徒然草をよみなおす (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房
3.31
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本棚登録 : 90
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480683854

作品紹介・あらすじ

「徒然草」は、本当に「無常観を主題とした遁世者の随筆」なのだろうか。どうもそうではないらしい。当時の文脈に置きなおすことで、本当の姿が見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 無常や遁世というキーワードから離れ、新しく掘り起こした兼好像に基づいて、徒然草の特徴的な章段を読んでいく本。
    読み終わって気づいたのは、兼好の描いたイメージと徒然草を通読したときの自分のイメージが大きく異なっていたことだ。古典は読み方に気を付けないと、十分な情報量(真髄)を得ることができない。ただ、「徒然草をよみなおす」ことでそのギャップが縮まったと思う。

  • [ https://booklog.jp/item/1/412102463X ]の著者による、超有名古典「徒然草」の読み解き。
    ちくまプリマー新書なので、文章はやさしく、各章も短くて読みやすい。それでいて、様々な視点から徒然草の一段深い読み方を示してくれる。
    たとえば歌枕等、特定の言葉について、同時代の和歌ではどのような文脈で使われているかを参照し、その背景を踏まえて読むとどうなるか(第1章、第2章)。あるいは文学者・遁世者としてのイメージの強い兼好が、実際どのような活動で生活していたか(第8章)。この部分は[ https://booklog.jp/item/1/412102463X ]のさわりを紹介する程度だったが。
    中でも、唐櫃とまかり(第5章)に関する論考は特に面白かった。同時代の公家の日記から「唐櫃」、枕草子から「合子」の持つ意味をそれぞれ参照することで、九十九段と百段の意味を読み解いている。
    p45のコラムでは、よく参照される烏丸本に不正確な箇所があることの指摘から、本文批判(テキストクリティーク)の重要さについて触れられる。
    表面的なストーリーに留まらない、古典文学研究というものの最初の一歩を教えてもらえる本。

  • 第1章 かくてもあられけるよ/第2章 時間よ止まれ/第3章 歌人としての兼好/第4章 奇蹟が起きたら/第5章 捨ててよいのですか?/第6章 太平記の兼好/第7章 人の上に立つ人/第8章 自己紹介/第9章 源氏物語から徒然草へーつれづれなる「浮舟」

  • 東2法経図・6F開架:914.4A/O24t//K

  • 題の通りまさに『徒然草』を、とくに同時代の視点から読み直そうとする。筆者には兼好の伝記研究もあり、従来の説を塗り替えた(吉田兼好の「吉田」は捏造)。『徒然草』は教科書にも載るよく知られた古典だが、教科書に採用される章段は恣意的で、『徒然草』のもつ多様性を大きく歪めている。まずは入門書として本書を読み、さらに興味がわいた方は、是非原文をお読みいただきたい。

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000945868

  • 「徒然草」は昔から好きな随筆なので、ふと目に止まって読んでみた。遁世文学と捉えられることが多い徒然草だが、時代考証に基づくと兼行はそれほど隠居していたわけではなく、大いに俗世で活躍していたのだという。従来は「浮いている」と考えられることの多かった二三八段を再解釈したり、江戸時代以来と思われる八九段の誤読を正したり、源氏物語や古歌とともに精読した最新の研究成果を惜しげなく開陳。

  • 徒然草と兼好法師
    徒然草自体を読んだこともないし、徒然なるままにで始まる1句しか知りません。
    兼好法師が生きた南北朝時代、今で言えば中間職の様な立場で上司である貴族のひとに仕え、決して気楽な立場には見えないけど、世間とつながることを疎かにしないからこそ、世の中を渡っていく術を徒然草の中に残して行くことができたのでしょうか。

    徒然なるままに、しなやかに強く渡っていきたいなと思います。

  • たまたま書店で見かけた。徒然草全体の解説というより、いくつかのエピソードを取り上げて、全く未知の話を教えてくれる面白本。

    こんな話が面白かった。堀川太政大臣基具は息子が検非違使に着任したとき庁舎の唐櫃が古いので新しいものにしろと命じたら、職員に数百年も使用している価値あるものなので替えられないと言われた。

    久我太政大臣通光は清涼殿の殿上の間で水を飲むときに、土器じゃなくて、「まかり」を持ってこいと命じた。土器は素焼きで使い捨てだったそう。まかりは柄杓やお椀のようなものだそうで、枕草子には、「すっごくきたないもの。なめくじ。おんぼろの板の床を掃く箒の先端。殿上の合子」 合子=まかり。長年使って汚くなっている器だけど、しきたりだから使ってる。

    なんて話があって、伝統を守るべきか、革新すべきかは昔からのテーマなんだと思った。

    源氏物語の現代語訳が色々出ているけれど、重厚長大でなかなか手が出ない。こんな手軽な解説本なら、もっといくらでも読みたいと思う。

  • 12月2日新着図書:【著者は、無常観を主題とした遁世者の随筆と言われがちな徒然草を当時の文脈に置きなおすことで、本当の姿がみえてきますと述べています。読んでみましょう。】
    タイトル:徒然草をよみなおす
    請求記号:914:Og
    URL:https://mylibrary.toho-u.ac.jp/webopac/BB28177774

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授
著書・論文:『二条良基』(人物叢書、吉川弘文館、2020年)、『中世和歌史の研究 撰歌と歌人社会』(塙書房、2017年)など。

「2024年 『古典文学研究の対象と方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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