洋食屋から歩いて5分

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  • 東京書籍
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784487806447

感想・レビュー・書評

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  • 好きだ。

  • 戦後の時代を生き抜き、今を語る片岡氏のエッセイ集。コーヒーとサンドイッチ、トマトがよく出てくる。素敵な日常という切り口ではなく、ある物を通して考えたことを日常の中でさりげなく見せてくるという趣向のエッセイだ。だから、読んでいてふむふむとか、そうだよねとかなるわけだ。日常はそれぞれ違う。だから、日常自体を描こうとした作品、個性的な今を書こうとした瞬間に、それが薄っぺらく伝わらない。本作の素晴らしさは、ある種の思想があるからだと思う。確かな何かをコーヒーから感じるんだからしょうがないじゃんといった思想だ。

  • 情景を、空気とともに思い描ける文章。物憂げな気分のときや、旅の移動中に読むのがいいエッセイ集

  • 片岡義男の作品は、愛しい。
    人物が人工物臭が抜けないのは、ご愛嬌とおもうべきか。

  • エッセイや短編小説が並ぶ。

    片岡さんがご自身のコーヒーの淹れ方を書いている。これははじめて聞く話で、興味深かった。

    日本人でコーヒーに凝る人には、どこか茶道のように作法を感じさせるところがある。儀式的とさえ思える。究極とか至高とかを指向し、これがベストに近い方法だと主張しているような。

    ところが、片岡さんのコーヒーの淹れ方は違う。シンプルであり合理的であり、実用的だ、と私は思う。だからこそ、毎日数杯のコーヒーを淹れるにしても、それほど面倒にはならない方法だ。とってもいいと思う。

    ただし、コーヒー通を自任する方々に、この方法はどうだろう?
    少なくとも、クリアなコーヒーを好む方には適さないかもしれない。

    こんなふうに、ただ単に「コーヒーを淹れる」というあまりに日常的な行為から片岡流をみるだけでも、片岡さんの生き方の基本が覗けるようで面白い。

  • 片岡義男は私生活の匂いがまったくしない。それ以前に年齢さえ見当がつかない。80年代、書き飛ばして作品が青春そのものだったから、僕を含め多くのファンはあの時代から「瞬間冷凍」されたまま。まぁ、あの当時だって、何歳なのか気にはしていなかったが。現在72歳。びっくりである。すっかりおじいちゃんである。ということは角川文庫のあの赤い背表紙の書き下ろしを連発していたのは、40歳前半だったことになる。
    さて、本書は食に関するエッセイ。とは言え、どこぞのコレが旨い!なんてことは一切出てこない。片岡義男特有のドライな筆致は不変。それゆえ読んでいて思わず生唾が湧いてくるような生理的欲求は薄く、静物の描写のようである。片岡義男といえばアメリカ文化に造詣が深いだけに吉田類がいかにも好みそうな居酒屋について饒舌に語られると妙に居心地が悪い。椎名誠なら「風呂にざんぶと浸かり、待望の生ビール大ジョッキをつかんだ。ワッシワッシと飲んだ後に出るブワァ~。これがあるから、冬でも生ビールなのだ」となるが。作家によって居酒屋ひとつを取ってもこうも違うかと思う。シズル感に欠ける中でコーヒーは無性に飲みたくなってくる。とりわけ喫茶店で飲みたいと思わせる。「コーヒーに向かってまっ逆さま」というエッセイは片岡義男節全開である。作家の田中小実昌との一夜の話。60年代、片岡義男はテディ片岡と名乗っていた。初秋の夕方、新宿駅地下通路で田中さんと偶然に会い、船橋のストリップ小屋へ、その後再び新宿に戻り、何軒もハシゴし、朝まで過ごすいうお話。事実を下敷きにしながらフィクショナルに仕立て上げるテクニックに名人芸の趣を感じる。
    「食べ物をめぐる記憶」のページを繰りながら、そこにはかつてのマッチョな片岡義男は無く、「恋は遠い日の花火」のコピーよろしく「老い」を程よく漂わせた枯れた片岡義男が佇む。

  • 年をまたいで読んだ本の一冊。食にまつわるエッセイ集なのだが、最後に収められている「真夜中にセロリの茎が」(書き下ろし)が、創作上の苦労を知ることができて一番面白かった。

  • 中学高校時代の私の恋愛の教科書的存在でもあった作者。
    おじさんには当然なっているんだけど、同じ時代の中を通ってきた人にはわかるよ、まだまだ若い気持ちが有るし。
    今度は小説の新作を探してみます。

  • 片岡さんのエッセイは(小説もだけど)、シャキンと背筋を伸ばして読まなければならない。誰にでもなくそう教わった。多分片岡さんの書き方そのものにそういったものが内包されているんだろう。

  • もう結構なお爺さんのはずなんだけど、文章だけは若く思えるから不思議。戦時中の疎開なんて経験してる年代なのに。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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