要素分解を今一度考えてみる。
    ーー
    語彙
    閾下知覚過程、実物定義、敷衍(ふえん)、惹起(じゃっき)、膾炙(かいしゃ)、囲繞(いじょう)

    私たちが第一条件について知っているとは、ただ第二条件に注意を払った結果として、第一条件について感知した内容を信じているということにすぎないのだ。

    解剖学の用語を用いるなら第一条件は「近位」、第二条件は「遠位」

    暗黙的認識において、遠位にある条件の様相を見て、その中に近位の条件を感知する。
    内面化するとは、自己と当該の教育内容を同一化することである。
    → 数学理論

    あけすけな明瞭性は、複雑な事物の認識を台無しにしかねない。
    包括的存在を構成する個々の諸要素を事細かに吟味すれば、個々の諸要素の意味は拭い取られ、包括的存在の概念は破壊されてしまう。

    個々の諸要素はより明白なのだから、それらをちゃんと認識すれば、事物全体の本当の姿を捉えることができる、と信じ込むのは根本的に間違っている。

    ==
    物理学の不可逆性
    マクロとミクロ視点の経済学
    ロジカルシンキングは、破壊的分析
    ==

    明示的統合が暗黙的統合に取って代わることはできない。
    → 自転車の理論を徹底的に学習したからといって、1人の運転手の技能に取って代わるものではないのだ。

    暗黙的認識をことごとく排除して、全ての知識を形式化しようとしても、そんな試みは自滅するしかないことを、私は証明できると思う。

    ==
    日本の老舗企業の衰退
    効率化の果てに警鐘を鳴らしている
    ==

    問題の解決を求めることは不条理だ。プラトン『メノン』
    もし何かを探し求めているのか分かっているなら、問題は存在しないのだし、逆にもし何を探し求めているのか分かっていないなら、何かを発見することなど期待できないからだ。
    (パラドックス)
    → 全ての発見は過去の経験の想起である。

    精神の認識と科学的探求の構造的類縁性

    暗黙知の二条性、すなわち諸要素から成る近位項と、諸要素が包括された意味から成る遠位項は実在の二つのレベルとして現れる。

    ##
    インフラ技術のレイヤの考え方と似ている。
    メタ認知とロジカルシンキングにも通じる。
    ##

    すべての生命現象は、究極的には、無生物を制御する規則によって説明され得るというのが生物学者たちの常識になっている。

    生ける存在としての私たち自身のもっとも際立った特徴は、感覚を持っていることなのだ。
    物理学と化学の規則は感覚性の概念を含まない。機械論的に説明しようとする試み。

    機械の作動原理は、そうした非生命的システムの境界条件を制御するものだといえるだろう。この境界条件を決定するのは工学(エンジニアリング)なのである。

    境界制御の原理
    動的平衡、潜在的一貫性、潜在的可能性

    暗黙知は、身体と事物との衝突から、その衝突の意味を包括理解することによって、周囲の世界を解釈するのだった。

    一つの世代から後続の世代への知識の伝達は、主として暗黙的なものである。

    生徒は次のように推測しなければならない。
    初めのうちは、無意味に思われる指導も、実は教師が実践しているのと同じような内在化を感知することによって発見され得る意味を持っている、と。そうした努力の基礎にあるのは、教師の権威を受容する姿勢である。

    第1章では、暗黙知は内在化によって包括(=理解)を成し遂げること、さらにすべての認識はそうした包括の行為から成り立っている、もしくは根ざしているということであった。

    第2章では、暗黙知の構造が包括的存在の構造を決定する仕組みについて明らかにした。包括的存在と個々の諸要素との関係は二つの実在レベルの関係であること、そして高位の実在レベルが、低位の実在レベルを制御する原理によって決定されずにいる境界条件を制御していること、であった。

    「信じることがなければ、理解することもないだろう」 聖アウグスティヌス
    教師や指導者に身を委ねることによって初めて、新しい歩みが一歩ずつ刻まれていくのである。

