現代語訳 舞姫 (ちくま文庫)

著者 :
制作 : 山崎 一穎  井上 靖 
  • 筑摩書房
3.52
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本棚登録 : 340
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480421883

感想・レビュー・書評

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  • 現代語訳の舞姫はとても読みやすかった。そして、読み終わった途端に原文にも触れてみたくなる。この文庫には、現代語訳、詳しい解説、そして原文がちゃんと掲載されていて、更に興味深い資料までもがくっついているので、存分に舞姫の世界に浸ることが出来る。

    他人の期待に応えることで自己を形成してきた豊太郎。留学生としてのベルリンでの生活が3年を経った頃、今までの自分の内面を省みることとなる。そんな折にエリスとの運命の出会いを果たし愛し合ったものの、その恋は遂には成就することなく、豊太郎は友人の相沢の導きもありエリスを捨て日本に帰国することになるのだ。相沢は、かなり仕事の出来る男だと見える。わたしが想像する仕事の出来る男とは、時に冷酷な決断をし、他人に対して非情になることを厭わない奴のこと。勝手に相沢はそんな男だと思ってしまう。
    豊太郎は、自分の口からエリスに別れを告げることが出来ずに悶々と悩み、ついには病に倒れてしまうのだが、その隙に相沢はエリスにとって最も恐れている現実を、豊太郎の意志など関係なく彼女に告げるのだ。その結果、彼女は気が狂ってしまうのだけれど、相沢にとっては、そんなことは何の問題でもないのじゃないだろうか。いや、もしかしたら彼はそこまでちゃんと計算していたのかもしれない。その方が豊太郎の帰国が確実に叶うだろうと……うーん、気になる男だ。わたしの妄想が止まらない。
    エリスに自分で別れを告げることが出来なかった豊太郎。やっぱり、別れは辛いものになろうとも裏切ることになろうとも、自分で決着をつけない限りお互いに前へ進むことは出来ないのではないだろうか。でも病から目が覚めた豊太郎の前には、もう以前のエリスはいない。彼はこれから、エリスへの罪悪感と負い目を背負いながら生涯を過ごすことになるのじゃないかな。終わらすことの出来なかった恋って、ずっと引きずると思う。
    豊太郎は相沢に対して、良友だと言うものの、彼を憎む気持ちが今日まで残っていると最後に告白している。元はといえば、エリスとの関係を絶ち帰国する事を決めたのは豊太郎自身なのだけれど、相沢を憎むことでしか彼の中で、この恋を終わらすことが出来なかったのかもしれない。出来る男、相沢もこの複雑な豊太郎の心の中までは考えが及ばなかったのではないかな。いや、でも彼はやっぱりそんなことが分かったところで何一つ気にしなかったかもしれない。やっぱりわたしには気になる男だから、いろいろ考えてしまう。
    だけど、相沢では舞姫の主人公にはなれないね。やっぱり豊太郎だからこそ、タイトルの「舞姫」に仄暗い哀愁と繊細な美しさが感じられるのだもの。

  • 読み始めて5分、
    これはとんでもない読後感を得るんだろうな、
    そんな予知があった。
    そして、震えた。
    このやりきれなさ、あーあ。あーあ。
    優しい嘘なんて、優しくないって知りながら、それでもついてしまう。
    その人を思ってじゃなくて、自分のために。

  •  あの有名な舞姫を読むのは実は初めて。あらすじは知っているのでこの先の展開を予測しつつ「ああ、男のロマンって酷いな」としみじみと楽しめる逸品。
     私が読んだものは井上靖による現代語訳なのだが、読む前は「明治でしょ? 現代語訳しなくても読めるよね?」って思っていたが、文末の原文を見ると、実に読めない。同じ日本語であるというのに、言葉というものはここまで変わるのかと驚く。
     そのときどきに流行っているものを取り入れる小説と無い小説では普遍性が異なると言われる。時代性のある小説はそのときは受けるがあっという間に古びて見えるとも言う。けれど、ここまで言葉が文字が変わるのであれば、そんなものは誤差なのかもしれない。

     物語そのものの楽しさもさることながら、解説群も面白い。そしてその解説の中に星新一の名を見てタイミングの良さに笑った。(森鴎外は母方の大伯父にあたる)
     星新一の書く、書こうとしていた森鴎外の情熱を見てみたかった。

  • 現代語訳がとても読みやすかった。そして文体がとてもきれいだ。
    舞姫と太田豊太郎との恋。生活が大変な中でも二人は支え合っているように見えたのに、オチがものすごく残酷なような気がした。
    舞姫と母親はどうなったのか。
    豊太郎の選択はあっていたのか…。

  • 高校以来、久しぶりに読んだ。当時は歴史背景を全く考えずに読んでいたと思う。なので今回は、できるだけ、背景を考えて読んでみた。

    この作品が発表されたのが1890年なので、120年前の作品なのか。
    ということは、尊皇攘夷を叫んでいた江戸時代からたかだか20数年。豊太郎は、お国の為に富国強兵と立身出世に邁進している時代の留学生であり、親の世代はまだまだ封建的な考えというのが前提。

    となると、豊太郎の行動は何を意味してるんだろう?留学先でのエリスへの愛情という個人主義と、社会への貢献を第一とする国家主義の間を行き来し、迷った末の悲劇なのだろうか?

    現代の自分には、豊太郎の行動に賛意を示すことは出来ない。
    でも、当時の一般的な考えを持つ人(相沢)ならば、悩みすらしなかったであろうことを悩み苦しみ、その結果として、愛する人に最悪の結果をもたらした豊太郎には、多少の同情も感じた。

    あまりにも救いのない結末なので、また数年後に読んだら、この感想も変わるかもしれないと思った。

  • ドイツに留学した太田豊太郎と、踊り子エリスとの恋愛を描いた物語です。
    この本には、訳文・原文・脚注・解説が収録されています。また資料として、作品の背景を探る代表的文献を紹介。

    エリスの母があざといなあ……。

  • エリスは美しく可憐だ。なにゆえ後半のような展開になるのか。社会人にもなれば、多少はその決断を心情として理解はできなくもない。加えて、今のような世の中でない場合、二言や不実などはよもや許されない。青臭い感想になるのだろうが、やはり前半の美しさに比べ後半の悲しい展開とそれを前半と同じく冷静に描いていることへの違和は否めない。最後の展開は、この文章のように決して美しくないはずだ。豊太郎は美しさを捉えることはできたが、美しく生きることに失敗している。どう思うか色々考えさせられるいい作品だと思う。

  • *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。

  • 初鴎外。
    嫌な話だとは聞いていて、確かに私にとって嫌な話ではあったものの、思っていたのとは違った。
    主人公の身勝手さ卑怯さに腹が立つよりも、自分自身の中にもそれがあることを見せつけられてヘコむ方が大きかった…。
    でもまあそれでも殴りたいよね豊太郎。
    この短さで、物語、風景、心理描写の全てに不足を感じないのは見事。

  • 大学の講義にて、「舞姫」を読む必要があったため初めて読んだ。

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