忘れられた花園 下

  • 東京創元社
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感想 : 87
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488013325

感想・レビュー・書評

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  • 100年を駆けるミステリ。この下巻の帯文たら、どれだけ往年の文学少女ほいほいなのかと、ましてそこまで言ってしまうか?とも思ったのだけれど、内容に一切の偽りなし、文句なしにおもしろい。物語に夢中になったら自分を呼ぶ声も聞こえなくなったころに引き戻される。そんな時代を過ごしたひとには、大人になってからそういった作品を味わえる幸福をふんだんに与えてくれるし、これから出会うひとたちにはきっと、物語の魅力を教えてくれるはず。
    新刊を追いかけるのを放りだしてしばらく名作再読の旅にでたくなった。

  • 謎がほどけていくわくわく。ほどけたかと見えて、裏切られ、焦らされる楽しさ。陰鬱な曇り空のような物語に、ほのかな恋の兆しが柔らかい光のようで、哀しい物語も読後感は温かい。

  • 昔読んだ秘密の花園や小公女やらを思い出し、懐かしい感じがした。話が二転三転するは、時代は飛ぶはで、ごちゃごちゃしそうなところを、上手く纏めまてみました的な読後感がちょっと鼻につくかなあ。

  • ゴシックロマンミステリ?上・下巻をまとめて書きます。

    内容紹介を、表紙裏から抜粋して転載します。
    『1913年オーストラリアの港に着いたロンドンからの船。すべての乗客が去った後、小さなトランクと共にたった一人取り残されていた少女。トランクの中にはお伽噺の本が一冊。
    名前すら語らぬ身元不明のこの少女をオーストラリア人夫婦が引き取り、ネルと名付けて育て上げる。そして21歳の誕生日に、彼女にその事実を告げた。ネルはその日から過去の虜となった・・・。

    2005年、オーストラリアのブリスベンで祖母ネルと暮らしていたカサンドラは、亡くなった祖母からイギリス、コーンウォールの崖の上にあるコテージを相続した。一緒に暮らしていながら、コテージのことなど聞いたこともなかった。1975年になぜネルはそのコテージを買ったのか。
    ネルの書き残したノートと古いお伽噺集を手に、カサンドラはイギリスに渡った。
    コテージは今はホテルになっている豪壮なブラックハースト荘の敷地の外れ、茨の迷路の先にあった。
    カサンドラは、コテージの手入れを進めるうちに、蔓植物に埋もれるようにして閉ざされ、ひっそりと忘れられていた庭園を見出す。

    封印され忘れられた花園がカサンドラに告げる驚くべき真実とは?ネルとはいったい誰だったのか?ブラックハースト荘の秘密とは?』

    1900年始め頃、1975年、2005年、それぞれ別の3人の女性の物語がモザイクのように語られていきます。
    2005年はカサンドラ。1975年はネル。そして最も古い時代はイライザ。
    最大の疑問は、なぜ小さなネルがたった一人でオーストラリアの港に取り残されたのかということです。ネルは自身のことを知ろうとイギリスに渡り、何を知ったのか?コテージを買ったのはなぜ?亡くなるまで、そのままにしたのはなぜ?
    カサンドラにとって分からないことだらけなので、読んでいる私もそこが知りたくてたまりませんでした。

    作者はオーストラリア人ですがイギリス文学を研究した方なので、20世紀初頭パートではその知識がぎっしり盛り込まれているのだろうなと思います。「オリヴァー・ツイスト」を下敷きにしたような章もあります。それにコテージに付いていた庭園、これはまさに「秘密の花園」です。作中に、これは「秘密の花園」ですよ!と読者に告げているような仕掛けもあり、すごく嬉しくなりました。

    本の最初に1913年当時のブラックハースト荘や庭園の見取り図が付いています。それなのにたくさんの人がいるため混乱しないようによく付いている「登場人物表」がありませんでした。付いていたら分かりやすいのにと最初のうち思ったのですが、これはあえて付けなかったのだということが、あとがきを読んで分かりました。そうですね、この小説の構成だと人物一覧表があると興ざめな部分が出てきてしまうだろうと、読み終わってみれば私もそう思います。

    ネルもカサンドラも、秘密の一部しか分からなかっただろうと思います。でも、読者の私はほとんど全部の謎を明かしてもらいました!

