- Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480687128
作品紹介・あらすじ
母なる大地と父なる太陽への祈りが建築を誕生させた。人類が建築を生み出し、現代建築にまで変化させていく過程を、ダイナミックに追跡する画期的な建築史の本。
感想・レビュー・書評
-
建築物の歴史がわかりやすく理解できる本だと思った。
しかし、建築物をどう建てるかということではなく、この時代にはこういった感じの建物が建てられる傾向にあったという話が非常に大きいスケールで語られているので、その点は注意が必要だ。
その傾向自体も素材などもあるが、宗教や歴史といった観点に影響を受けたという話が多く勉強になった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白いですね。超鳥瞰図的な、藤森建築史学を中学生くらいからでも理解できるように書かれています。所々に、信州諏訪人としての記述が出てくるところも興味深いです。
-
タイトルは大げさでなく、まさに人類の歴史とともに語る建築の歴史。日本も世界も視野に入れ、住まい・建築が人類にとってどういう意味を持つものであったのか、何をもたらしたのかなどを、分かりやすく、ぐいぐい引き込まれる調子で解説している。
藤森先生独自の大胆な推理・仮説も交えたひじょうにダイナミックかつすっきりした流れがあるので、建築の入門書としてもうってつけだが、宗教や思想・文化など幅広く人類史に興味があれば一読に値する。読後満足度保証つき。
(ブクログ開始前の蔵書の登録&レビュー転記) -
プリマー・ブックスだからと言ってなめてはいけません。誰もが初学者だと思えば書き手の手取り足取りの丁寧さが大切なのではないでしょうか。初めての本の面白さは書き手の実力と比例します。藤森さんは間違いなく実力者だと思います。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202002130000/ -
人類の初の宗教が地母信仰で、人類が農耕を始めたことによって太陽信仰が生まれた。こんな主張が本書の最初の方で飛び出してくるものだから、本書のタイトルをあらためて確認せずにはいられなかった。そうか、「建築の歴史」の前に「人類」が入っていたのか。納得。確かに、建築をキーワードに、宗教や思想、文化まで幅広く論じる本書には「人類」がふさわしい。
上記の宗教の例にある通り、その起源が諸説あると思われる内容でも、大胆に仮説を立てて自説を進めてゆく。その様がなんとも小気味よくて、建築の素人にもきっちり読ませてくれる。 -
建築のお話ながら、地母信仰・太陽信仰の宗教の発生や、人間の美意識の結集していくさまの考察が面白い。
個人的には、生き物の感覚としてとても腑に落ちる説でした。
原始の人々もすぐそばの隣人として見るような視点は、読んでいて心地よい。 -
前半、半分くらいを縄文時代が占めているという、なかなか独創的ですが面白い本。
実験考古学という分野があるそうだが、先生の書かれていた内容も自分で実地体験したものが紹介されている。磨製石器の石斧で実際に気が伐れるものかどうか、実際に試されておられ、おお!と興奮する。
道具と建築の関係、建築が進むには道具にどのような変化が必要か、逆に道具が進化することでどのような建物が建築可能になるか、これはとても面白い視点だった。
また、宗教観と建築の関係も非常に面白い視点だった。宗教は人の文化を考える時に、非常に大きな影響を及ぼしているから、何を検証するにも宗教との関係があるとは思っていたが、地母信仰、太陽信仰という宗教感の変化と建築の関係、及ぼす影響については、これもまたなるほどと思った。
一方で、発想、文章は面白く惹かれるが、発想の証拠、根拠が示されていない。大昔のことで文書等が残っていないのはやむを得ないとしても、根拠は読みたかったので、ぜひ紹介してほしかった。 -
面白い。建築に興味あるけれど、専門的なことは何にも分かりません、という人には最適ワクワクな一冊。
さすがちくまプリマー新書。藤森照信さん。
「人類と建築の歴史」藤森照信。ちくまプリマー新書。2005年。
#
藤森照信さんというのは、「建築史家」「建築家」だそうで、僕は事前には知りませんでした。
ちくまプリマー新書、というのは割に信用しています。
なにしろ、ちくまさんが「まあある程度若い世代のために、何にしろ入門的な感じで長く無い一冊を」というコンセプトで作っているはずなので。
期待に違わない一冊。
とにかくわかりやすかったです。
建築家の名前とか、ナントカ様式とか、そういうことがほとんど出てこない。
半分くらいまでは、話は原始時代。びっくり。そして面白い。
狩猟、そして農耕と、そういう時代の人類の人生と幸福を想像していって、
そこから(恐らくは遺跡などの)証拠と合わせて創造していく建築史というか。
「イエ」っていうのはどういう役割を負っていたのか、切れば血が出る具体性で解き明かしていきます。
そこから、生活だけではなく、原始的な宗教のための建築。家屋。
それらはたいてい、土地や化け物や怨霊などのプリミティブな神様が存在したんだけれども、
それがやがて、キリスト教、儒教、仏教、イスラム教という、「ことば」が優位に立つ進化した宗教に、基本的に駆逐される。
ところが、洋の東西を問わず、なかなか完全には駆逐されない。その、魑魅魍魎なプリミティブな神々と、言ってみれば全国チェーン店のような大資本でモダンな宗教の対立。
それがさらに、大航海時代から、世界レベルで言うと、「西洋・キリスト教の価値観、建築の、暴力による強制的な輸出」というフェーズへ。
それは19世紀に、「産業革命によるパワーアップした資本主義」という暴力的なカタチで東洋にもやってきます。これが日本では「近代化」ということになる。
さらに、20世紀に入って、バウハウスというデザインのアイディアから、これまた爆発的なまでに画一的な建築の時代へと入っていく。
まさに凝縮されて荒々しく暴力的なまでにザックリと目を離せない、エンターテイメントぎっしりの大河ドラマ。
そんな1冊、もう、呆気にとられてイッキ読みです。
建築に興味はあるけれど、どう触って楽しんでいくか、手をこまねいていたのですが、藤森照信さんという人の本から入っていこうかな、と思われて貰いました。
本当に面白かった。ちくまさん、良い仕事です。感謝。 -
内容は、建築史というより人類史。
縄文時代の竪穴式住居は、当初は円形で次第に角形に変わり、面積が広くなる。柱の上に梁を架ける構造で、柱は礎石のない掘立柱が基本的に4本。梁の上には小屋組みが乗るが、その後の民家と同様に三角形のサスを組んでいたと著者は推測している。構造材にはクリの木が使われているのは、弾力性のある針葉樹に比べて石斧でも切り込むことができ、腐りにくいたため。屋根には草や白樺の皮などの上に、寒気を防ぐために勾配を緩くして土葺きにした。日本書紀には、蝦夷が「夏は?に寝、冬は穴に住む」と書かれている。
弥生時代から古墳時代には、梁の上は束立て構造が用いられた。鉄器が出現したおかげで柔らかくて軽い針葉樹が加工できるようになり、角材が様々な箇所に使われた。斧、手斧、ノミ、槍鉋により、?と?穴による木組みができるようになった。ノコギリは飛鳥時代に出現した。壁はあまり作られず、オープンだった。