森毅ベスト・エッセイ (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 99
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480436153

作品紹介・あらすじ

まちがったって、完璧じゃなくたって、人生は楽しい。稀代の数学者が放った教育・社会・歴史他様々なジャンルに渡るしなやかなエッセイを厳選収録!

感想・レビュー・書評

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  • 何年か前にも青土社から池内紀編集のよりぬき森毅『森毅の置き土産 傑作選集』がでていたようなので、その文庫化なのかと思ったけれど、文庫オリジナルとある。あちらの本のカバーに並んだタイトルと、この文庫の目次を引き比べてみると、まったくちがうラインナップのよう。(図書館で借りてみたら、森毅のなくなった2010年に出た『置き土産』は青土社から出した本からの選り抜きだった)

    巻末の編者あとがきに日付はないが、遺筆の一つと思っていいのだろうか…ちくま文学の森シリーズの編集者として知り合って以来八年にも及ぶ月に一度の編集会議が続いて楽しかった思い出、その後の交流が綴られていて、やはりそうなのだなぁと思った。(このあとがきの内容は『置き土産』と重なる内容がほとんどと判明)

    出典リストを見ると、本になっているもののほとんどは学生の頃に読んだ気がする。生真面目で世間知らずだった高校生は『数学受験術指南』にであって「ええかげん」を学び、学生時代を通して折々森毅節で頭をほぐしてもらいながら世渡りがそれなりにできるようになった気がする。

  • 数学者の森毅さんのエッセイ集。
    戦前戦中戦後、高度経済成長期と激動と呼ばれる時代の中を生きていた方だけど森さん自身の生き方考え方価値観人生観は常に一貫していて、そこがすごいと思った。激動だったからこそ、中心の自分がぶれなかったのかも。『人生は自分の物語を編むこと』というフレーズが文中に何度か出てきたけど、動いていく時代や社会の中で、その流れにのまれるのでも逆らうのでもなく、そういうものも全て自分の物語にくみこんだ上で「自分」をが形作られていく。今のコロナ禍の世の中を森毅さんが生きていたらどんな風に見るのか、どんな風に生きるのか。自分自身は今の(これまでも)世の中をどう自分の物語にくみこむのか。なんてことを考えながら読んだ。

    森さんは一貫しているけどガチガチに固いわけじゃなく、頑なじゃなく、柔軟でゆとりがあって、確固たる自分が自分の中にあるっていうのは、こういうことなんだなぁと一冊を通して感じた。この柔らかさと厳しさと強さがすごく好き。

    自分の物語を編み、自分で責任を持って生きること。

  • 自分はこてこての文系だけど理系学者のエッセイは好きだ。
    懐かしい森先生。

  • 久しぶりに森先生とゆっくり対話ができた。池内紀さん ありがとう。そして、ご冥福をお祈りいたします。今回は読みながらTwitterでつぶやいていたので、それらをトゥギャザーします。
    人生20年説の次の2乗説が出てきた。初めて本で読んだ。新聞に書かれていたみたい。20年ほど前に飲み屋で直接お聞きしたのが懐かしい。その後は私もずっと2乗説を採用しています。現在私は第8ステージ(7×7=49歳から8×8=64歳)。下に任せてどっしり構えていればええんやなあ。
    大学について 年齢の幅がせまい。女性が少ない。外国人が少ない。森先生が30年前に指摘している。上野千鶴子さんの祝辞を読むまでもなく、たいして今も違いはなさそうやなあ。
    ブルバキがどういう数学者集団かを初めて知った。ヤジウマで、デシャバリで、オッチョコチョイなんだそうな。私も見習おう。
    正しいかどうか、あやしい意見をのべてこそ、討論に値する。
    自分とつきあいのよい相手より、つきあいにくい相手にこそ、ものを語るのがもの書きというものだろう。Twitterではなかなか違う意見の人に答えてくれないんだなあ。議論したいのになあ。面倒なのにかかわりたくないのかなあ。かかわりたくないよなあ。
    みんなの思う「よい国」に背を向けても生きられるのが、本当のよい国なのだろう。「よい学校」も同じ。
    自分の休日。ええなあ。誕生日1/11、結婚記念日5/11、妻誕生日10/7くらいは許されるかなあ。まあ、年次有給休暇をとればええだけやけど。まあそれが誰にも遠慮なくとれるようになるとええなあ。

  • 著者は有名な数学者だが、この本は数学の好き嫌いに関係なく、多感で悩みの多い年代を過ごしている中高生に読んでもらい、気持ちを楽に毎日を過ごしてほしい。若い時にこのような味のあるエッセイにもぜひ触れてもらいたい。

  • ベスト・エッセイにふさわしい充実した選集。著者がヤジウマで、デシャバリで、オッチョコチョイを大事にし、「ねばならぬ」を嫌ったのは、「どんなに辛くっても、自分の未来は、自分だけに属する」ことへの確信に根差したものだったのだろう。池内紀氏の最後の仕事の一つとしても、記憶しておきたい。

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著者プロフィール

1928年東京生まれ。数学者。東京大学数学科を卒業。京都大学教養部で教鞭を執り、民間の数学教育運動にも参画した。京都大学名誉教授。数学科関係の主な著書として『数学の歴史』(講談社学術文庫)、『微積分の意味』(日本評論社)、エッセイ・自伝に『まちがったっていいじゃないか』(ちくま文庫)『自由を生きる』(東京新聞出版局)ほか多数。2010年7月逝去。

「2021年 『悩んでなんぼの青春よ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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