人類と建築の歴史 (ちくまプリマー新書 12)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480687128

感想・レビュー・書評

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  • 憶測的で同意しかねる部分は多々あるが、なお余りある名著。子供にはかえってすすめたくない。現代の成人のほうによっぽど読ませたい本。

  • 建築の初心者や初学者に向けてかかれた入門本。
    世界の住まいと建築について、旧石器時代と新石器時代の流れるを食生活形態や宗教と結びつけて解説し、日本における住まい/建築を神道の源流から、その価値や意義について解説される。また、四大宗教の登場以降の建築に関しては論が空中分解して、著者も『今の段階では、私自身、どう結論づけたものか迷っている。』としている。その後の、『大航海時代』は世界の建築の多様性の半減、『産業革命』以降はヨーロッパ一色、『二十世紀モダニズム』としては、世界共通語としての数学に寄る造詣、と現代に至るまでの変遷として、大まかな流れが述べられている。
    これからの建築については・・・もう、「もしかしたら、二十世紀をもって(建築の)歴史が終わったのかも知れない」と、これ以上の根本的な変化は生まれないとしている。

    著者は、建築の歴史を6歩で解説している。
    1歩目:【旧石器時代〜新石器時代】は世界どこでも共通で、円形の家に住み、柱を立てて祈っていた。
    2歩目:【青銅器時代の四大文明】で世界は幾つかにに分かれて、幅を持つようになる。
    3歩目:【四大宗教の時代】ではその幅は最大となる。
    4歩目:【大航海時代】に入るとアフリカとアメリカの個有の建築文化は滅び、世界の多様性は減退に傾く
    5歩目:【産業革命の時代】に入るとこの傾向はさらに進み、アジアのほとんどの国でも固有性が衰退する。
    6歩目:【二十世紀モダニズム】によってヨーロッパも固有性を失い、世界は一つになった。

    住まい/建築に多様性がみられないのは、1歩目と6歩目。つまり、住まい/建築の原始と現代。
    原始においては、宗教性(神)によって世界の住まい/建築が統一されている、現代はというと、数学によって統一されている。
    「神」と「数学」この対比も面白い。

    著者は、このはじめと終わり(現代)に共通性が見られている構造を『細長いあめ玉を紙で包んで両端をねじったような形』と表現している。

    果たして、現代において建築が完成し、この後に大きな発展を見ないものなのか・・・数千年後を覗いてみたいものである。

    ----------------
    【内容(「BOOK」データベースより)】
    母なる大地と父なる太陽への祈りが建築を誕生させた。人類が建築を生み出し、現代建築にまで変化させていく過程を、ダイナミックに追跡する画期的な建築史の本。
    ----------------
    【目次】
    第1章 最初の住い
    第2章 神の家―建築の誕生
    第3章 日本列島の住いの源流
    第4章 神々のおわすところ
    第5章 青銅器時代から産業革命まで
    第6章 二十世紀モダニズム
    あとがき
    ----------------
    【著者について】
    946年長野県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は、近代建築、都市計画史。東京大学生産技術研究所教授。全国各地で近代建築の調査、研究にあたる。その後、赤瀬川原平や南伸坊らと「路上観察学会」を発足させる。97年、「赤瀬川原平氏邸に示されたゆとりとぬくもりの空間創出」により日本芸術大賞、2001年、“熊本県立農業大学校学生寮”で日本建築学会賞を受賞。著書に『明治の東京計画』(毎日出版文化賞、岩波現代文庫)、『建築探偵の冒険・東京篇』(サントリー学芸賞、ちくま文庫)などがある。
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  • 歴史の藤森さん的解釈を楽しめる。ただ事実を詰め込んでいくだけの学校で学ぶ歴史はあんまり面白くなかったが、興味のある分野を視点に、特定の人の解釈(推測)で学ぶ歴史は面白い。大半が石器時代の話だけど、現代まで一応要点は押さえてあるし、気になると思うところは他の本で読めばいいとわりきれる。藤森さんの本には、そんな爽快感があると思います。