    作中作としてお伽噺集から3作品が入っています。私はファンタジーは好きなのですがお伽噺は苦手。ファンタジーとお伽噺はかなりはっきりした違いがあると思っています。そしてこの作中作は、うわ~、まさにお伽噺だわ!苦手なお伽噺ですがその構成の上手さに感動。真相が分かってから改めて読むと、3作品の内「黄金の卵」からは心が締め付けられるような辛さが伝わってきました。

    上下巻のけっこう分厚い本なのですが、面白くて先が知りたくて3日で読みきりました。読んですぐにもう一度確かめたいことがいくつもあり、今度は順番を無視してぱらぱらと読み直し・・・。ラストではもう一度じわっと涙が浮かんできました。読後感がとても良かったです。

    以前読んだ「リヴァトン館」がとても面白かったのでこれにも期待してましたが、期待通りで大満足!
    昨年新作が出たそうなので、それも早くどこかで翻訳出版してくれないかなあ。

    • tokiwahimeさん
      私は小さなものが好きなので、スコープ作品を実際に見たいなあと思っていますが。何分地方に住んでいるので・・・。でも写真集を買いました!
      私は小さなものが好きなので、スコープ作品を実際に見たいなあと思っていますが。何分地方に住んでいるので・・・。でも写真集を買いました!
      2012/09/21
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「私は小さなものが好きなので」
      話はズレますが、こんなのは如何でしょうか?
      http://www.crayonhouse.co.jp/sho...
      「私は小さなものが好きなので」
      話はズレますが、こんなのは如何でしょうか?
      http://www.crayonhouse.co.jp/shop/g/g2524550010299/
      「写真集を買いました! 」
      私もです
      2012/09/26
    • tokiwahimeさん
      いいですね~万華鏡って。好みとしてはもっと小さい方が望ましいかな。以前小説でペンダントになってる万華鏡があって、欲しいなと思ったことを思い出...
      いいですね~万華鏡って。好みとしてはもっと小さい方が望ましいかな。以前小説でペンダントになってる万華鏡があって、欲しいなと思ったことを思い出しました。題名とかすっかり忘れてるのに、そのことだけ覚えてる・・・。
      2012/09/27
  •  1913年、イギリスからオーストラリア帰着した船内に取り残されていた少女。身元不明の少女はネルと名付けられ家族に恵まれ大切に育てられたが、21歳の誕生日に遂に自分の出生を知る事になる。希望に満ちた眼は孤独に塗られ、彼女は一人自分を知るための旅に出る・・・。
    時は変わって2005年、ネルの孫娘のカサンドラはネルが残したコーンウォールのお屋敷の存在を告げられる。1975年、ネルは何を知り、何を以てその屋敷を購入したのか、孫娘に託した謎解きの鍵はネルとともに船内に残されていた一冊の御伽噺集に・・。

     第三回翻訳ミステリー大賞に恥じない濃密な物語でしたね。元が古い作品ではないし、翻訳も現代的な表現寄りで海外古典にありがちな読み難さは少ない。勿論西洋を舞台にしたお洒落な情景は損なわれてはいない。章立ては1900年から2005年の時代を細かく行き来し、各章で人物の視点も変わるので人物の年齢や関係性の把握には時間がかかってくる。登場人物欄か相関図は欲しかったところ。

  •  作家は1976年生まれブリスベン在住のオーストラリア人ケイト・モートンでロンドンの大学を卒業。この作品の舞台は作家の居住地であるブリスベンとイギリス南部のトレゲンナである。

