治癒神イエスの誕生 (ちくま学芸文庫 ヤ 20-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480093097

感想・レビュー・書評

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  • 新約聖書は病気なおしの物語であり、イエスはヘレニズム期の医神のイメージを併合して信仰を集めていった。病は罪の象徴とされ、皮膚病や精神病の患者を差別したユダヤ教の戒律社会から抜けだし、病人に手を差し伸べて救世主のイメージをつくりあげた"治癒神"イエスの背景を探る。


    古代イスラエル人の砂漠観に関する章など、難しくて飲み込みきれない箇所もあったが、本筋である「初期キリスト教はアスクレピオス医師団と競合しており、アスクレピオスをはじめとする医神たちの信者を少しずつ取り込んで勢いをつけていったのではないか」という仮説はとても面白かった。
    序章ではソンタグ『隠喩としての病い』を引き、病気と罪が結びつく社会でそこから追放された人びとに思い馳せる。病に罹ることと罪悪を関連づけて倫理観を問うような論調はこの2年で飽きるほど見てきたので、この序章が余計に心に響いてくる。本書の論旨であれば、初期キリスト教のイエスは既存宗教によって罪人にラベリングされた人びとを救うため、人類全体を罪人としてカテゴライズし直した男だとすら言える。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/738138

  • 初出は1980年ごろの、山形孝夫さんの短文集。
    私もずっと疑問に思っていたことが同じだったりしたので、もっと早く読めばよかったと後悔(文庫版は1991年初版)。
    イエスや弟子の旅を遊行する治癒神と捉えると、色々なことがすっきりする。新たな疑問も湧いては来るけど……。
    真実はなかなかわからないけど、とても面白かった。

  • 思っていた以上に面白い本でした。

    文化人類学的アプローチ(宗教人類学)で、旧約聖書の風景を説明されています。

    ヤハウェ神、バール神、アスクレピオス、イエスという流れで糾合されていく様子が描かれています。

    終始、読み手を厭きさせない解説が用意されています。

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著者プロフィール

1932年、仙台に生まれる。専攻、宗教人類学。東北大学文学部宗教学・宗教史学科大学院博士課程修了。宮城学院女子大学教授、学長を歴任。著書:『聖書の起源』『レバノンの白い山──古代地中海の神々』『砂漠の修道院』『死者と生者のラストサパー』『聖母マリア崇拝の謎』『黒い海の記憶──いま、死者の語りを聞くこと』ほか。

「2014年 『3・11以後 この絶望の国で』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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