  • 勉強になりました。

  • 藤森先生の本、ですが
    従来の建築論にとどまらず古代の宗教観、
    から人と建物(あえて立てモノ)が
    書かれていておもしろい!
    カミを数える単位が「柱」であることに
    納得する1冊。

  • タイトルは大仰だけれど、紙幅の都合上というのもあるでしょう、多くページを割いているのは「住い」が現れるまでの歴史と、地母信仰と太陽信仰の関わり、つまり人類史における住居の始まりの部分です。あとは結構駆け足。

    けれど印象に残ったのは現代建築に触れた終盤のほう。
    多少の違いはあるものの、確かに現代の建物、特に都市圏は画一的。建物という複雑な構造を持つ、すなわち多くの可能性を持つモチーフであるにも関わらず、世界中の都市は似たり寄ったり。それが世界の価値観の画一化を象徴しているようだなぁと思ったり。

  • モダニズムの頁が面白かった。

  • P26~P32
     [最初の家が誕生するまで]
     1.磨製石器により、木の加工が可能になる
     2.農業の誕生により、定住が可能になる
     3.社会が安定し、家が誕生した

    P139
     ・・・さらに紀元前五世紀以後、仏教、儒教、キリスト教、イスラム教が出て、四大宗教となる。四大宗教の時代になると、ますます世界の建築に共通性は乏しくなる。
     古い昔より、人類にとって建築といえばまずは宗教建築をさし、持てる富と技術と想像力を宗教建築に注いできた。その宗教建築のあり方を決める肝心の宗教が、世界規模で四つに分かれ、戦争を繰り返すようになるのだから、一つのものとして語るのは不可能となる。

    P147
     ヨーロッパにとってはさいわいな、非ヨーロッパにとっては苛烈な四歩目が踏み出される。
     十五世紀、大航海時代が始まる。ヨーロッパの諸国は、スペインとポルトガルを先頭に、ヨーロッパには欠ける豊かな農産物や金や銀や、やがて奴隷まで求め、アジアへ、アメリカ大陸へ、アフリカ大陸へと進出し、ごく一部の国をのぞいて植民地化してしまう。
     こうして得た富により、ヨーロッパはゴシックの時代を終え、ルネッサンスの時代を迎え、さらに、バロックの時代へと突き進む。ルネッサンス(再生の意)建築は、文字通り古代のギリシャとローマのスタイルを手本としたもので、バロックはそれにダイナミックな表現を加えた。
     ルネッサンス以後のヨーロッパの建築は、それまでとは違った、世界的にみれば特殊な性格を持つ。すでに亡びた過去の建築スタイルを発掘し、その古い皮袋に自分たちの時代の酒を容れて、新しい味を出そうというもの。ギリシャ、ローマにはじまりやがてロマネスク、ゴシックまで再生の対象となる。こうした過去の様式を手本とするやり方を歴史主義という。

    P149
     十八世紀後半にはじまる産業革命が五歩目となる。産業革命によって教までつづく工業化、産業化、科学技術の時代がはじまり、産業革命の母国となったイギリスは七つの海を支配し、ヨーロッパ列強はイギリスにつづいて農産物、鉱産物の原材料を求め、同時に工業製品の市場(売り先)を求め、アジア、アフリカ、アメリカ、オーストラリアを押さえる。インドも中近東も東南アジアも中国も、ユーラシア大陸の全域が列強の植民地へと転ずる。
     ・・・
     この時代、建築においては、産業革命の成果として建築用の鉄とガラスとコンクリートがもたらされる。しかし、そうした新しい材料と技術は、建築においては表立って使われることはなく、見えないところで縁の下の力持ち的に取り込まれ、建築の表現は、ルネッサンス以後の歴史主義が主流を占める。植民地化した地域も同じで、世界の建築はヨーロッパ歴史主義一色に染め上げられたのである。日本の明治・大正の西洋館もその一つとして生まれた。
     四歩目の大航海時代にはじまり五歩目の産業革命の時代によって、それまでを特徴づける世界の多様な豊かさは消え、ヨーロッパ建築一色に収束した。