    物語は祖母(ネル)が亡くなった後に遺言で唐突にトレゲンナにあるコテージを相続する孫(カサンドラ)が謎の別荘と祖母の生い立ちについてイギリスへ渡り祖母からさらに曾祖母の100年間に渡る謎に迫るミステリーです。

    曾祖母の時代1900年と祖母が自らの出生の謎を紐解くべくイギリスに渡航してきた1975年と孫の現代2005年の3時代をいったりきたりしながら物語は進行する。30年前に祖母(ネル)がひっそりとイギリスで自らの出生の秘密を調査した足跡に孫(カサンドラ)のイギリスでの行動が重なり少しずつ謎が解き明かされてゆく、終に悲壮な結末が判明するのは本書の題名でもあるコテージの”花園”の中だ。まさに100年間忘れられた花園なのだ。

    作品の謎解きキーワードとして作家である曾祖母のお伽話”老婆の目玉””取替え子””黄金の卵”の3話が挿入されているが、物語を読み進める内にこの3編のお伽話が謎解きの案内役になりまたこの短編のお話は随分巧妙で味わい深い。

  • 上巻で、どうしても頭の中で整理がつかずにごちゃごちゃになってしまう家系図。
    なぜなのか下巻を読んで納得した。

    謎解きはカサンドラにとっては憶測の域を脱しない部分が多い。真実を知るものは誰もが、土の下で口をつぐんでいるから。もしくは塞がれてしまっているから。その謎も途中で気がついてしまった。
    だって、それ以外ありえない。だからわたしは上巻で何度も何度も混乱したんだから。

    個人的には『秘密』のほうが好きだ。
    だけど、小説の途中で出てくるイライザ・メイクピースが書いたお話はどれも魅力的。しかもこの本に使われているフォントは非常に効果的で素晴らしい。そしてナサニエル・ウォーカーの描いた挿絵も、朧げにそのイメージが浮かぶのだ。

  • 上下巻、全700ページ、100年以上の時代と女性3人(5代)にも及ぶ壮大なゴシック小説。

    ボリュームあるゴシック調の小説ということで、身構えて読みだした。前半小説のリズムに乗れるまではスピードも上がらなかったが、上巻の後半あたりからがぜん面白くなってくる。下巻なんかはほぼ1日半で一気読み。

    イザベラ、ネル、カサンドラ。3人の主人公が語るパートが層をなして物語を編み上げる様は、リリアンで美しい紐を生み出すような(壮大さにかける比喩?)雰囲気で癖になる。この癖に馴染んだら、あとはひたすら編まれていく模様を楽しむだけ。

    謎解き部分は意外にあっさりとしていて、ミステリーとしては物足りないかも知れないが、部分的な謎解きは、この物語の小さな構成要素に過ぎない。主人公たち3人の、違う時代に同じ場所で起こっていくさまざまな営みと、別個に見えて複雑に関連しあう出来事の同調感の奥にあるものを味わう。

    3代記ものって色々傑作もあるが、この本も3代記ものの傑作である。700P読む価値ありです。

  • 途中で謎が分かり、今一つミステリ感が減殺。

  • ケイトモートンの作品は2作目。「リヴァトン館」が面白かったので手に取ってみた作品。モートンが得意とするゴシック・ロマンスの雰囲気が良く出ている。イギリスとオーストラリアを舞台に繰り広げられるそれぞれの人物のストーリーにイライザ・メイクピースという架空のおとぎ話作家の挿話が入ってくる。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou20602.html

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著者プロフィール

1976年、南オーストラリア州ベリに三人姉妹の長女として生まれる。クイーンズランド大学で舞台芸術と英文学を修めた。現在は夫と三人の息子とともにロンドン在住。2006年に『リヴァトン館』で作家デビュー
『湖畔荘 下 創元推理文庫』より

ケイト・モートンの作品

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