    伝統主義
    認識する前に、さらに言えば、認識できるようになるために、まずは信じなければならぬと説くもの。

    科学的合理主義
    具体的なデータを基礎にして、それから正式な推論によって導かれ、繰り返しの検証に堪えられる明白な記述のみである。

    科学的重要性または科学的価値
    * 厳密性
    * 体系的重要性
    * 内在的興趣

    理論には、不意の確証が存在する。
    発見は、現行の知識が示唆する探求可能性によって、もたらされる。

    ##
    GitHubでのコード公開
    Linuxのオープンソース
    ##

    科学は実在の本質を洞察するがゆえに、実り豊かなものであり続ける。
    相互調整による自動調節作用。

    体系的進歩も可能性を秘めた領域というものが存在し、それは個々の科学者の独創性によって今にも現実化する。

    ##
    直近では、IPS細胞、リチウム電池、ディープラーニング、5Gなどかな?
    ##

    独創性は、あらゆる段階で、人間精神内の真実を増進させるという責任感によって支配されている。その自由とは完全なる奉仕のことなのだ。

    達人は抑制によってその道を極める(ゲーテ)
    → 科学にも当てはまる
    「実存は本質に先立つ」

    現行の理想は未知の真実に至るための一段階であり、真実が発見された時、その真実は自らを産み出した教えそのものに反するかもしれないということである。個人に敬意を払っている。
    他の人々には見えない問題を見て、自分自身の責任においてそれを探求するという能力を持つものとして。これこそ自由でダイナミックな社会における知的生活の、形而上学的基盤なのである。言い換えるなら、こうした社会における知的生活を守る原理なのである。私はこのような社会を「探求者の社会」と呼ぶ。

    支配者と言えども人間の思考に権力を及ぼすことはできない。

    じつのところ、責任と真実とは、こうした掛り合いの二つの側面に過ぎない。すなわち、判断という行為はその個人的な極であり、判断が関与=依拠する独立した実在はその外的な極なのである。

    私は問題解決の先例は「創発」の過程にありと考えてきた。

    量子力学は原因のない原因の概念を確立したが、それは確率の場による制御にしか従わない。
    私が講義に付した全体的な標題は「考える人間」であった。
    私たちの時代が直面する問題にとって啓示的と思われるのは、潜在的思考に没頭する人間の姿である。

    「軽率で早まった偏見」(ベーコン)

    自己欺瞞
    サルトル哲学で、ある行動が情況によって決定されたとして、意識が自己に対して真実を隠すこと。あるいは自己に好ましい虚偽を真実とみなすこと。

    懐疑主義(プハーリン) ⇄ 実存主義

    暗黙知によって、人間と宇宙を貫く倫理の構築を夢想していたポランニー

  • 訳:高橋勇夫、原書名:The tacit dimension(Polanyi,Michael)

  • いわゆるSECIモデルなどででてくる「暗黙知」について、原典を確認するため読んでみた。

    安富歩さんが、「暗黙知」は、"tacit knowing"であって、"tacit knowledge"ではないといっていたのを念頭に置きながら読むと、なるほど、理解が進む。暗黙的な知ることのプロセスなしには形式的な知識がそもそもありえない、つまり、一体のものであることがわかる。

    だが、この本の議論は、「暗黙知」でおわらない。それは単なる入り口である。その後、創発のはなしがでてきて、自然の階層的秩序形成、そして、生物の発生や進化、人間の心の発生などの創発に進む。

    そして、そうした「創発」について、なぜそうなるか、ということを説明することはできない、とポラニーはいう。

    で、最終的には、「科学」に関する認識論(ちょっと、「パラダイム」の議論に似ている)や科学をイデオロギーに従属させようとする社会主義への批判、ある種の宗教的な世界観が肯定される。

    これが、いわゆる「科学哲学者」ではなくて、自然科学を自身でしっかりやっている人からでてきたのは驚き。

    科学的な議論をしっかりと積み上げなら、自己組織化的な世界観にいたり、「科学主義」や社会主義への批判に展開していくハイエクの議論に似ている感じもあるかな?

    で、SECIモデルとの関係では、たしかにそれは「暗黙の知識」と「形式的な知識」が別々に存在するかのようなステップ論、サイクル論になってはいるが、SECIモデルでもスパイラルアップな知識創造、自己組織化みたいな概念もあるわけで、そこまでポラニーの言っていることの誤解というわけでもなさそう。

    とはいえ、ポラニーのこの本を読んじゃうと、なんかSECIモデルが薄いものに見えてしまうのも事実。。。。

  • 世の中の科学者コミュニティ(アカデミア)への信頼感というものがどこから生まれてくるのかという点について、昔から色々思うところがありましたが、本書を通して科学者たちのリスクを伴う決断を通して科学の発展が続いていくのだという発想に触れて、再び多くの疑問が湧き上がってきました。
    一読して理解しきれる本ではないので時間を置いて再読してみたいです。

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