    P155
     アール・ヌーヴォーにはじまるさまざまな造形的試行錯誤の行きついたバウハウスのデザインとはどのようなものだったのか。
     まず、理論としては、二十世紀を科学技術の時代ととらえ、科学技術にふさわしい建築を求める。具体的には、鉄とガラスとコンクリートとの三つを材料として使い、全体の形は合理的で無駄のない四角な箱型とし、そこに大きなガラス窓を開ける。色は白が基本。
     歴史的様式や装飾の美を過去のものとして切り捨て、幾何学に基づく構成の美を打ち出す。各国各地の歴史と文化につながる歴史主義に代り、世界のどこでも共通の、無国籍にしてインターナショナル(国際的)な建築。それこそが、無国籍にしてインターナショナルな科学技術にふさわしい。
     青銅器時代の四大文明にはじまり二千年近くつづいた多彩な建築の歩みは、その歴史と文化を完全に否定されて終わった。
    ●誰でも快適に過ごすことのできる、無駄のない空間を持つ住まいを、世界中どこにでも提供できるようになったというと、好ましいことのはずなのに、心から賛同することができない。グローバリゼーションが受け入れられないことと、同じ問題を持っていると思う。

    P165
     改めて第一歩からを振り返ると、人類の建築の歴史は面白い姿をしていることに気づく。細長い飴玉を紙で包んで両端をねじったような形なのである。人類が建築を作った最初の一歩は、世界どこでも共通で、円形の家に住み、柱を立てて祈っていた。世界は一つだった。二歩目の青銅器時代の四大文明で世界はいくつかに分かれて、巾を持つようになる。三歩目の四大宗教の時代でその巾は最大となり、世界各地で多様な建築文化が花開いた。しかし、四歩目の大航海時代に入るとアフリカとアメリカの固有な建築文化は亡び、世界の多様性は減退に傾き、五歩目の産業革命の時代に入るとこの傾向はさらに進み、アフリカ、アメリカに続いてアジアのほとんどの国で固有性が衰退する。そして六歩目の二十世紀モダニズムによってヨーロッパも固有性を喪い、世界は一つになった。
     一つから始まり、多様にふくらみ、また一つへ。人類の建物の歴史は、約一万年して振り出しに戻ったのである。


    読了日:2011/06/14

  • [ 内容 ]
    母なる大地と父なる太陽への祈りが建築を誕生させた。
    人類が建築を生み出し、現代建築にまで変化させていく過程を、ダイナミックに追跡する画期的な建築史の本。

    [ 目次 ]
    第1章 最初の住い
    第2章 神の家-建築の誕生
    第3章 日本列島の住いの源流
    第4章 神々のおわすところ
    第5章 青銅器時代から産業革命まで
    第6章 二十世紀モダニズム

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ■この本を知ったきっかけ
     本屋でみつけて
    ■読もうと思ったわけ
     藤森照信の書く中高生向けの本だったので
    ■感想
    中学生向けに建築の始まりについて書かれてる

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著者プロフィール

1946年長野県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は近代建築、都市計画史。東京大学名誉教授。現在、工学院大学教授。全国各地で近代建築の調査、研究にあたっている。86年、赤瀬川原平や南伸坊らと「路上観察学会」を発足。91年〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。97年には、〈赤瀬川原平邸(ニラ・ハウス)〉で日本芸術大賞、2001年〈熊本県立農業大学校学生寮〉で日本建築学会賞を受賞。著書に『日本の近代建築』(岩波新書)、『建築探偵の冒険・東京篇』『アール・デコの館』(以上、ちくま文庫)、『天下無双の建築入門』『建築史的モンダイ』(以上、ちくま新書)、『人類と建築の歴史』(ちくまプリマー新書)、『藤森照信建築』(TOTO出版)などがある。

「2019年 『増補版 天下無双の建築学入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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